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辺境伯の城

 ミダリル辺境伯の屋敷は、馬車でさほどかからない距離の丘の上に建っていた。

 来る時と同じような、緊迫した辛い時間が続くのかと覚悟していたから、呆気ないほど早い到着に気が抜ける。

 馬車の窓から見える、段々と大きくなるお城のような建物は、ネズミの国のアトラクションか映画のセットを見ているような気持ちになった。

 「もう着いたんですか?さっきの山の麓が国境なんですよね?」

 横のパドウに向かい、つい尋ねてしまったが、答えをくれたのは思いがけず王様だった。

「そうだ。辺境伯は、国境を守る任務の呼称だからな」

「そうなんですね。貴族位の1つかと思っていました」

 あ、いけない。

 今まで王様とお会いする時は、1番最初を除くと他の治療師とも一緒だった。当然、右へならえで俯いていることが殆どだ。

 でも本来、話しをする人の目を見るのが当たり前として育った俺は、つい王様の顔を真正面から見つめてしまい、慌てて頭を下げる。

「コーヤは異世界から来たと聞いていたが、この世界のことで、わからなくて困ることはないか?」

 王様の声がパドウとの仕事の話しの時と違い、優しく平易な言葉使いなのを良いことに、思い切って顔を上げる。

「俺、何で今日ここに連れて来られたのかも、今はわかったけど、どこに行くのかもわからなかったんで、不安でした」

 顔を上げると、話しを聞いてくれている王様の顔が目の前にあった。馬車だからしょうがない。

 近くで見ると、王様が思っていたより若く、俺の顔をじっと見る瞳が、青く透明なのを初めて知る。

「パドウ、説明しなかったのか」

 王様は苦い顔でパドウに顔を向ける。

「申し訳ございません。本日の視察の決定が余りにも急だったものですから、その余裕がありませんでした」

 パドウが王様に、ちっとも悪いと思っていないように聞こえる嫌味な言い方で謝っている。

「フフ」

 慌てて口を抑えるが、狭い馬車内だ。聞こえて当然だった。

「なんだ」

「申し訳ありません。陛下がパドウと親しそうで」

「ほら見ろ、いつも言ってるだろう。ちゃんと敬え。お前は昔から敬意が足りない」

「そうはおっしゃいましても、誰も見ていないとつい緩むのも仕方がないかと」

 イヤイヤ、俺見てるから。俺見えてるよね?

「コーヤがいるだろう。王の威厳をどうしてくれる」

 良かった。王様には俺が見えていた。

「コーヤは異世界人ですから問題ありません」

 澄まして言うパドウに、王様が大きな溜め息をついて諦めたようだ。

「行くぞ。手筈通りに」

「かしこまりました」

 パドウが角にある紐を引き、王様との合言葉のようなやり取りが終わった直後、外から声がかけられ扉が開く。

 パドウは先に降り、王様が降りられるのを扉の横で待機していた。

 続く王様の身体と扉の隙間からは、沢山の使用人と貴族らしい人が見えた。

 王様が優雅な所作で馬車を降りるのを背中から見つめ、考える。

 せっかく教えてもらえそうなチャンスだったのに、俺が何をしに連れて来られたのか聞きそびれてしまった。

 だがさっきの雰囲気なら、またすぐ聞くチャンスは来そうだ。

 せっかくだし、お城の見学でもさせてもらえるかパドウに聞いてみるか。治療師のみんなに土産話にしよう。

 俺は、そう楽観視し、王様が降りた後から、馬車を降りた。

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