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助け

 息をのみ、じっと見つめていた草むらが2つに割れる。はっとしたが、現れた人物からは聞き覚えのある声がした。

「あれ?コーヤじゃないか、久しぶりだね!」

 俺は、気が抜けて、地面にペタリと尻を着く。

「何で……エリックがここに?」

「何でって、俺はモンデプス院長に使いを頼まれて、薬草の種を仕入れに麓の村に。こんなところでコーヤに会えるなんて、ついてるな」

 どう考えてもエリックに会えた俺の方がついてる。

 用事が終わって帰ろうとしたら、山に珍しい果物がなると聞いて、土産にと取りにきたエリックを褒め讃えたい。

「コーヤこそ、何で?誰か怪我人?」

 暫く会わない間にまた背の伸びたエリックが、ヒョイと俺の後ろを覗き込む。

「エリック、悪いんだけど、手伝って貰えないだろうか」

 エリックと手分けして材料を調達する。

 パドウ達が探しに来ない今、ここに長居は危険だ。

 長い枝を2本と、上着や草の蔓を使い即席のタンカを作り、2人がかりで王様を乗せた。

 頂上に向かってもパドウ達に会える保証はなく、王様の無事を優先するなら山を降りるしかない。

 エリックには道すがら、王様のことは偉い貴族ということにして、自分を庇って崖から落ちたと説明した。王様だなんて聞いたら腰を抜かしてしまうという配慮だった。

 幸いエリックは信じてくれ、少しの水や食べ物も持ち合わせていた。落ち込む気持ちも気の知れたエリックと話すことで忘れられる。

 神様が願いを聞き入れてくれたんだと、感謝しつつ麓を目指していたが、試練はこれで終わりではなかった。

 

 麓の村に着く頃には夜に近くなっていた。

 村外れに空き家があったので、申し訳ないが一晩だけと言い訳をして入り込む。

 井戸と(かまど)が使えるか確認した後、

「じゃ、ちょっと行って聞いてくるね」

 と、エリックは顔見知りの農家に話しを聞きに行った。

 俺は魔法も併用して湯を沸かす。まだ意識が戻らない王様の体を綺麗に拭いてあげたかった。

「王様、服脱がしますね」

 こんな状況じゃない時に、王様の肌に触れたかったな、と衣服を脱がしながら思う。

 王様とのキスは、思い出すまいと思っても無理だった。胸がキュンとする。それほど良かった。

 あの時は、流されまいと必死だった。今考えるとバカみたいだ。こんなことになるなら。

 今は、男だからと拒んだことを後悔している。

 好きなんだ、俺。王様のことがきっと。

 自分の思いを自覚する。王様の意識が戻ったら、俺からキスしたいくらいだった。

 でも。今は気持ちを切り替えて、看病しよう。

「早く起きないと、俺に、どこもかしこも見られちゃいますよ」

 俺は手早く清拭を終えると、王様の威厳を保つように、着衣をしっかり整えた。

 そうこうしているうちに、エリックが差し入れを手に、気まずそうに帰って来る。

 期待はしていなかったが、この村には薬草や野菜を作る農家が数軒あるだけで治療院はなく、隣の村まではだいぶあるとのことだった。

 治療師と合流したと伝えると、怪我人を診て欲しいと頼まれ、差し入れをくれたそうだ。

「代わりに少しばかりの銅貨をくれるって」

「そうか。困ってる人がいるなら行ってくるよ。でもお礼は受け取るつもりはないよ」

「だけど、王都に戻るのにも宿に泊まるにもお金を稼がなきゃ」

 エリックの言う通りだった。

 家族が他界した昨年から1人で生きなきゃならなかったエリックは、良い意味で現実的だった。目を覚ませられる。

 俺は、王様を王宮まで送り届けなくてはならないのだ。護衛もいない状況で、どこに敵に連なる者がわからない中、王様だと吹聴して歩く訳にはいかなかった。

 意識を取り戻した王様にひもじい思いはさせられない。

「エリック悪いけど、この……カルレ……カルロさんを、頼んだよ。目を離さないでね」

「わかったよ。いってらっしゃい」

 ホッとして満面の笑みを浮かべるエリックは、まだあどけなく弟のようで可愛い。

「どうした?エリック。笑うところあった?」

「なんか新婚さんみたいだなって」

「ん?誰が?」

 首を捻りながらも、魔法で灯した松明を手に夜道を急いだ。

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