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近衛騎士

 ただ黙って馬にしがみつく俺にはわからないところで、後ろで手綱を引く近衛兵が馬を操っていた。

 前や横を駆ける馬の乗り手と合図を送り合っていたようで、一団となっていた馬の脚が徐々に速度を緩める。

 顔にモロにぶつかる、呼吸さえ妨げていた向かい風が弱くなって、ほっと息ができた。

「コーヤ、大丈夫か」

 やがて俺の乗っていた馬の脚がその場での足踏みに変わった時、斜め前方を走っていた王様が、隣に下がり横に並び、俺の頬に手を伸ばしてきた。

「冷たいな。寒くはないか」

「……大丈夫です」

 強がりではない。触れられた途端、王様の触れた場所から熱が全身に広がっていった。

 朝日の中で見る、馬に跨る筋骨隆々な姿と、金髪を乱し、髭のうっすら生えかけた、カルレイン王の野生的な顔の破壊力が凄まじい。男ながら見惚れてしまう。

 こんな状況で不遜なことを考える自分に呆れながら、明るくなりかけの空に目を逸らす。

「そうか。暫し休憩を取ったらまた急ぎ出発だ。しっかり休んでおけ」

 洸哉の疲労の具合を確認した王様は、パドウと他の側近が打ち合わせている方へ行ってしまう。

「手をどうぞ」

 俺を同乗させてくれた近衛は、ナージャと名乗り、正しくは近衛騎士だそうだ。自分が先に馬から降り、俺に降りるための手を貸してくれた。

「慣れない乗馬は疲れたでしょう。水をどうぞ」

「ありがとうございます」

 手渡された水を飲み、何から何まで人の手を煩わせていることに、罪悪感を抱く。

 今は好意に甘えるしかできないが、俺も王様と共に王宮を目指す一団の1人として、何か出来ることをしたい。

 喉を潤す間、一度側を離れて馬の世話をしてきたらしいナージャが戻ってきた。

「今、どれくらいの行程まで来たのですか?」

「まだ国境から離れたばかりですよ。王宮までは全体の5分の1位でしょうか」

 まだ、そんなものなのか。

「でも、途中でまた休憩や、協力を仰げる貴族の屋敷もありますので、辛かったら仰って下さいね」

 黙ってしまった俺を心配そうな目で見ている。

「あ、違うんです。俺より、馬が大変だなと思って」

 今度は、馬の心配をする俺に驚きの目を向ける。

「あ、そうだ。もし良かったら、俺治癒魔法で馬のコンディションを上げられるかも。調子の悪そうな馬はいませんか?」

「もしかして、治癒魔法使いなんですか?そうですか、陛下の大事な人は特殊な力もお持ちなんですね」

 王様の恋人作戦は、味方にも功を奏していたようだ。俺がバラしてしまったらダメじゃないか。

 慌てる俺をどう思ったのか、ナージャは離れた所で水を飲む馬へと案内した。

「私は口外しませんので安心して下さい。実は前を走っていたこの馬が、いつもと違う歩調だったんです。診ていただけますか」

 勘違いされている気がしないでもないが、今は馬が優先だ。

「どの脚かわかりますか?」

「恐らくですが、後ろの左かと」

 蹴られないように馬の周りをぐるっと大回りしてから、繋がれた馬の患部を探す。少し腫れているようだ。

「動物に治癒魔法を使った事はないんですが、ダメ元でやってみます」

 黒光りする馬の後ろ脚に手を翳し、力を込めた。光が集まりやがて消える。

「ふぅ。これで痛くなく走れれば良いんですが」

 ナージャの瞳に驚きが浮かんでいる。

「あぁ。やっぱり陛下が選ばれたお方は尊い。この後の行程でも、コーヤの安全は私にお任せ下さい」

 俺に向けて、片足を地に付け跪く騎士の礼を捧げてくる。

 その瞳は尊敬念が込められ潤んでいた。

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