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隣街

 荷造りも終え、出発前にこれからの決め事を話していた時だった。

 昨日頼んだことを伝えに、治療した子の父親が来た。

 庶民ではなさそうな出立ちをした男達が、金髪の若い貴族を探していたようだと教えてくれる。やはり追ってがあるようだ。

 カルレイン王をさすがに王様と呼びかけるわけにはいかない。

 そんな時、王様が平民設定を提案してきたのだ。

「カルレイン王が平民に扮装するんですか?いや、無理ですって」

「俺もそう思うぞ。こんなに偉そうな平民なんてどこ探したっていないだろ。逆にいたら爪弾きにされてるな」

「何故だ。私と対等な口が利けるのだぞ。エリックのその生意気な口に合わせてやると言っているのだが?」

 何故か、歪み合う2人の間で調整役をする羽目になっている。

「王様の口調や立ち居振る舞いは、生まれついてからずっと体に染みついたものですよね。きっとすぐに平民らしくは出来ないと思います」

 口は悪いが、エリックの言うこともわかるため、王様になるべくやんわりと伝える。

「貴族と従者というのはどうですか?お名前も、エリックに説明していたカルロに変えて」

「貴族のカルロか、よし。では爵位は男爵あたりでどうだ。領地を持たない貧乏でもおかしくはないからな。カルロ男爵と呼ぶように」

 爵位については、名前くらいしかわからない俺とエリックに依存はない。

「貴族ならその服装でも問題ないのか?」

 王様は自分の服装を見下ろしてから、(おもむろ)に、ついていた飾りを外し始めた。

「エリックもたまには良いことを言うな。服装はまあ一張羅としても、貧乏男爵にこれらは豪華過ぎだ。売って旅費にしよう」

「そんな。外しておくだけで良いではありませんか。旅費は私が治療をして稼ぎますから」

 これからどんな旅になるかわからないが、王様が王宮に戻った時に、見すぼらしくあって欲しくない。

 俺の必死な反対に驚いた様子の王様だったが、気持ちは変わらないらしく、飾りを一纏(ひとまと)めにして手渡してくる。

「全部いっぺんにではなくとも、必要な時に必要なだけ売るんだ。お前に預けておく」

 手渡された飾りを伝って王様の手の温もりが感じられた。俺が受け取るまで譲る気はないのだろう。

「いつまで手を握ってるんだよ。早く離れろよ」

 エリックに言われ、俺の手に残った飾りたちは、財布代わりの巾着袋へ大事に収納した。


 まずは隣町まで歩いて向かうことになった。

「崖から落ちたことで近道ができたな」

 どこを歩いているのかさっぱりわからない俺と違い、王様の頭の中には国土の地図が入っている。

 その土地ごとに領主がいて、領主をする貴族が屋敷を構えているが、王都に別の屋敷を持ち住んでいることも多いそうだ。

 歩きながら土地に(まつ)わる話を聞かせてくれる。

 脚の長い王様のペースに、若いエリックは楽について歩く。エリックは来た道を戻るため土地勘もあった。

 俺はそんな2人について行くだけで必死だった。

 隣町には着いたのは夕方だ。

「この街に治療院はあるのかな」

 キョロキョロと辺りを見回す俺に、エリックが大通りの先を指差す。

「たしか、あっちに小さい治療院があったと思う」

 行きに寄った食堂の近くで見かけたようだ。

「王……カルロを探していた者が、治療院にも探しに来ていたのではないかと思います。挨拶もしたいし、俺、聞いて来ます」

 近くの宿を探す2人と一旦別れ、治療院へと向かう。


 中央治療院よりはずいぶん小さい治療院だが、清潔に保たれ整理整頓されていた。働いているのは、年配の男の医師1人だった。

「こんにちは」

「患者かい?そこで待っててくれ」

 程なくして男がやって来る。

「患者ではなく旅の治療師をしている者です。ご挨拶に伺いました。今夜は近くの宿に泊まる予定なのですが、治癒魔法が必要な時はお声を掛けてくださいね」

「ほう。治癒魔法とは珍しいね。この街のお偉いさんで治療が必要な奴がいるんだが。後で声を掛けておくよ。直接宿に行ってもいいのかい?」

「わかりました。あとお尋ねしたいことが……」

 この街の治療師は親切にも、俺に昼間あった出来事を教えてくれた。

 2人に早く伝えなければと、俺は急いで待ち合わせの場所に向かった。

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