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秘密結社JKⅢ  作者: 二刀
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2話 ドラマチックをぶち壊す

 スミカは追い詰められていた。天才的頭脳を持つホノカが立てた作戦は六段構えの完璧な代物(しかし、三段目と五段目は倫理的な側面から却下されたため、実際には四段構えとなった)だったが、全てを肉体的な力強さと多彩なマジカル☆ウェポンによる対応力で対処されてしまった。山の中におびき出したのも、山に用意した無数の罠も無駄になってしまった。

 最も時間稼ぎに適するスミカが殿(しんがり)を努め、ホノカとユウコはすでに戦場から離れていた。


 (すす)と泥にまみれた魔法少女はスミカを地に組み伏せる。スミカの顔に泥がかかる。

「汚いったら……ずいぶん手こずらせてくれたじゃない」

 シルバーライトがそう言うと、ステッキ型銃剣の銃口をスミカに突きつけた。

「なんで悪の組織なんてやってるの?おかしいったら」

 スミカは答えなかった。

「速くクー。撃てテー」

 ゆるぴょりんがそう言う。シルバーライトはゆるぴょりんの頭をつかんで投げて遠くに飛ばした。

「あなたの怪人性は実際控えめ。わざわざ悪いことしなくていいじゃない。訳わかんないっての」

 スミカは答えない。

「……何か言ってよ。あんなやつらとつるむ必要ないってば」

「そうでもないよ」

 スミカは答えた。目元に泥や煤が落ちた。




「つまり……一番ドラマチックなところでぶっ飛ばす?」

 ユウコが聞き返すと、ホノカは頷いた。ホノカは双眼鏡でシルバーライトとスミカを見つめている。二人は崖の上で、大岩に座っている。崖の上には二つ、大岩があった。

「そうなるー」

「確かに……魔法少女はブラックマスクに執着している。それは確実だが」

 つかつかと円を描くようにユウコは歩く。落ち着かない様子で、顎に手を当てている。


「しかし……なんというか……」

「やるしかないよー」

 発破をかけるように、ホノカは言った。ユウコは足を止めてホノカに向き直る。

「わかっている。だが、無粋じゃないか!?」

 そう叫んだ後、ユウコは手のひらをホノカに向けてSTOPのジェスチャーをした。

「いや、君が今私に面倒くさがっているのはわかってる。わかってるがな……」

「うまくいけば、目立てるよー」

 ユウコは決意をした。




「大丈夫だっての。スミカは良い怪人だから」

 八年前、スミカはそんなことを言われた。関係のないことだ。今のスミカは悪い怪人なのだから。スミカはその腕を黒く変色させる。怪人性の発露だ。スミカは己の怪人性を引き出して、その身を怪人としての姿へ変えようとしていた。

「そっか」

 シルバーライトは言った。銃剣を持つ力は強くなった。

 そして組み伏せられたこの体勢のまま、一撃叩き込もうとする。下から、上へ。

 顔色一つ変えず、シルバーライトは引き金に力を入れる……


 そのtゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!

 大岩が転がってきた、二人を押しつぶすように。上にはユウコが乗っている。大岩の上で走るように足を動かし、下敷きになるのを避けている。

「ハハハハハハハハハ!!」

 ユウコは完全にハイになっていた。玉乗りピエロのような滑稽な姿で、足を止めれば死ぬというのにやけくそで笑っていた。

 避けるためスミカの肩を掴んで地面を転がるシルバーライト。その瞬間一瞬スミカの体が上になったとき、ユウコが岩から投げ出されたように飛びかかった。その勢いのままにスミカをシルバーライトから引き剥がすと、勢い余って二人で地面を転がり始めた。

 何度も岩や木の幹に体を打ち付けられるが、止まることなく転がって、最後には二人そろって川に落ちた。シルバーライトは二人を追いかける。


 スミカがユウコを抱えて川から飛び出した。肌が黒い。目が赤い。髪は逆立ち、毛先が生糸のように白く変色する。マスクを取り込んで狼のように突き出した口の中にはとがった牙がきらめく。蜥蜴(トカゲ)のような鱗に覆われた腕には三本のかぎ爪がついている。怪人性の解放だ……!驚いたシルバーライトは手元がぶれる。銃弾は外れた。

