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あなたの愛する人は私じゃない

作者: 猫の靴下

誤字報告ありがとうございます!

適当に書いているのがばれますな><

「女性はこういうのが好きでしょう?」


そういって婚約者である私にいろいろ押し付けてくるネガトン伯爵令息。

デートに誘うは観劇やスイーツの店。そして贈るドレスはフリッフリのフリル付き。

ちなみに私ことガーネット・アシュトン伯爵令嬢はそういう系は嫌いである。


「申し訳ないのですが、フリルもケーキも観劇も嫌いなんです」


そう何度伝えても通じてないらしい。

毎回、私の言葉を否定してこういう。


「女性はこういうのが好きでしょう?」


どうやら彼は私じゃない女性の好みを知ってるようだ。





私たちの婚約はあまり政略的な意味はない。

同じ派閥で父親同士がお酒を飲んだ時になんとなくそういう話になったそうだ。


もしかして私に会う前に恋人がいたのかと調べてみたが、むしろ影すらなかった。

ではいったい彼の言う『女性』とは誰のことだろう?

やんわりと両親に婚約無効を申し出てみたが、相手の伯爵家が乗り気で婚約続行となってしまった。


曰く、

「女性慣れしてないので、良く教えてあげてください」


なぜ、私が教えねばならないのか?


もしかしてそのような人が彼の好みなのだろうか?

彼の言うような『女性』を連れて行ったらどうなるのだろう?

私が彼に合わせる?

いやいや、結婚なんて一生なんだからここまで合わないと無理なんじゃ?

というか私の好み完全に無視してるよね?



自宅でメイドたちを集めて好みを聞いてみたら、彼のいう『彼女』にぴったりの子がいた。

私はメイドであるシトリンに話を持ち掛ける。


事情を話して一緒にデートについてきてもらう。



ネガトン伯爵令息が来る日に合わせてシトリンもお洒落をさせる。

彼の言う通りフリフリしたピンク色のドレスを着てもらう。

私の髪は紫色なのでピンクは合わないが、シトリンにはすごく似合う。


令息が我が家へ来て、ピンクの花束を差し出す。


「お邪魔します。こういう花束好きでしょう?」


私の前に差し出されたのでこういい返す。


「まぁ!綺麗ね。ふわふわしたシトリンにぴったりよ」

「え?シトリン?」

「彼女がシトリン。一緒に住んでるのよ」

「え?ああ、よろしく」

「初めまして、ネガトン伯爵令息様」


それから軽くお茶にして、彼の持ってきたケーキをシトリンに食べてもらう。


「あ、ええとどうして彼女もここに?」

「え?自宅なのに一緒にいるのあたりまえでしょう?」

「・・・そういうものか」


婚約者と会うということを彼もよくわかってないらしい。

そのまま普通に3人でお茶を飲んだ。


そして毎回デートとして会うときはシトリンにお洒落させて連れ出す。


「女性はこういうのが好きでしょう?」

と、毎回言うので私も答える。

「私は嫌いだけどシトリンは好きなのよ」


そのうち少しずつ言い方を変えていく。

「『女性』じゃなくて『シトリンはこういうのが好きでしょう?』と言ってほしいわ」


毎回しつこく言ってやったらついにそう言うようになった。

どちらか不機嫌になったら困るくらいに思っていたのだろう。

やった!


1年間ずっと3人でデートしていたので当たり前になってきたころ、伯爵家にお邪魔する日が来た。

もちろんシトリンと一緒に行く。

どうやら伯爵家に嫁入りするにあたって覚えることがいろいろあるのだそうだ。


シトリンは侍女としているので疑われることもない。

それに他家へ訪問するのだからそれなりの服装であってもおかしくはないのだ。


伯爵夫人が出て来てまずはお茶を勧められる。


「あの子がなかなか言い出さないけどお互い上手くいってるのかしら?」

「はい。彼の言う女性像は把握しました」

「よかったわ。あの子は結婚に関心がなさそうだったからほっとしてるの」

「ふわふわして可愛らしく甘えてくる女性が好みらしいですわ」


夫人はちょっと首をかしげる。

目の前の女性、ガーネットはむしろカッコイイ感じにカチッとした服装だ。

(それでも息子のために合わせてるなんて、愛だわ)

