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シーン10 ~第三の犠牲者~

キャーと、屋敷の外から悲鳴が上がった。


「なんだ、どうした」


ボンクラー警部補が、飲みかけのコーヒーを置いて立ち上がった。


ーーやはり、外出を許可したのは、間違いだったか?


警部補は、素早く頭を回転させながら、声のする方に向かった。


朝になると、人々は少しずつ、大広間から離れて行動するようになった。ボンクラー警部補は全員に、十分に警戒するよう促したが、単独行動でなければ、多少は問題ないと考えていた。


おそらく一連の殺人事件の犯人は、フメイナルだ。、、、そこまでは、ボンクラー警部補も分かっていた。もうどこかに逃げてしまったかもしれないし、まだ、屋敷のどこかに潜んでいるかもしれない。


この屋敷に残っていたとして、フメイナルがこのまま、全員を殺して回る、ということはさすがに考えにくいと、警部補は判断していた。


何しろ、人数が多い。複数人で行動していればーー特に男性がいれば、襲われても、多少は抵抗できる。一撃でやられなければ、残りの人間が駆けつけて、フメイナルを取り押さえることができるのではないか。


そう考えていたから、使用人たちが「嵐の影響で、屋敷に傷んだところがないか、外の様子を見たい」と言い出したときも、二人以上で行動することを条件に、許可した。


中年の男性の使用人と、まだ若い女性の使用人が二人で、外に出て行った。それから十分もしないうちに、悲鳴が聞こえたのだ。


ーーもしフメイナルが現れたのなら、私が逮捕しなければ!


慌てて駆け付けると、屋敷を出て少し歩いたところにある、物置のような場所で、中年の使用人が青ざめた顔で前方を指さしていた。見ると、若い女性の使用人が、腰をぬかしてへたりこんでいる。


そのすぐそばに、段ボール箱があった。


「ここ、こんなものが置いてありました。昨晩はなかったのに」


「、、、中身を見たのですかな?」


ボンクラー警部補が、十分に警戒しながら段ボールに近づく。中年男性の使用人は、段ボール箱に近寄りたくないようで、歯をガチガチ言わせながら答えた。


「はい、そそそそれが、恐ろしいものが入っていまして」


ボンクラー警部補が、ゆっくりと、ふたを開けた。


「うっ! これは、、、!」


警部補は思わず、息をのんだ。


それは、切断された人間の頭部だった。スグシヌンジャナイ氏の時と同じ、土気色をした、生首だ。


段ボールの中には、白いカードが一緒に入っていた。


「くそ、またしてもか」


ボンクラー警部補は、うんざりした声でいった。


それはトランプのカードだった。ハートの3。


殺人犯からのメッセージだろうか? そのカードはまるで、屋敷の中にいるすべての人間をあざ笑うかのように見えた。


~~~


「これは、フメイナル氏の首です。」


現場に駆けつけたメイタンテーヌが、そう断言した。


「間違いないのかね?」


「はい、前歯が一本ないですし、、、特徴的な顔ですから、覚えています。これは、昨晩私と会話し、スグシヌンジャナイ氏と話しているところを目撃された後、行方不明になっていたユクエ・フメイナル氏です」


同様にフメイナルをパーティで見かけていたシン・ハンニン神父も、悲しそうに頷いた。


「いやはや、驚いた、、、フメイナル氏が、殺人犯だと思っていた。しかし彼がこうして、殺されてしまったとなると、殺人犯は別にいることになるな。」


「我々の知らない、また別の人間がいると? その人間が、屋敷の中の人を殺しまわっているのでしょうか。」


「わからん。。。今の時点では、何とも言えない。」


ボンクラー警部補は、くやしそうに言った。


「もうたくさんだ! こんなに人が死ぬなんて! 隣の島から、捜査員はいつ来てくれるんですか!」


ミスリード氏が、突然怒鳴った。不安のあまり、感情が爆発したようだ。


「、、、まだ海が荒れている、という情報が入っている。夜になってしまうと、基本的に船は出せないから、もし今日の夕方までにフェリーが来ないようようであれば、到着は明日になるかもしれません」


「もう一晩、このままここで過ごせっていうんですか。。。」


ミスリード氏が、がっくりと肩を落として言った。昨晩からきている黒いスーツに、だいぶシワが入ってきている。その顔には、疲労の色が見て取れた。


「うむ、これは早くに犯人を捕まえてしまわないと、こちらが精神的にまいってしまいますな。」


ボンクラー警部補は、考え込みながら言った。しかし実のところ、誰が犯人なのか、さっぱり見当がつかなかった。


「メイタンテーヌさん、さすがに、このあたりで推理を入れないと、まずいんじゃないですか」


フラグミールが、メイタンテーヌのひじをつかんで、ひそひそ声でいった。


「、、、あまりにも、犯人サイドが、やりたい放題です」


「私も、同じことを考えていた。」


メイタンテーヌが、前髪を人差し指でかきあげながら、きっぱりと言った。


「犯人が誰なのか、どうやって殺害したのか。ここから名推理で、当てて見せる!」

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