ねこひと半々!
シトラチネさんの猫の日企画に便乗しました。
シトラチネさんの『ひとねこ半々!』を読了後にお読みください。
素敵な企画をありがとう!シトラチネさん。
時は夕暮れ。
茜の光に混ぜ込むように、黒い陰影がのさばっている。
闇と光に目が眩み、人間どもには判るまい。
闇に繁ったその奥に、じっと潜んだご馳走が。
余計な音はたててはイケナイ。
心の内で舌舐めずり。
鈍感すぎる人間たちを、チラと憐れみ私はソイツに狙いを定めた。
低く伏せ、大きな身体を縮込ませる。
前肢を突っ張り、お尻を上げて、後ろ肢に力を矯めた。
昂る気持ちを抑えきれずに、尻尾の毛並みが僅かに拡がる。
足踏みをして据わりが良いよう調整し、一気にっ――――
その瞬間。
樹上の鳥がバサバサと飛び立ち、騒がしい羽ばたきと共に幾枚かの羽を残して去ってった……。
獲物を狙う、ねっとりとした視線。
ピリピリと張り詰めた空気。
肌を、冷たい汗が伝う。
耳は既に前方のクマネズミではなく、後方の何かに向けられていた。
慎重に流された微かな息の音。
そよぐ風より微かなソレに、相手の上手を思い知る。
山の爺さまは何度も言った。
『美味い獲物に見惚れるな。狙った瞬間、オマエが獲物だ』
昂る気持ちが一気に冷えた。
恐る恐る、後ろを振り向く。
朱い羽織りを着込んだ婆が、欲に瞳を光らせて、此方をジッと見詰めてた……。
「ギニャアーー!!!!」
私はとっさに猫姿に化けると、茂みの中へと突っ込み逃げた。
◆◆
あれから裕に十年以上の月日が経った。
私も、もうすっかり一人前の猫又で、人に化けても猫の耳やら尻尾は出さない。
今でも、たまに夢に出てくるあの婆は、……アレは、人間だったのだろうか?
あの日、逃げたそのまま山へと帰り、それから後は一肢たりとも山から出てはいなかった。
爺さまの言い付けだってキッチリと守っている。
あの当時、どうしようもなく焦がれていた人間暮らしも、今ではなんでそんな憧れを抱いていたのか忘れてしまった。
人間里に遊びに行くなど、考えただけで怖気が走る。
嗚呼、澄んだ夜空のその下で、よりにもよって月光浴の最中に、厭なモノを思い出してしまった。
大樹の枝に腰かけて、人間の肢をぶらぶらさせていた私は、甦った悪寒にふるりと震えた。
今日は北風が吹き込んで、樹の上なんかは少々冷える。
っくしょーい、とくしゃみして、その夜は早めに切り上げた。
ねこ大好きじゃあ~~~~!!!
ネコ科愛してる~~!!
猫又会いた~い!!
猫の日、ばんざ~い!