発見
「ちょっとこれ、見てくれ。他にもあるんだ」
メイリーン様の診療を終え、マリアンとダレス
と共に団室に戻った早々、ネロが打ち合わせのための大きなテーブルの席を立つ。
ローデンの前には、医師から借りた治療記録のとあるページが、待ち兼ねたネロによって広げられた。
「何だ?」
「ここだ。それから、こっち」
手製の栞を挟んであるページは何冊にもわたり、ローデンは次々と見せられる箇所を確認しては、隣のマコーミックに回していった。
治療団が招集される以前に書かれた医師の診療記録は、パドウが借り受けてきて以来、治療師それぞれが日々の診療の合間で、別々のタイミングに目を通していた。
ネロが人一倍記録を読み込んでいたことは知っていた。おかげで誰もが見落としていたことに気づけたのだろう。
こうして並べられると、気づかなかった物がローデンにも見えてくる。
捲られたページは、日にちも季節もバラバラだが、体調や症状と一緒に医師のコメントが書かれていた。
それは本人から聞いた話だったり、侍従や使用人からの情報だったりと様々だ。
医師の手によって綴られた文字の束は、マコーミックの手からマリアンに渡り、マリアンは読み終えると、ダレスに渡していった。
一通りこの場にいる全員が、全ての栞のページを確認したところで、マリアンが尋ねる。
「ごめん、ネロ。読んだけど何が言いたいのかわからないわ。誰か、分かるなら説明して」
マコーミックは、眉間に皺を寄せて考えていた。ダレスはぶつぶつ独り言を呟いている。
冷静になってローデンも考えたい。
「少し整理させてくれ」
ここ最近のメイリーン様は、体調は悪化してはいないものの、心労のためか元気がない。
王様は辺境伯の城に行ったきりだ。仲の良いご兄妹だからさぞご心配だろう。
その上、訪問先で王様の補佐をしているはずの辺境伯が王宮に来ている。
ただ来ているだけでなく、王宮では我が物顔で振る舞っているとの噂話が広まっていた。
俺たち治療師から伝えるつもりはなかったのに、どこかからかメイリーン様のお耳にも入ったようだった。
メイリーン様贔屓のマリアンだけでなく、治療団としては、メイリーン様の健康を害するような噂話を無責任に伝えた者が許せない。
精神状態から病気が悪化させることもあるからだ。
そんな時に治療記録からネロが気付いた内容は、膠着状態の治療の現状に、光明が差したかのようなものだった。
ローデン個人としては、貴族の知り合いから聞かされる王様のお立場についてや、王様と一緒に行動するコーヤの安否が心配だった。
だが今、残された我々にできることで、メイリーン様をお支えし、それが巡り巡って王や国にも貢献することになればと、治療団代表としての使命感に駆られる。発見は一考の余地があった。
メンバーを見回して口を開いた。
「王宮の情勢が不安定な中、精神的にも体調面でもメイリーン様に健やかであっていただけるかどうかは我々にかかっている。
コーヤが不在ではあるが、治療団は一団となって事に当たろう」
皆が真剣な瞳で話すローデンを見つめ頷いた。




