いずれ滅びる世界
この世界は素晴らしい。
たった一人の聖女により、世界に平和と調和がもたらされた。
「争いをやめましょう」
彼女は言葉と姿勢、そして愛によって争いを止めた。
「俺達は彼女によって平和を知った。たった一つの岩さえ持ち上げられないような人間を慈しむ事ができるようになった」
ドワーフの長が言う。
ちなみにこの長は聖女にありえんくらい惚れている。
「私達は彼女によって平和を知った。何も考えずに森を破壊ばかりする無知な人間を慈しむ事ができるようになった」
エルフの長が言う。
ちなみにこの長も聖女に引くほど惚れている。
「我々は彼女によって平和を知った。あらゆる面で魔族に劣る弱き人間を慈しむ事が出来るようになった」
魔族の長が言う。
言うまでもなく魔族の長も聖女に惚れている。
それこそ手に入れるためならば何でもするくらいには。
*
そして、聖女は今日も頭を抱える。
「私のありえないほどヤバくてヤバさがヤバいくらいの美貌でなんとか戦争止めたけど、こっからどうすりゃいいんだろ……」
ドワーフの妻になればエルフと魔族から『お姫様救出作戦』という名の戦争が始まるだろうし、かといってエルフの妻になっても、魔族の妻になっても結果は同じだろう。
「だからといって誰とも結婚しなければ私の死後に歯止めがなくなって結局戦争始まるんだよなぁ……」
聖女は今日も考えに考え抜き、いつもと同じ結論に達する。
「しゃーない。切り替えてこ。とりあえずはこの平和を維持することだけ考えよ……」
今日も人知れず、聖女は苦悩しながら生き続けている。




