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月光ガール




「―さー、ろーか、たっくん」



 ―明るい月をバックに、それとおんなじカラーリングをした女の発言。


 軽い逆光でシルエットが浮いて見える。


 ピンと尖った耳なんかも、鮮明に。




「…マジですか」



「あたしがそーんな低級な冗談、言う訳ないじゃぁん。つくならもっと上級な嘘付くってェ」




 …心意気だけは認めるけどよ…。


 現在、近所の公園に進入中。

 市民プールも付いてる公園なんだが、今プールはちょっと寒いんじゃないかな。…って季節。



 入ろうとは思わないけど。



 つか闘るって何だよ、…まさかな。只のケンカだろ?


 …ケンカだと良いな。


 …ケンカであって欲しいです。




「たっくーん?」


「うっせぇ、たっくんて呼ぶな」




 金色の少女が、何が可笑しいのかけらけらと笑う。




「たっくんがたっくんって呼ばれて怒ったァ」


「………」



 …何だろうか、凄く疲れる。



 もう呼び方なんて何でも良くなってきた。

 俺だって識別できる名詞なら何でもいいや。




「もぉ〜!たっくんたっくん、考え事ダァ〜メ。イイからァ、あたしとばとるしなさいー」



 ぷくりと頬を膨らます。リアルでやる奴初めて見た。



「…そんな緊張感の無い喋り方されたら緊張出来ねぇって」


「別に緊張感とかあるし〜。…しっつれいだなぁ、たっくんは」



 どっちがだよ。



「…あ〜も、闘るならやろうぜ。とっとと終わして帰りたい」


「わぁお。い〜ねい、乗り気ー。かんげーするよ」



 んじゃア、そっちからー。


 …と、やはり緊張感の持てない声で言われた。


 何だろ、ケンカ?女相手だろ?

 手加減した方が良いのかな。



 …良く分かんねぇや。



「―いいよ、お前からやれ」


「あ!そーだ名前忘れてた!」



 …なぁ、話聞いてるか?


「あたし『リラ』ぁ。純血のヴァンパイアだよお」



 ……コイツには…話を合わせた方が疲れないんじゃないかな…。



「…名前は初見だが純血ってのは分かってたぜ」


「あ〜、やっぱしィ?香水付けてもニオイって消せないんだよねー」



「? …いや、俺は外見で」



「へェ?」




 眠そうな半開きの眼が、眠そうなまま見開かれた。


 …一応驚いているらしい。



「な、何だよ…」


「たっくん、もしかして超人間?」



 意味分かんない。ノーコメント。



「……ふぅん―」




 無害そうだった、金色の瞳。


 その眼に突然―凶暴な光が差した。



 ぺろっ、とグロスの唇を舐める。その赤い舌。



「それは―…イイかもねェ」



 ―まずい、今動揺した。


 この反応は決まりきってる訳で。



「……負けたら俺は餌な訳?」



 やな汗。

 だってそんなのフェアじゃない。



「―うん。遺伝ヴァンパイアの血は飲めるんだぁ。…人間に近いなら、それだけオイシイしィ―」



 …同種の血は飲めないのか。

 なんだか違いを感じる。




「たっくん倒すだけじゃつまんなかったしぃー。…ちょーどいい動機づけができたねー?」



「…ちっとも良かねェよ」




 俺は強がりで呟いて、この状況に腹を決めた。


 やっぱり、コイツに付いて来た事に激しく後悔しながら。









 季節設定が連載開始から殆ど動いていないという…。


 本当にややこしい。




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