夢回帰―睡眠
最近のぐだぐだ感を変えようと思いまして、桜助過去編スタートです。
拓夜に血を飲まれた。
私などの感染型ヴァンパイアにとって、吸血は生殖行為の様な物。
それでいて食事であり、コミュニケーションでもある。
…兎に角、通常の吸血行動にマイナスの効果は無い。
そして、生物というのは不思議なもので、プラスの行為には快感が伴うように出来ている。
満腹が心地よいように。
愛情に満足するように。
…つまり、私は恥ずかしながら拓夜に飲まれて『そういう』モードになってしまったのである。
それを誤魔化し、自己を抑制するために睡くもないのに寝た振りをしている訳…だったのだが―
どうやら私は幾らでも眠れる種類だったらしい。
…数え切れないほど生きている癖に今更である。
―それで、夢を見た。
悪夢なのか否か、それは古い古い最古の私。
そして私の知りうる最古の師匠の記憶だった。
夢の中。
それは鮮明で忠実。
私の記憶の中の師匠は、なんにも変わらずに笑って怒って励まして
この長い夢は続く。
飽き飽きするほどに。
『僕』は甘味屋に売られた小姓だった。
小姓だと思っていたのは『僕』だけで、実際普通に考えれば只の下っ端だったのだろう。
頭は固いし、本当に使えない奴だった。―その自覚はあった。
だから、恐らく『有効活用』されたのだろう。
―ある時主人に犯された。
そんな事が僕には異常に衝撃的で。
心の弱い僕は逃げた。
別に行く宛も頼りも無い。
ただ、独りになれれば死んだって良いと思った。
…そんな時、『彼』に逢った。
入り組んだ路地裏。
栄えている大通りから外れた、治安の悪い地域。
何を求める訳でもなかった。
ただ記憶に灼き付いたその悪夢を払拭したくて
前も見られず歩いていたら此処に居ただけ。
何の因果か運命か、そんな事は振り返っている身だから思うこと。
当時はただ、怖くて
金色の髪をした、白い肌の異国の者。
いろいろと弱った精神は些細な刺激に怯えた。
まさか、
彼が『僕』の世界の全てを変えるとは思いもせずに。