暇潰ルービック
…と思ったんですが、それではつまらないと思い直し平行して現在の拓夜です。
いつまで続くかは分かりませんが(笑)。
この野郎、本当に起きやしねぇ。
…暇っつうけど、この暇はそんじょそこらの暇とは比べ物にならない暇だよな。
てか、比べて欲しくない。暇を持て余す俺に失礼だ。
だってケータイは省エネ中だし?
本やマンガなんかこの部屋には有りもしないし。
…せめて教科書でもあれば勉強じゃなくて落書きに勤しむんだけど。
…―ん、教科書か。今それで思い出したぞ。
「っと…俺のバッグ―」
あのパンパンのバッグ。
なんか忘れたけど色々入ってた筈だ。
そう、具体的には…
「ルービックキューブ!!」
何処ぞの青いロボットが無限空間の中から秘密道具を取り出す勢いで、俺はカラフルなオモチャを取り出した。
しかし…何でこんなモンを入れた、俺。
必要か?…いや、絶対に不要ないだろう。
何で荷物削減に引っかからなかったんだお前。
「…無いよりマシ、…だよな…」
余りの退屈さに、もうルービックキューブに夢中になるしかない。
思い出すのも嫌気が差すぐらいの昔に揃えた3面。
それを一旦崩し、この際だから4面にチャレンジする。
…どうにも無理くさい挑戦に必死になっていた俺は、―無防備に踏み鳴らされていく、
―そんな簡単な筈の足音にも、…気付けずにいた。
忘れていた
桜助が言った『戦争』。
俺の存在についてのあちらの認識。
…こんなオモチャにうつつを抜かす俺は馬鹿だった。
ばん! と、ドアが開く。
「―よ〜? たっくんお初だねぃ」
何の躊躇もなく開け放たれたドアに、
…ちっこい箱に夢中になってた間抜けな俺が驚いた。
「っ!? な、なん―」
「おーすけが寝てるんでしょお? 起きたらマズいしー、一旦外出なぁい?」
―まず第一に、
…誰だこの女。
金髪の髪、眠そうな金色の目。
…純血で遺伝性の…ヴァンパイア?
「ってか…不法侵入だっつうの!」
俺の悲痛な叫び。
「えぇ? だってェ、それって人間の法律でしょう? あたしにはなぁんの関係もないもーん」
うわ、正論かも。
…じゃなくて!
「たっくんて…何で俺の名前…」
「ん? 簡単簡単。盗み聞きしたから☆」
うわ〜…。
もう、何なのコイツ。何その『キラッ☆』みたいな感じは。
「…〜〜っ………」
「うげっ!?」
桜助の寝返りに、必然的に俺はビビってしまった。
だって起こすなって言われてるし。
これがばれたらヤバそうな気がするし。
…ああ、俺なんも悪い事してないのに…。
「いーのかなぁ? おーすけ起きちゃうけどー」
畜生。…コイツ、分かって言ってやがる。
歪んだリップグロスの唇が、心中を醸し出す。
「……っつ〜…!!」
「まー、じぃっくりと迷いなよお? おーすけ起きちゃったら色々面倒だけどねえ?
あたしはぁ、すぐ逃げるしぃ何の問題も無いんだけどー」
いいつつ、マニキュアの塗られた鋭利な爪の様子を見る。
…ちくしょー。
…ああもう!!
行くよ! 行ってやるよこのメス!!
「望み通りにしてやるよ…。それで良いんだろ?」
「たっくんのその苛立ち百パーのオーラからするとぉ、だぁいぶキレてるみたいだねー?」
けらけら笑って、踵を返す。
「まぁー、そぉんなのはどーだってい〜の。たっくん連れ出しセーコー! 付いて来なよォ」
俺はその小さい背中について行った。
これが愚行だなんて幼稚園生でも分かる事。
…でも、俺は付いて行った。
付いて行ってしまったのだ。
…大事な事なので二回言いました、これ。
それにしてもルービックキューブのルービックって一体何でしょうね。
気付いてからは単純に気になってしょうがない…