"主とか従"
両膝を躰の前に合わせた姿勢で座りながら、後ろ手に拘束され
本来僕のものである椅子に堂々と掛けた、少年の足先に奉仕を強要されて居る
僕の咥内の粘膜を、細く滑らかな爪先の、その先端たる爪が傷付け害していく
彼は僕の従者の少年で、人間の生まれのものだ
少年は、外出等に僕に血を提供する為の隷奴でもあり、そうした意味でも僕たちは主従の関係だった
───変わるものだな
僕は思った
初めは、僕を縛る時も責める時も、その表情には怯えが在った
今では嬉々として、僕を苦悶させる為の最適解を実行する事が出来る
「───良い人間を拾ったものだ」
少年の足が僕の口を離れたあと、ぽつりと呟く
直ぐにまた、いたづらな足が僕の口を滅茶苦茶に犯し始めた
「喋って良い、とは言ってませんよ」
呼吸も出来ない僕を、従者は眼尻を下げて視降ろして居る
僕もきっと、同じ眼で悦んで居る
この部屋の総てが、まともとは言えない状態だった
この少年自身、もう僕に幾度か血を捧げて居る
肉躰が既に変容し、主人を害すれば心身に刺すような痛みが走る躰の筈だった
変化が起きて居ないとは、あまり考えづらい
「彼は痛みを愉しんで居るのだ」、僕は思った
「ねえ、『ご主人さま』」
こうした遊戯の際、彼はわざと僕を『ご主人さま』と呼称する
そうしながら僕に触れる指や足先には、言葉ほどの敬意は存在しない
彼は僕の屈辱を助長する為に、こうした言回しを用いる
総ては僕が内心に求めて居た事でもあり、そして彼はそれを知って居るのだ
これらは役割を用いた───或いは、生きている時間を余すところ無く使った、倒錯の遊びだった
少年の指が、僕の襟に触れる
「今度は服を脱いでみましょう」
いや…………と、怖れを孕んだ声色が、僕の喉から微かに溢れる
拘束されて居る状態ながらに、僕の躰は無意識に後退り始めて居た
「拒むんですか」
耳元で囁かれ、僕は小刻みに震える
熱い息を繰り返し吐きながら動けず居るうち、僕はすっかり衣服をずらされ、肩を晒した姿にされてしまった
「私も、前から噛んでみたいと思って居ました」
小さな口をけだものの様に広げて、少年は視線だけで僕を視る
僕が「やめて………」と、瞳を濡らし哀願する
彼はけたけたと笑いながら、僕の肩を噛み千切ってみせた