などと勘違いをする。


ガーネットは敢えて訂正しなかった。

本当のことを話すにはまだ弱かったのだ。




ある日、観劇に誘われた。

3人で出かける。もうすでに違和感はなくなっている。


「女性はこういうのが好きでしょう?」

「伯爵令息、そこは・・」

「ああすまん。シトリンはこういうのが好きでしょう?」

「もちろんですわ。今日はずっと楽しみにしてましたの」


ふふふ。いい感じだ。

観劇の席は2階の長椅子で3人ゆったり座れる。

もちろん彼の隣はシトリンだ。


私はさりげなく飲み物貰ってきますねと席を外す。

かなり彼は勘違いしてきたようだ。




我が家からは婚約白紙を願い出る。


「二人の仲は良好だと聞いたが、何か家の問題だろうか?」

と、ネガトン伯爵も何かおかしいと気が付いたらしい。


結婚前に家同士集まって話をすることになった。




ネガトン伯爵屋敷に我が家全員で押しかける。


「早速ですがこちらは婚約白紙を望みます」

「いやいや、まずは理由をお聞かせください」

「我が娘とそちらの令息ではお互い性格が合わないようでしてな」

「合わない?関係は良好だと聞いておりますが?」

「おや?ガーネットどうなんだい?」


「関係は進んでおりません。

 未だにネガトン伯爵令息を他人として接しております」

「それはどういうことですかな?」

「彼は私の好みを知りません。

 興味のないものを贈ってくるし、合わないドレスの場合もありました。

 どう考えても私に興味があるとは思えません」

「む、しかしもう少し様子をだな・・・」

「もう少しもう少しって、すでに1年過ぎております」


「結婚式の日取りをもう決めてるのか?」

そこに遅れて入って来たネガトン伯爵令息。


「遅れて来て何を言ってるのだ。ここに座りなさい。

 お前に聞きたいことがある。

 アシュトン伯爵令嬢とは上手くいってるんじゃなかったのか?」

「はい。先日も観劇に行きとても喜んでもらいました」


「喜んでね・・・それ誰のことかしら?」

思わず私も聞き返す。


「誰って君のことじゃないか」

「あら、そうなのですか?では何の話か覚えてらっしゃる?」

「もちろんだとも!

 俳優の衣装がきらびやかだとか、誰それのドレスが流行りだとかそれはそれは嬉しそうに」


思わず私は笑った。

「どうだい、君だって喜んでいたし、思い出したかい?」


そこで私は爆弾を落とす。

「私は劇を見てないので知りませんわ。

 どなたと話したのですか?」

「は?・・・・え?」


しばらく固まるネガトン伯爵令息。

不器用なのですぐに言葉が出ないのですね。


「お、おい、どうしたのだ?

 一緒に行ってないのか?」

どうやら伯爵は何かに気が付いたらしい。


「い、いや・・君もいただろ?確か馬車に一緒に乗った」

「ええ、二人を劇場まで送ったあと、その後私は一人でお茶してたわ」

「は?」


ネガトン伯爵さまはすぐに気が付いて聞いてきた。


「二人・・・とは?」

「ええ、デートの邪魔してはぶしつけだと思いまして」

「いやまて、我が息子は一体誰とデートしたのだ!?」


そこで後ろに立ってるシトリンを紹介する。


「毎回、伯爵令息様にお誘いいただいてるシトリンですわ」




真っ青になるネガトン伯爵令息。


「は?え?え?・・ちが・・・ちがうんだ」

「何が違うのかしら?」

「嫌だって・・・君だって・・いただろ?」


「確かにいましたが、彼の贈り物はすべてシトリンが大好きなものばかり。

 つまり、それらは私に合わないものばかりということ。

 そうなるとシトリンに気があると思わずしてどうとれというの?」


「そ、そんなばかな。俺は女性が好むという本を見てその通りにしてたんだ。

 毎回デートに誘うときや贈り物だって・・・」


おや?

どうやら彼は本当に浮気とかじゃなかったんですね。


「ですが毎回『シトリンはこういうのが好きでしょう?』とおっしゃっていたではありませんか。

 そこまで言っておいて信じろって無理がありません?」


「いやあの・・す、すまなかった。嫌だといってくれたらよかったのに」

「何度も言いました。なのに私の言葉は聞いてらっしゃらない。

 毎回嫌なものばかり押し付けられてあなたのことが嫌いになりましたの」


わが両親もあきれ顔だ。

そこまでひどかったのかとぽそりとつぶやく。


「ネガトン様、これ以上話しても無駄なようなので撤回お願いできますか?」


相手はがくりと首を垂れてうなずく。

こうして無事に婚約は白紙となった。





家にもどり、着替えをシトリンに手伝ってもらう。


「お嬢様の代役楽しかったです」

「あら、シトリン。あなたもまんざらではなかったのでは?」

「ええ、まあ。ちやほやしてくれるのだもの」

「なんだったらお話通してもいいのよ?

 私とは合わなかったけど、あなたとは合いそうよ」


「お嬢様何言ってるのですか?

 あの方私を見てるわけじゃなかったんですよ」

「え?どういうこと?」

「私が好きじゃなくて、なんかセリフを覚えて言ってる役者みたいだったんです」

「えええ?気が付かなかったわ」

「なんか視線に熱もこもってないし、そらぞらしくって」



どうやら彼は結婚自体がよく分かっていなかったようだ。

まあ、貴族だし政略結婚はありがちだけど、それでも相手を尊重するのは当たり前だと思うわ。




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