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されど神に感謝すべし(夏合宿編)  作者: 近衛モモ 
Someday My Prince will come
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願う人の夜

 

 ピピーッと電子音。


 数回鳴って、扇兵衛カメラがダウンする。戦闘不能。


 靴ではわからない程度の水位の変化が、扇兵衛の下駄に襲い掛かってきた。


 水位が若干、上がって来てます。


 カメラは落ちたが取り付けていたライトは無事なので、扇兵衛が慌てて手を上げると、光がウロウロしてしまう。


「ほんでカメラも落ちた! なんでや。」


「充電かな!? とりあえず、一回戻ろっか!」


 階段へ戻るまでの岩場が水没したらパーティーも装備も全滅なので、二人は来た時同様に海に急かされて動く。


 何かの意志によってこの場所に急かされ、用が済めば追い出される。


(ようやく見つけた…。けど、時間切れか。)


 この場所に来てから、扇兵衛の表情がくるくる変わることを、大福はずっと気にかけています。


 今は、獲物が窓の外で動いていて捕まえる事が出来ない、もどかしい気持ちの時の猫のような顔だ。


(遂に見つけたんだね、扇兵衛くん。)




     ★★★




「はい。とゆーわけで…。神社の入口まで戻って来ました…。」


 安定の、帰路は編集で切られている『廻向チャンネル』のエンディングのお時間。


「本当はあの洞窟に定点を置いて俺が一人で残って、その間に大福ちゃんに神社の方で気になったところを見てもらう…みたいなことをやりたかったんですけど。


 洞窟までが遠いし、水は来るしで諦めました。」


 水没の危険と、大福に何かあった時にすぐ目が届かない距離等の理由でボツになる企画。


 このチャンネルは素人中学生が二人だけでやっているので、行動がかなり制限されている。


「うーん。今回のまとめとしては…、これまで行った場所で此処より怖い場所ならいくらでもあるかなぁ?

 

 ただ、ここは怖さより謎が多いって感じかな。建物も綺麗で、使われていた感じが全然無いし…。あの石神像とかも、あのビジュアルでなんでゴーサインが出てしまったのか…。」


 見た目大事やろ。


「そう。鳥居も普通、黒ないねん。此処には違和感しかない。」


 初めから個人的な都合で『父蝕糸尊』なる神を追っていた扇兵衛は、その謎に執着することとなる。


「解きたい謎は色々とある場所やから、再挑戦があるかも…?」


「おぉ〜!じゃあ、次の動画も見たいと思ってくれたら、便利なチャンネル登録をお勧めしま〜す!」


 大福ちゃんは宣伝上手な女の子!


 上手く繋げてくる生粋の配信者。


「そう。高評価とかいらん。行く場所によって撮れ高ピンキリなんは自分らが一番わかってるから。見落としないように、登録だけしといてください。」


 背景に立つ黒い鳥居が、来た時とはまた違った角度に傾いて、喋る二人を見下ろしている。


「それでは、また次回の動画でお会いしましょう…♡」


「おおきに! お付き合いありがとうございました!」


「ありがとうございました〜! それじゃ、またね!」


 ゆるやかジャズボッサBGMでお別れとなった心霊検証チャンネルの鬼灯神社編。


 その再挑戦の日は、そう遠くない未来にやってくる。





「機材片付けたら、キャンプ場のテントに撤収! 大福ちゃんは、ちょっと休憩しててください。」


「あ〜〜汗でメイク崩れてないかな〜〜。絶対に編集チェックさせてね!」


 大福ちゃんは横幅も気にするけど、カメラ映りもだいぶ気にするのだ!


 大福にしか視えないものを連れて帰らないように、扇兵衛が三脚等を片付ける間、大福が休憩がてら見張りをする。


 幼馴染の二人なので、役割分担は阿吽の呼吸。


 大福は扇兵衛が背中を向けて作業しているうちにと、スマホを取り出しメッセージアプリを呼び出した。


『先生』とのトークを選択し、素早く用件を書き込む。指先のネイルは、夏らしいサマーカラーに涼し気な扇の模様。凝っている。



『扇兵衛くんが、「神様」を見つけたみたい。先生なら助けに来てくれるよね? 信じて待ってるよ!』



 未来に起こる戦いを思い、救いを願う人の夜。


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