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妹姫

「お兄様……あっ国王陛下」

 王の私を兄と呼ぶ、豊かな金色の髪に、ドレスとお揃いの淡いブルーリボンを付けた少女が庭の椅子から立ち上がり、貴族の礼をする。

 色白な肌にペリドットの瞳を母から譲り受け、可愛がられて育ったものだから、世間知らずのお姫様だ。

「やあ。メイリーン。今日は庭に出られたんだね。体調が良いのかい」

「はい。今日は熱も息苦しさもないんです。部屋の中にばかりいたら息が詰まってしまいますわ」

「医師から許可は出たんだろうね。勝手に抜け出したのなら、私でも叱らないとならないよ」

「ちゃんと許可はいただきましたわ」

 ぷぅと膨れる頬も愛らしい。

 幼少期より身体の弱い妹は、原因もわからぬまま時折熱を出す。伏せることも多く食も細いため、いつまでも少女のようだが今年22歳のれっきとしたレディだ。

 既に婚姻してもおかしくない年頃なのに、体調のせいで籠の鳥を余儀なくされる妹が不憫だった。

「良い子にしていたのなら褒美をやらないとな」

 着用しているロングコートとジレの間に手を入れ、細かい模様が彫り込まれた小箱を取り出す。

「まあ、美しい模様……開けてもよろしくて?」

 頷くと、両手で受け取り、そっと箱を開ける。

 突如ワルツの調べが奏でられ、可愛らしい瞳に驚きが溢れる。

 中身ではなく、箱自体が贈り物だった。

 蓋を開けると音楽が流れる仕組みだと説明するが、ウットリと音を堪能しており、私の声は聞こえていないだろう。

 当日になって突然出席できない事も多い、舞踏会に思いを馳せているのだろうか。

 妹姫の喜ぶ顔を見つめ、父王と妃であった母亡き今、助けてやれるのは私しかいないと、心に刻み込んだ。

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