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1.いきだおれ。


 こん。こん。

「つま先で蹴っても返事がない。

 ただのしかばねのようだ」

 ゴン!

「うっ!

 ……ううん……」

「……っち。

 しかばねにはまだ早すぎたようだ。

 残念。

 せっかく活きのよい生体素材がゲットできたと思ったのに……。

 しかたがない。ゴーレムでも呼んで運ばせるか。

 生きたまんまでもそれなりに役には立つだろう。

 主に、わたしの暇つぶしとかに」


「うっ……。

 ううん……」

「お目覚めになられましたかお客様」

「こ、ここは……っ、てっ!

 うわぁっ!」

「三日三晩の昏睡から目覚めたばかりだというのにお元気そうでなによりですお客様。とても拾われたとき、全身表面積の三分の一以上を凍傷におかされ肺炎も併発していたとは思えない回復ぶり。

 さすがはご主人様。完璧な治療処置でございました」

「あああ。あんた。

 そ、その顔……。

 な、なんで木の人形がしゃべっているんだ?!」

「いきなりの大声はまだまだお体にお障りになりますのでご自重くださるようお願いいたします。

 次にご質問にお答えしますと、わたくしはご主人様にメイドとして制作されたウッドゴーレムなので所与の機能として日常会話能力もデフォルトなのですがなにか?

 最後に備考としていわせていただきますと、表情筋こそないものの、わたくし、その内面は十代の乙女として設定されております。したがって、初対面の方からそのように不躾かつ化け物をみるような視線で注視されると少なからず傷ついてしまうのだということを僭越ながらご報告させていただきます」

「あ……いや、すまん。

 よくよく思いだしてみると、おれって凍死しかけたところを救われてここにいるんだよな……。

 メイドだかウッドゴーレムだか知らないが、助けてくれた人にいきなりあんまりな態度をとったり大声を出したりしたのは、どう考えてもおれが悪かった。

 謝らせてくれ」

「お気になさらず。

 わたくしの製造者でもあるご主人様からわたくしに遭遇したときに想定される一般人の反応についてもひととおりレクチャーされておりましたので、傷つきはしましたがそれでも想定の範囲内の反応ではありました」

「その……今更だが、助けてもらった礼もいいたい。あのまま森の中に放置されていたら、凍死か野獣に食われるか……いずれにせよ、おれ確実に死んでいたはずだ」

「そちらのお礼なら、わたくしではなくご主人様におっしゃるのが筋かと思います。

 あなたを拾ってきたのも治療したのも、わたくしではなくわたくしのご主人様ですので」

「そうだ。

 礼をいいたいのなら、このわたしに存分にいうがいいっ!」

「うわっ!」

「……って、またでかい声だしたな、青年。

 起きがけといい今といい、死にかけたばかりなのに随分威勢のいいことだ」

「だ、だって……目覚めてからすぐ、いきなり木彫りの人形のどアップから声をかけられたり、いきなりなにもない空中に人がでてきたりすれば、誰だって誰だって驚くだろう…」

「お前さんを治療したあと、お前さんが目を覚ましたら伝えるようにと言い残して、この子に寝ずの番をさせていたんだよ」

「三日三晩お客様の寝顔を見守らせていただきました」

「ごめんなさい。

 こんなとき、どんな表情をすればいいのよくかわからない。

 それはともかく……いきなり空中からでてくるなよ」

「お前さんが目を覚ましたとこの子から魔法通信が入ったので、取り急ぎ手っ取り早く魔法テレポートを使って駆けつけたわけだが……なにか問題があったか?」

「心臓に悪い」

「ふむ。

 治療したときにひととおり健康状態もチェックしておいたのだが、心臓に疾患を抱えていたとは気づかなかったな。

 そうと聞けば放ってもおけまい。さあ、再検査だ。さっさと脱いで全裸になりたまえ。今すぐ全裸になりたまえ」

「ご主人様。

 わたくしは心が乙女ですので、殿方の全裸から全力で逃げ出したく思います。この場を中座することをお許しください」

「ん。わかった。

 何かあったら呼ぶからそれまでは部屋の外にでていなさい。最低でも二時間から三時間以上かけてしっぽりと楽しむ所存だ。

 ほかのモノたちにもわたしの楽しみを邪魔するなと伝えておいてくれ」

「心得てございますご主人様」

「あっ。こら。

 いきなり服を脱がそうとするな抱きつくな変なところを撫で回すなっ!

 心臓に悪いというのいはそういう意味じゃないっ……て……。

 あっ……。

 ああっーっ!」

「よいではないかよいではないか。

 すでに一度、全身くまなくじっくり調べたり調べられたりした仲だ。

 もっとも、三日前は意識がなかったから反応がなくてイマイチ面白味に欠けたがな」


「ふぅ……。

 行為のあとの一服は格別だぜ」

「ううっ……。

 もう、お婿にいけない……」

「泣くなよ。

 これがはじめてだというわけでもないし」

「そのはじめても、おれの意識がないのをいいことに、あんたが無理矢理……。

 はじめてがどうこういう以前に……ヒトとしてどうなんすか?

 生きたままの人間を分解掃除するというのはっ!」

「直接みて触って嗅いで味わった方が、手っ取り早いし確実なんだよ。

 かなり細かくバラバラにしたけど、空間断層魔法を使ったから、痛みとかもぜんぜんなかったろ?」


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