おや、久しぶりだとは思えない顔がある。
やはり通学路は休み明けだろうが何だろうが、見慣れた顔が行き交いますね。
約1カ月ぶりのはずなのに久しぶりだとは思えませんね。
顔しか分からない、名前も種族も、
どこに勤めているか、どこに通っているかすら分からない間柄の顔です。
程よい距離感だとは思いませんか?
ヒトリミサキ
岬は小池になりました
第2話
おや、久しぶりだとは思えない顔がある。
誰かが岬を見つけたらしく
「タッタッタ」
という、軽快な足音が聞こえた後、誰かが
「おっはよう岬!
元気してるか?!」
と、後ろから飛びついてきた。
「おはよう斎藤。
お前は始業式から元気だな。
近所迷惑になってないか聞きたくなってきたんだが。」
「あったりまえだろ!
陸上部エース・斎藤信仕をなめるなよ!」
「・・・朝から騒がしい。
せめて女の子の前でくらいは大人しくしたらどうだ?」
「え?女の子?!
・・・岬、お前、ロリコンだったのか!?」
「な に か ゛
と ゛ う し て
そ う な つ た !
なんでそういう発想にすぐなるんだよ!?
もはやその思考回路が怖ぇよ!
なんでそうなったか、30字以内で答えろ!」
「テンションが高いやつと話すときは
自分もテンションを上げていかなきゃ持たない」
のあの理論は、どうやら精霊にも適用されるらしい。
「始業式からツッコミが冴えてるな、岬。」
斎藤の後ろから颯爽と登場した、同じクラスの木村。
「・・・どういう褒め方なんだよ、木村…」
「それより岬!
そのお嬢さんは何処に?!
見た目の可愛さと年齢と服装によっては
「お巡りさんこいつです!」
になりかねないぞ!」
斎藤は時々いる「思考回路がやたらと極端な奴」である。
「いや、男子高校生が幼女連れてたからって犯罪にはならないだろ…
逆に何でアウトなんだか、その理由を述べてほしい。」
「いーやアウトだ!
少なくても俺の中ではそういうことになってる!」
「それはもはやお前の頭の中が怖えよ!
有名な心理学者の先生でも連れてきたい気分だ。」
「岬、パス。
俺もうちょっと朝からは斎藤のテンションに付き合ってられない。
せめて昼からじゃないと。」
謎に斎藤のツッコミ役はシフト制ならしい。
「おい、朝からでも日光は出てるだろ!
光合成できるだろ!
「エネルギーないから」
とは言わせないからな、木村!
それでも嫌というなら、理由を1文以内で述べたらどうだ?!」
「いや、無いとまでは言わないけどさ、
ちょっと斎藤のテンションに連いていけるほどはまだ溜まってない。」
「それよりも例のお嬢さん!!!」
「馬鹿、そんなにせかすな。
怯えちゃうだろ!
・・・出てきてください。
・・・悪いやつではないので。」
岬がそういうと、真っ白な着物を着た少女が彼の背後に現れた。
まるで蜻蛉の生涯のような儚さを持ち、
陽炎のように不思議な雰囲気を持つ少女だった。
「おいおいおい!
これはお巡りさんの御用になったほうが良いんじゃないか、岬?」
「だから、何がどうしてそうなるんだよ!?
お前の思考回路がイマイチ理解できない!
もっと論理的な会話をしてくれ!
会話はな、キャッチボールなんだ!」
遠回しに
「会話がかみ合ってない宣告」
を受けた斎藤。
そしてヒートアップしていく斎藤・岬両名と対応するがごとく、
うっすらと消えていき逃げようとする例のカゲロウ少女。
「あ、待ってください!
退場が早すぎます!
おい斎藤!
こちらのお嬢さんはお前にドンびいた末、お帰りになりかけたぞ!
謝罪だ謝罪!
誠意を込めた謝罪だ!」
「え、マジで?!
それはすみませんでした!
