可愛い彼女を作って最高の学校生活を送りたいだけだ
新作が中々進まないから息抜きで何も考えずに書いた短編です!頭空っぽで読んで下さい。
親が死んだ。多額の借金があることが判明したのは相続してから半年が過ぎた頃だった……。
億を超える借金。相続破棄はもうできない。
俺には病弱の妹がいる。手術をすれば病気が治る。
その事を近所の秀吉っていうジジイに相談したらとある場所を紹介された。
トップになれば一晩で億の金を稼ぐ事が出来る。
……ホストかと思ったら違った。
俺は地下闘技場の最年少選手となったのだ!?
おい、クソジジイふざけんじゃねえよ!!
ジジイは「ぬしは覇者になれる予感がするのじゃ。わしの老後の年金を賭け金にするから負けたら許さんのじゃ!」と俺に言いやがった。
俺は反抗しようとしたが、すでに借金はまとめられて、ジジイの手の中に債券があった……。しかも妹の手術の手配もしやがって……、俺は号泣しながらジジイの手を取った。これが熱い友情だと後から知った。
なんやかんやあって、俺は激烈な生活を送った。それは友との出会いと、男たちの楽園であり、羨望。
16歳、普通なら高校生になる年に俺は地下闘技場最強トーナメントに優勝してついに借金を返済できたのであった。
そして俺は思った。齢10にして地下闘技場の世界に入り、俺は禄に学校に通わず男臭い世界に身を投じていた。
女の子……。
俺には夢がある。借金を全て精算して、妹が元気になったら可愛い彼女を作る事だ。
元々内気な性格の俺には女の子と話す度胸がなかった。
女友達なんていない。喋りかけれるだけで、自分の事が好きだと勘違いしてしまう童貞野郎だ。
「大丈夫だ。俺は最強だ」
闘技場でテッペンとったじゃないか。なら今度はたっぷり青春をして可愛い彼女をゲットして最高の学園生活を送ってやるぜ!!
「お兄ちゃん、さっさと飯食って学校行きなさいよ!」
「お、おお、わりい。つい妄想しちまって」
「もう、学校で変な事しないでよ! お兄ちゃんが私のために頑張ってくれた事知ってるけど……、その……お兄ちゃん、超バカだから」
「安心しろ! 俺でも入れる高校だからみんな同じレベルだ。きっと沢山友達もできて彼女もできるぜ」
「……はぁ、不安しかないよ」
そして俺は妹に見送られながら学校へと向かうのであった。妹は思春期で俺と一緒に歩くのが恥ずかしいらしい。うん、可愛いな。確かに俺は馬鹿だ。最強の妹馬鹿だ。妹のためならどんな事でもする。
……もし妹に彼氏ができたら……? まずは俺を倒さないと駄目だ。闘技場の決勝戦でも使わなかった禁じ手が出てしまうかもな。
「ふぅ、それにしても娑婆の空気はうまいぜ。な、お前もそう思うだろ?」
「わふん!」
高校に通う途中に出会った野良犬。俺と目が合うと腹を見せ鳴いてきた可愛いやつだ。動物と話すのには気を使わなくて済む。
俺は今までの人生を犬に語りながら歩く。
学校に近づくにつれ学生が多くなってきた。
そう言えば俺は高校一年からやり直すんだ。
「アディオス、またな」
「わふん!!」
犬と別れてから校舎に入る。そして、俺は違和感に気がついた。俺の周りには誰も近づいて来ない。
「何故だ? あっ、もしかして闘気を抑えてなかったか。これは失敗したな」
俺は最小限まで闘気を抑える。しかし、不安だ。いつ武器が飛んでくるかわからない状態じゃないか。
少しビクビクしながら俺は教室に入った。
衝撃を受けた。
まずは匂いだ。あのむさ苦しい空間とは違う。こんな狭っ苦しい教室に男子と同じ数の女子生徒がいるではないか……。緊張して心臓がバクバクしている。こんな事初めてだ。
「あの〜、そこどいてもらえるかな? あれれ? もしかして遅れて入学した生徒の山田君?」
横を見ると小さな女子生徒が俺に話しかけてきた。
その姿を視た瞬間、俺は吹き飛んでしまった。癖でイメージの衝撃が現実となって現れる。自分によって吹き飛ばされた俺は壁を破壊してしまった。
「だ、大丈夫!? な、なにが起きたの!?」
言葉を発したい。だけどそれは叶わない。俺を見つめている一人の天使。こんなにも美しい女の子を見たことない。
大丈夫だ、君があまりにも可愛すぎてびっくりしてしまったのさ、だから安心してくれ。それと友達になってくれないか? 俺の名前は山田だ。色々あって遅れて入学したが、同級生だから気楽に接してくれ――
頭の中の言葉が表に出てこない。
絞り出した言葉は――
「お、俺と死合しないか?」
「へ? しあい? あっ、運動系の人? わたしは空手部なんだ〜、もしよかったら体験入学きてね! 先生来たよ! 早く席に着こうね!」
「う、うん」
教室に入ってきた先生と目があった。先生はため息を吐きながら俺を見たが、特に何も言われなかった。あれだけ学校に金を積んだから教室程度破壊しても大丈夫という事だろう。
俺は気を取り直して自分の席……? どこだ?
