シラナイトコロノ、シラナイハナシ
ありがちな敵キャラ登場編です。
キャラ視点ではなく、客観目線になってます。
「―あら、キース」
そう呼んだのは赤いドレスの女。
無残にもスカートの裾を膝上で切り落としている。
呼んだ方も呼ばれた方も、鮮やかな金髪と、揃いの金色の瞳を有していた。
おおよそ色素の存在しない肌。
さらけ出された左胸には簡略化された真紅の蔓薔薇が、眩しいまでのコントラストで刻み込まれている。
キースと呼ばれた少年は、不機嫌そうな視線を投げた。
「…なに」
「―失敗したのね、貴方」
そう言うのは女。口調にはどんな温度も感じられない。
「…うるさいよ」
「結局、主の役には立たないゴミって事でしょう?存在意義なんて有るのかしら」
少年は口を噤んだ。
女は口調同様、一切の表情を持たない。
「主に尽くす事が私達の役割だわ。こうして組んだからにはね。―役に立たない手足は不要ない」
女の刺すような視線に、少年は頭を振る。
重たい口を開いた。
「…―確かに…ボク達は忠誠を誓った。互いに、一つの目標のためにね」
「…―じゃあどうして―」
「やめなよぉ、ロス?」
少女の声。
「いっくら主が大好きだからってぇ、キースに八つ当たりしちゃあ可哀想だよぅ」
怠そうに間延びした声。同様に半開きの金の瞳。
鋭利な爪に仕上げのトップコートを塗りながら足を組み直した。
「…あたし達はぁ、そもそも忠誠心から行動してるわけじゃないのー。忠誠心は派生しただけぇ」
グロスの照る唇。
それが、大きく湾曲した。
「―あたし等はぁ…―邪魔なあいつらを、滅ぼさなくっちゃあ」
少年も、
伝染った様に、歪んで笑った。
「…そーだね。それはとっくの昔に決まってたことだし」
彼の瞳が女を捉えた。
「…―それを宣告しに行ったのはー? …ロスヴィータ、他ならぬキミなんじゃないかなぁ?」
少年を睨んだ。
やっと彼女の顔に表情が宿る。
「―それも主全ては主の為よ。私は彼の為だけに存在する」
侮蔑の意で少年が鼻を鳴らした。
「主、…そお、主ねぇ」
女の額にぴしりと血管が浮く。
「…何が言いたいの。彼を侮辱するつもり?」
「いーや。ぜぇんぜん」
肩を竦め、首を振った。
「ボクだってロスとおんなじさァ。…同じ目標を持つ、仲間じゃないか」
少女が視線を上げた。
女も不服そうながら、彼に目をやる。
「なんか違う?」
諦めたように軽く息をついて、女は踵を返した。
「いいえ」
少女は爪の塗料に息を掛けた。
「全然せーかい」
彼は裕笑した。
「ボクらの存続の為には、奴らは邪魔なんだよ。消えて貰わなくちゃー…」
どこか遠くを見ながら、少年は呟く。
しかし、どこか上の空。
「…キースぅ?」
呼び戻したのは少女だった。
「…ん?」
「あたしはぁ、いつでもキースに協力するからね〜?」
「…、」
彼ははにかんで微笑した。
「分かってるよ、リラ」
彼女もにっこり笑う。
「―うん、知ってるぅ」
少女の濃いピンクの爪が光を反射して光った。
ロス、リラ、キース、
知らない所の、知らない話