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人間の王子は魔族の姫に恋をする  作者: 万愁ミチル


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-0- プロローグ

 これは、いまより少しだけ昔のお話。


 ある日、とある王国が魔族に襲撃されました。。

 魔族たちはどこからともなく現れ、田畑を荒らし、建物を破壊し、王城に押し入り、占拠しました。

 そしてなんと齢十才ほどの王子を攫って行ってしまったのです。

 圧倒的な敵の数の恐怖で不安に打ちひしがれる……かと魔族側は誰もが思っていました。

 しかし、人間は強かった。

 大切な王子を攫われ、不安よりも怒りが勝ったようです。 王族を筆頭に、王に仕える家臣も国民たちもすぐさまに武器を取り、魔族への反撃を開始したのです。

 数日もかからないうちに、魔族のほとんどが退散していきました。

 その様を見て、拍子抜けしてしまった人間もいたくらい呆気ないものだったそうです。

 そして一人の勇者が魔王城へと旅立ちました。

 王子を救い出し、魔族の王……魔王を打ち倒すために。


 数日後、王国の人々の期待に応え、勇者は王子を救い出し帰ってきました。

 帰国した王子にケガはなく、何一つ変わった様子はありませんでした。

 ただ一つだけ、王子の後ろで身を震わせる少女がいたこと以外は……。


 少女は大人の男性用のマントを頭から羽織り、顔を隠していました。

 魔族に囚われていた子供だろうか……。

 そう思った一人の国民が少女を保護しようと近づきました。

 すると王子は少女の身体を引き寄せ、力強くその小さな体を抱きしめました。

 その拍子に少女の羽織っていたマントが捲れ、少女の首から上が露になりました。

 黒く艶めいた長い髪、深紅に輝く瞳、少し尖った耳、頭から生えた山羊のような角……。


「ま、まぞく……っ!」


 国民たちがどよめき立ちます。

 そんな国民たちを前に、王子はニッコリと微笑み、優しい手つきで魔族の少女の頭を撫でます。

 魔族の少女は更に身を震わせ、その表情も暗く、青白くなっていきます。


「この子はね……魔王の一人娘なんだって」


 まさかの敵側の王の娘。

 それを勇者と王子が連れ帰ってきた……?

 国民たちは状況の理解ができず、どんどん困惑していきます。

 どういうことなのか勇者に説明を求めるも、なぜか勇者も困惑した様子で王子と魔族の姫を見つめている。

 王子……というより、姫を見つめているよう……。


 皆の困惑をよそに、王子は姫を愛でながら更なる爆弾を投下した。


「この子は、僕のお嫁さんになるんだよ」


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