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第十話 ねことねずみ

 ある日、恵が幣殿内を掃除していると、突然扉が爆発しました。 


 「え、え、何、何!?」

 「いてて……失敗失敗⭐︎」

 

 爆発の残骸の中から、鼠がひょこんと顔を出しました。


 「だ、大丈夫?」

 「あ、キミは新しく入ったお手伝いさんかな⭐︎ この爆発ゎいつものことだから心配しないで⭐︎」

 「そうなんだ……。 ええっと、あなたは一体、何をしてたの?」

 「この神社全体を近代化させようと思って、GOD発電機を作ろうとしたんだょ⭐︎ 今はケータイ充電するのに、いちいち雷様にお願いしなきゃいけないから大変なんだ⭐︎ キミも電気使えた方が嬉しいよね⭐︎」

 「確かに、掃除機とか使えたら私も嬉しいかな」

 「あ、そうだ⭐︎ もし暇だったら、ボクのアシスタントを…………!?」


 鼠はとつぜん、ぷるぷると震え出しました。


 「だ、大丈夫?」

 「こ、この静電気量は……、あ、あいつが来てる!? ちょ、ちょっと失礼!」

 

 そう言うと、鼠は恵の服の中にすっぽりと隠れました。


 「ひゃん!」

 (もし誰か来ても、ボクはいないって言って!)

 「え? え? どうゆうこと?」


◇ ◇ ◇


 「ちょっと、よろしいかしら。 そこの人間さん」


 恵が困惑していると、白い三毛猫が話しかけてきました。


 「あ、はい。 なんでしょうか?」

 「この辺で、ちっちゃくて部屋をしょっちゅう爆破させてる鼠を見なかったかしら? あたし、彼に話があるの」

 「え? それなら……」

 (居ないって言って!!!)

 「…………見てないです」

 「ほんとに?」

 「は、はい……」

 「ほんとのほんとぉに?」

 「う、うぅ……」


 猫は恵をじろじろと見つめました。


 (ねえ、正直に話しちゃダメ? この猫さん、困ってるみたいだけど)

 (ダメ! バレたらボクが困るの!)


 そうこうしていると、犬が近くを通りかかりました。


 「あ、めぐみさんとねこさん、こんにちは!! あれ? めぐみさんから、ねずみさんのにおいがします!!」

 (おいふざけんなこのバカ犬余計なこと言うんじゃねえ!)

 「…………」

 (ね、ねえ、さすがもう無理なんじゃ……)

 (……ま、まだいける……と思う)


 そうこうしていると、今度は蛇が近くを通りかかりました。


 「あ、うっす。 あんた、なんで背中だけ体温高いの?」

 (なんで感覚器官鋭いやつばっか来んだよふざけんなクソが!)

 「……そこかぁ!!」


 猫は恵みの背中を引っ掻こうとしました。恵は寸前のところで避け、その中から鼠が飛び出してきました。そして鼠は犬に飛び乗りました。

 

 「こうなったら、逃げるしかない! 犬くん、全速全身だーっ!!」

 「は、はいいい!!!!」

 「待ちなさーい!!」


 猫は鼠を追いかけ出しました。

 

 「???」

 

◇ ◇ ◇


 「はっはっ……つ、つかれましたー……」

 「くっ、ちょっと無理させすぎたかも……」


 すると、へろへろになった犬の前に、おにくが落ちていました。


 「! わーい、おにくですー!」


 犬がおにくに近づくと、上から網が落ちてきました。鼠は網の隙間からにゅるっと抜け出しました。


 「わー、うごけないですーー!!」

 「チッ、あの猫、罠を仕掛けてやがったな……。 ごめん、犬くん! ボクは生き延びてみせるよ!」

 「わー、おいていかないでくださいーー!!」


 そう言って、鼠は一人で走り去って行きました。


◇ ◇ ◇

 

 「ひぃー……、つ、疲れる……。 犬、助けた方が良かったか……」


 すると、ふらふらになったネズミの前に、チーズが落ちていました。


 「! わーい、チーズだー!」


 鼠がチーズに近づくと、上から網が落ちてきました。しかし、ネズミはバックステップでいとも容易く避けました。


 「同じ手には引っかからないよーだ⭐︎ そもそも鼠はチーズ食べないよ⭐︎」

 「そんなの知っているわ。 チーズトラップは囮よ!」

 「!?」


 鼠が下がったところには、猫が待ち構えていました。


 「覚悟しなさい!」

 「ふ、ふざけんな! こんなところで捕まってたまるかーっ!」


 そう言うと鼠は、どこからか取り出した小槌で、猫の指(肉球?)を思いっきり殴りました。


 「@#%$¥*&%#ーーーー!?」

 「こういうの『窮鼠、猫を噛む』って言うんだよーーっ⭐︎ 勝ち確だと思っても、油断しちゃダメだよーだ⭐︎」

 「せやな、お前のことやぞ、鼠」

 「!?」


 そういうと、猫のさらに後ろに隠れてい虎は、ネズミを思いっきり吹き飛ばしました。そして、鼠は網に絡まりました。


 「ひー……。 ありがとう、虎ちゃん。 入り口でお願いしておいて正解だったわ」

 「おう、まあ一応、猫仲間としてな」

 「助けてーー!」


◇ ◇ ◇


 「さあ、今日こそは覚悟しなさい!」

 「ふざけんな! この世は弱肉強食、早い者勝ちだろうが! 騙されるお前が悪いんじゃ、この間抜け!」

 「な、なんですってーー!?」

 「二人とも、ケンカはやめなさーい!」


 口論する二人を、恵みが止めました。


 「何をそんなに争ってるの!」

 「ちょっと聞いてちょうだい! こいつってば、私にわざと集合時間より遅い時間教えてきやがったのよ! いくら先着12名までだからって酷くない?」

 「鼠くん、謝りなさい」

 「えーー」

 「えーじゃない」

 「……ゴメンナサイ」

 「はい、よくできました」

 「誤っても許さないわよ!」

 「猫さんも、そんなこと言わないで」

 「ご、ゴメンナサイ……」


 こうして二匹は仲直りしました。


 「あ、お手伝いさん。 いろいろ迷惑かけちゃったね。 お詫びにアレしてあげる⭐︎」


 そう言うと、鼠は恵の頭に乗っかり、呪文のようなものを呟き始めました。


 「掛けまくも畏き聖の大神、高天原に神留り坐す天照大神、お手伝いさんの仕へ奉ること許されあらなむば、第壱刻のもと、祓えたまへ、清めたまへ、神ながら守りたまひ、幸えたまへと白す事を聞こし食せと恐み恐みも白す」


 鼠がそう言うと、恵の体内を電流が迸ったような気がしました。その後、体がぽかぽかと暖かくなる感覚に陥りました。


 「ありがとう、鼠さん」

 「人間さん、騙されちゃダメよ! こいつ、私のこと騙したんだから」

 「うるせぇ! お前だって他の動物より先に情報リークしようとしたじゃねえか!」

 「ま、まあまあ二人とも……」


 こうして恵は鼠からも認められたのでした。はたして他の神使たちは彼女を認めてくれるでしょうか?


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