「めちゃくちゃだっての!!」

 (まりょく)切れになった銃剣を投げ捨て、シルバーライトは川を飛び越える。

 ユウコはスミカに抱えられたままインカムに手を当てた。

「魔法少女の身体能力が弱まってるー」

 ホノカの声だ。彼女が組んだ作戦はシルバーライトを倒すには至らなかったが、確かに魔力と体力を削いでいたのだ。


「反撃のチャンスか!!」

 ユウコがそう言ってスミカの腕から飛び出し、シルバーライトに向き合った。そして彼女もまた怪人性を解放する。赤い角が額から生え、それが木の枝のごとく分岐しながら広がる。足が長く、刃物のごとく鋭くなり、肌は朱色になり手足は毛に包まれ、髪は鉛色に変色した。右目の白目が真っ黒に染まり、瞳は青く宝石のように光を跳ね返す。左目は眼窩(がんか)全体が蒼白の炎のように光をたなびかせた。

「むりだねー、勝てないよー、多分」

「無理か!」

 シルバーライトに背を向けた。

()()()ー」

 インカムからの音声が方向を指定している。その音声に従って逃げる。しかしシルバーライトは少しずつ距離を詰めてくる。

「やるしかないか!!」

 ユウコの角から電流のような光が放たれる。

 それがシルバーライトの脳に突き刺さる!




 回転寿司屋だ。客は一人しかいない。それはシルバーライトだ。本名は稲瀬銀河(イナセギンガ)。彼女は寿司を食べている。勝手に流れている寿司をとっては食べている。いつまでこうしているのだろう。

 彼女は大トロを食べた。彼女はサーモンを食べた。彼女はウニを食べるのを辞めて、彼女はまたサーモンを食べた。来る物をただ食べ続ける。あるいは食べたくないものを逃し続ける。しかし、何を食べても味がしない。


「……おはよう」

 向かいの席にスミカが腰掛けた。そして流れてきたウニを取った。

「おはよう」

 二人はいつの間にか子供になっていた。

「なんでもできる気がしたよね」

 子供の頃の話を、ギンガは始めた。

「私は何もできる気がしなかった」

 スミカがそう言った。目を閉じ口を開け、ウニの寿司を口に放り込んだ。

「体育ではヒーローだったでしょ?みんな、あなたが大好きだったって」

 スミカはウニを飲み込んだ後、首を振った。

「でも、止まれなくて犬の糞を踏んだ。蛇口の水が出なくてひねり続けていたら取っ手が外れた」

 そんなこと……。ギンガは言おうとしてやめた。かわりに別のことを言うことにした。

「あの子たちとなら、何かできそう?」

 スミカは頷いた。

「話せてよかった」

 ギンガは席を立ち、出口に向かって進んでいく。そしてシルバーライトに変身し、ステッキ型銃剣で扉をぶち抜いた。

「じゃあね、ここ幻なんでしょ。お見通しってね」

 壊れた扉から時空が割れて現実の景色に戻った。




 現実の時間では数秒しか経っていない。しかしその数秒は距離を開けるには十分だった。スミカはユウコの体を抱えている。ユウコは力を使った影響で眠っている。

 シルバーライトは開いた距離を一瞬でつmゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!

 岩が木々をなぎ倒しながら転がり落ちてきた。ホノカが転がした物だ。

「飛び乗ってー」

 スミカはインカムからの指示を聞いた。岩に飛び乗る。そして岩の上で足をバタバタ動かす、表情を変えずに。

「え!?」

 シルバーライトは驚いて、山の麓をのぞき込んだ。スミカは街に岩がぶつかる前に岩を下り、拳で砕いた。シルバーライトは安心した。


「魔力切れだダー。変身解除するルー」

 シルバーライトの変身が解けた。

 麓ではスミカが怪人化を解除し、ユウコを叩いて起こした。バチィン!!想定より大きな音が鳴った。力を押さえれなくなっている。怪人化の影響だ。

「痛っ!!」

 開口一番、ユウコは言った。頭を抑えている。

「ごめん」

 スミカがそう言うと、ユウコは苦しそうにしながらも首を振った。

「頭痛がな……」

 これも怪人化の副作用だ。ユウコは地べたに座り込み、ポケットの中、戦いの中で粉々になっていた頭痛薬を飲み込む。


「撤退せいこー。じゃ、また学校でねー」

 ホノカの声を聞いて、スミカは学ランを脱ぎ、マスクを外した。制服のセーラー服があらわになる。

 ユウコは仮面とマントを外した。そして傷を隠すように絆創膏を貼った。

 ホノカはウィッグと眼鏡をつけて変装し、山を下り始めた。

「岩に乗るのは楽しかった」

 スミカがそう言うと、ユウコは少し笑った。

「ああ……ハハッ。危なかったけどな」

 三人の少女は登校を始めた。

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