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作者: 一飼 安美

 かーごめ、かごめ。


 夕方の公園で、子どもたちの歌声が聞こえる。私が子どもの頃も歌っていた童謡は、今も歌われているらしい。一人を中に置いてくるくる回ることはもうしない、最近の子だし。でもなんとなく知っていて、なんとなく歌っていて、意味など全然わかっていない。わからなくてもいいと思っているのだろう、意味のない歌だ。なんとなく気になってなんとなく口から出る。童謡なんてそんなものだ。


 かごめ、かごめ。今思えば、気味の悪い歌だ。夕方に子どもが歌っているなんて怖いとしか思わなくなった。肝試しは怖くないのに、子どもの歌声は怖い。きっと、昔の友人から妙なことを聞いたからなのだろう。


 童謡に隠された暗号、徳川埋蔵金の行方。そんなくだらないことを考える大学時代のゼミの友人は、卒業もせずに中退し暗号を解こうとしているらしい。埋蔵金を見つければ、億万長者だ!なんてバカみたいだと思っていたら、そういうことではないという。


 かごめ、かごめ。噛みしめるように歌った童謡の一節に、何を感じたのか彼は言わなかった。鶴と、亀。何だと思う?そう聞かれて、おめでたい、と答えた。それ以外にこの二つの接点はない。友人はあまり聞いていなかったようで、肋骨、肩、光の変化……と一人言を言っていた。昔からちょっとおかしいと思っていたけど、やっぱりおかしいのだろう。私もあまり相手にせず、聞き流していた。夕方の公園から歌声が聞こえなくなって、首だけ使って振り向いた。子どもたちはもういない。元からいなかったのだろうか、人っ子一人見当たらない。あれ……?と思ってのぞきこんでも、誰もいない。聞き間違いなのかな。あるいは、公園じゃなくてもっと遠くで歌っていたとか……。きっとそうだ。私はあまり考えずに帰り道を歩いて、いつもの毎日に戻った。ふと、自分が何か口ずさんでいることに気がついた。


かーごめ、かごめ。籠の中の鳥は、いついつ出やる……。

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