キョロキョロしていると近くの女子生徒が俺の腹をツンツンしてきた。
「!?」
「へへ、あんたやっと入学できたんだろ? 席はあたしの隣だよ。あたしは豪徳寺! これからよろしくな!」
なんと……、こんがり小麦色に焼けた肌が美しい少女であった。頭をハンマーで殴られたような痛みが襲いかかる。膝をつきそうになるのをこらえる。
「よ、よろしく……」
「んだよ、恥ずかしがんなよ。あ、やべ、先生に注意されちまうからまた後でな!」
俺はどうすればいいのだろうか? こんなにも可愛い女子と何度も出会ってしまうなんて……。俺は、今日、死ぬのか?
興奮で全身の血液が熱くなる。緊張して足が震えが止まらない。
ふと、先程の少女を確認すると、目があった。
そして手を振ってくれたのだ。
「がっ!?」
俺はそのまま気を失ったしまった。こんなにも幸福感に包まれた気絶は初めてであった。表層の意識が無くなるが、裏の意識が代わりに実況してくれた。
******
リスみたいな小さな女の子、彼女の名前は宝勝院翔子。変わった名前だが特に気にしない。闘技場では普通だ。
小麦色の彼女は豪徳寺烈子。巷でいうギャルという存在らしい。
二人は学校生活に疎い俺を気にかけてくれる。非常に心強い存在だ。多分俺は二人が好きだ。大好きだ。こんなにも愛らしい存在に出会った事がない。
「うんとね、空手部はね弱小だから部員がいなんだよ」
「そうそう、あたしも空手部なんだよ。山田も入れよ」
「いや、その……、俺はもう運動はしたくないんだ」
「そっか、残念だな〜。あっ、でも友達になろうね!」
「そうだよな、あたしたち友達いないから仲間が欲しかったんだよ」
「俺で良ければ……」
そんなこんなで俺はバラ色の青春を送っている。
しかし、男子生徒からの視線が何故か厳しい。先程、肩にぶつかってきた生徒がいた。彼はぶつかった肩を抑えてうずくまっていたが、大丈夫だっただろうか?
あれは敵意を感じた。
……この教室の男子は俗に言う不良が多い。
非常に怖い存在だ。というか、俺が闘技者になる前にカツアゲされた事もある。
豪徳寺さんと宝勝院さんが仲良くお手洗いに向かったとき、クラスのリーダー格に男が近寄ってきた。
――戦闘能力31か。ゴミだな。
俺は自分で自分の顔を殴った。戦闘能力で人を判断してはいけない。ここはそんな世界ではないのだ。
リーダー格の男は俺の行動にびっくりしたらしく戸惑っていた。
「お、おい、お前頭大丈夫か? ……まあいいや、お前気に食わねえから放課後裏校舎へ来いや」
感じる敵意と悪意。俺が慣れしたしんだものだ。
周りの男子生徒たちはニヤニヤと笑っている。ああ、懐かしな。俺にとって日常の空気感だ。
しかし、俺はこんな世界には戻りたくない。女子と青春がしたいんだ。俺の邪魔をするな。
「な、なんだ。あ、足が動かねえよ……。お、おい、地震でも起きてんのか!?」
……危ない、闘気が漏れてしまった。闘気を抑える。
「な、なんだったんだ? ……まあいいや、お前絶対来いよ」
「ああ、わかった」
適当に殴られればいいか。拳をまじ合わせたら友になれる。俺はそれを知っている。
帰りのHR、疲れた顔の先生がやってきた。
「て、転校生を紹介する。……明日から通うから今日は顔見せだけだ」
先生の横にいるのは……どこかで見たことのある顔だった。
闘技場で見たことがある。しかしあいつは男であり、闘技者だ。こんな表の世界に出てくるはずもない。
頭にはてなマークが飛び交う。
「わ、私の名は金閣寺京だ。そ、その、明日からよろしく頼む」
男子生徒たちの歓声が聞こえる。金閣寺と名乗った転校生は確かに美しかった。そう、闘技者のあいつも男としては美しかった……。しかし、確実に男だったぞ?
金閣寺と視線が絡み合う。
「……やっと会えた。勝手に引退しやがって。あの戦いの続き、今日この場で!! わ、わたしが勝ったら……、あ、あんたは私の物よ!」
金閣寺の闘気が膨れ上がる。違う、俺はこんな展開を望んているわけじゃない!
その時、窓の方から強烈な闘気を感じた。
窓の外からひょっこりと顔を出す筋骨隆々な男。あれは地上最強と呼ばれている元闘技者じゃないか!!
「おう、俺、留年したから今日からこのクラスに通うぜ。ふん、よろしくな。二代目最強君。……死合しようぜ」
ちょっ、あんた俺と同い年で同じ学校だったのかよ!!! 勘弁してくれ!!
可愛い女子と青春したいだけなんだ!




