第八話 もふひつじ
ある日、舞台のそばに、もふもふしたものがありました。
「もふもふ」
「あ、ひつじさん!! きょうはどうしたんですか???」
もふもふの正体は羊でした。犬は羊近づいていきました。
「もふは、今日はもふもふしているのです」
「たしかに、もふもふしています!!」
「犬は、もふを守ってくれるいいひとです。 もふもふする権利をあげます」
「わーい!!」
すると、犬は羊に飲み込まれました。
「わー、もふもふです!!」
◇ ◇ ◇
「あらぁ、羊ちゃんにワンちゃん。 どうしたの?」
羊のそばに牛が通りかかりました。
「もふもふ」
「あら、今日はもふもふなのね」
「牛は、もふと同じなのです。 もふもふする権利をあげます」
「あら、そうなの。 じゃあ遠慮なく」
すると、牛は羊に飲み込まれました。
「あらぁ、もふもふなのね」
◇ ◇ ◇
「……なにやってんだ」
羊のそばに今度は猿が通りかかりました。
「もふもふ」
「……お前、この前まではもこもこじゃなかったか?」
「今日からもふもふなのです。 猿ももふもふするですか?」
「えっ!? ……いや、だめだ! お前にもふもふされると、ダメになっちまう!」
しかし、羊のもふもふは勢いを増していきます。
「し、しかし……、ぐぬぬ……。 ええい、もう我慢できん!」
すると、猿は羊に飲み込まれました。
「もふもふ」
「ああ……なんも考えられねぇ……ちくしょう……」
◇ ◇ ◇
「わっ、すごいもふもふしてる!?」
羊のそばに恵が通りかかりました。
「もふもふ」
「あっ、犬くんと牛さんと猿くんと神様が取り込まれてる!」
「ちょー気持ちいい……」
「もふも……あ、人間だ」
羊はもふもふを解除しました。犬と牛と猿と神様は吹き飛ばされました。
「「「「ぎゃーーーーっ!」」」」
「あーー、みんなーーっ!」
「みんななら、もふがもふもふにしておいたので大丈夫です」
「も、もふもふ……? それなら安心……なのかな?」
羊は恵の方にもふもふしながら寄って来ました。
「犬から聞きました。 あなた、もふのお世話してくれるですか?」
「ええっと、そうだけど……」
「嬉しいです。 もふは犬と人間に育てられました。 また人間にお世話してもらえることが嬉しいです」
そうすると、羊は恵に鼻を向け、呪文のようなものを呟き始めました。
「掛けまくも畏き聖の大神、高天原に神留り坐す天照大神、あなたの仕へ奉ること許されあらなむば、第捌刻のもと、祓えたまへ、清めたまへ、神ながら守りたまひ、幸えたまへと白す事を聞こし食せと恐み恐みも白す」
羊がそう言うと、恵はぽかぽか……というよりむしろ、燃えるように熱い感覚に陥りました。
「ええっと、ありがとう。 これからよろしくね」
「はい。 それでは、あなたももふもふするです」
「……!?」
◇ ◇ ◇
それからしばらくして、神様が毛だらけで戻って来ました。
「ふいぃ、羊にもふもふにしてもらってなかったら即死だったぜ。 ……ん?」
そこでは恵が羊に取り込まれていました。
「た、助けてー」
「もふもふ」
こうして恵は羊からも認められたのでした(?)。はたして他の神使たちは彼女を認めてくれるでしょうか?