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油断

「生死もわからないカルレイン陛下と、正統な血筋をひくこのミダリルの、どちらを選択するか、よくお考えいただきたいものですな。トゥーンザード宰相」

 一段高い位置から宰相を見下ろし、決断を後押しするように畳み掛けた。

 食えない男だが、切れ者と名高い宰相をカルレインから早く引き離してしまいたい。

 早くこちら側に付くと言えば、宰相の地位は奪わないでおいても良いのだぞ、と餌をちらつかせるために、わざわざ謁見室に呼び出してやった。

 トレードマークのグレーヘアをきっちり撫で付けた髪型によって、実際の年齢より落ち着いて見せているが、所詮私から見れば若僧だ。

 トゥーンザード宰相が口を開く。

「もちろんミダリル辺境伯のお血筋には、誰しも異論はございません。

 後継が決定しておらず、陛下との連絡が取れない現状では、ミダリル様が代理をなさって下さるからこそ、このフォルトラ国も王宮も平素を保っていられるのでしょう。

 いち早く王宮入りして下さり、この国の宰相としてお礼を申し上げます」

 玉座から宰相が頭を下げるのを見て、頬が緩む。

 未だカルレインを敬う態度には憤りを感じるが、宰相が王の代理を認めたことに変わりはない。まだまだこれからだ。

「ところで宰相。カルレイン陛下の安否の確認は進んでいるのか?私の方でも国境の兵にも探させてはいるが、何一つこれといった報告は上がって来ていなくてな」

「近衛の部隊と、騎士団にも探させていますがこちらもまだ…。ですが、さすが辺境伯は、国境の部隊も動かしておいででしたか。

 僭越ながら、国境が手薄になるのではありませんか?」

「それはもちろん大丈夫との判断からだ。国境のことは、そなたにはわかるまい」

 痛いところをついて来るな。やはりある程度経ったらトゥーンザードの首もすげ替える必要がありそうだ。

「ごもっともです。これは大変失礼を致しました。ミダリル辺境伯あっての国境警備でしたな。

辺境伯も長旅でお疲れでしょう。本日は王宮の料理長が腕によりをかけてご馳走を用意すると申しておりました。晩餐まで暫くお休み下さい」

 辺境の地でも贅は尽くしたが、王都に集まる高級品とは違う。

「そうか。ワインも良い物を合わせてくれよ」

「もちろんです。では後ほど」

 宰相がマントを翻し謁見室を出て行った。

 しかし、カルレインはどこに行ったんだ。部下には息があればとどめを指してから報告をしろと命令してあるが、形跡発見の報告すらない。

 だが、まあ宰相もこちらに傾いているようだし、晩餐には他の貴族も媚びを売りに近づいてくるだろう。カルレインの亡骸が見つかるまでには、貴族の信頼を集めておかねばならん。

 ミダリルの頭の中には、晩餐のことしか既になかった。

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