俺、藤の精霊、斎藤信仕です!」
藤の儚さが何処に反映されているかは謎。
「俺は植物、主に神木とか大木とかの妖精、木村永葉です。
光合成でエネルギー賄っている節が若干あるんで、身体能力とかは夜はまぁ、
人間の文化部の男子中学生と変わらないくらいまで落ち込みます。
出来れば用事は日中にお願いします。」
昼が強すぎる木の妖精。
「僕は先程申し上げましたが改めて。
洪水とか氾濫とか津波とか大雨とか、水に関する災害全般の精霊、
つまり水害の精霊、岬海斗です。
妖精ではなく精霊なのであしからず。」
普通に災害。
恐らく皆々様は妖精と精霊の区別がつかない方ばかりだろう。
皆々様の地域、国では分からないが、この世界での一般的な分け方をご紹介しよう。
自然エネルギーや感情、つまり怨念などのエネルギーから
生まれる人外は妖精と精霊の2種類に分けられる。
別に妖精と精霊に上下はない。
「強ければ精霊」「弱ければ妖精」
「精霊の方が上位」「妖精の方が上位」
ということはない。
ただ、自我の生まれ方が違うだけである。
妖精は「エネルギーの集合」によって生まれる。
エネルギーがある程度集まると、エネルギーは自らを制御しようと、自我を作る。
これが妖精。
逆に自我が生まれる前のエネルギーの集合を既に完成された自我の器、
例えば霊や妖崩れに入ると精霊になる。
物の精霊、つまり付喪神は物が器になっている。
おや、皆々様は妖崩れも知らないと。
随分人間の割合が多いところからお越しなさったようで。
妖崩れは精神や魂の問題があり、
同じ自我・人格を完全に保ったままの復活が出来なくなってしまった妖、
いわば「妖の悪霊」である。
別に死ぬというわけではない。
ただ、妖は基本的に人格・記憶を保ったまま復活するが、
妖崩れでは保てないというだけだ。
別にその妖、その人格の消滅というわけではない。
まあ簡単に言えば、輪廻転生しなければならない妖のようなものだ。
能力は同じ、魂も精神も同じ。
ただ記憶が保てないだけである。
縁も消えない。
少し難しかったかな?
「お嬢さんの名前は?
種族は?」
「・・・おまえらはにんげんじゃないよな?
ひとでなしだよな?」
呂律が回っていないところが、可愛い。
・・・少しお待ちを。
今
「僕もれいこちゃんに「お前」って言われたい」
とかいう声が聞こえまして。
皆々様、今しばらくお待ちください。
申し訳ございません。
この場に幼女趣味者が紛れ込んでいたようですね。
只今処置いたしますので。
「はい、俺達3人は皆妖ですね。」
「よかった。
れいこはにんげん。」
「・・・え?!
マジですか?!」
「・・・えーと、本当に?」
「普通の人間は何もないところから出現しない」
という常識は分かっていたらしい斎藤・木村両名。
「れいこはひとぞ?
ひとでなしじゃないぞ?」
「・・・岬、解説。」
「突然現れる人間」という名の「意味が分かると怖い話」の解説を
出題者に求める木村。
「・・・こちらのお嬢さんは、
水害の精霊なら簡単に認識できるタイプの霊のお嬢さんだ。」
「あー、成程。」
「え、斎藤分かったのか?
え、何だろう…?
鬼女の方…?」
意外と察しが悪い木村。
「いや、こちらのお嬢さんの御着物で察して差し上げろ。
それだから彼女が出来ないんだぞ。」
「うるさい既婚者!高校生のくせに結婚してるやつはだまってろ!」
意外と木村はこういうことに反応するタイプ。
そして岬、衝撃の事実。
電撃速報。
「・・・何と言うんだろう。
間接的に僕が殺したというか…
いや、殺してはないんだけど、僕の一部が殺したというか…」
「む?かいとさま、なにをもうされておられるのか?
れいこはかいとさまにはころされていないぞ?
れいこはむらのやつらにころされたのだぞ?
れいこはみずがおおすぎるからって、なげこまれてしんじゃったぞ?
だからおまえら、
「れいこのことしってる」
「れいこはころしたはず」
とかいってるひといたら、れいこにおしえろ。
ころしてはならぬ。
れいこがれいことおなじほうほうでころすから。」
皆々様、初めまして、またはこんにちは。
⻆谷春那です。
れいこちゃん、可愛いですね。
ですが大変読みづらいですね。
しょうがない。
皆々様、頑張ってください。
・・・誰かれいこちゃんを幸せにして差し上げやがれください。
夢子ちゃんも同じく。
次回もお楽しみに。