何時でも助けてくれるのよね(ランビック王女は救いを求める)
「勇者は・・・私の勇者は・・・。」
私は気が付くと、必死に匍匐前進していた。体中が痛い、傷だらけのような気がする。血が流れているのを感じた。背中に何かが突き刺さっているということが頭に浮かんだ。毒がはいった短剣だと分かった。どうしてかはわからないが、それがわかっていた。他にも怪我をしている。私は誰?ああ、私は魔王、女魔王だ。魔王がどうして勇者を探すのか?目の前に誰かが倒れている。彼の胸には、何かが立っている。それが聖槍だということがわかった。倒れているのが勇者だとわかった。その傍らに立っているのは聖女?その聖女がその聖槍を握って、醜く、そう言えるくらいな顔で笑っていた。そもそも聖女が、何故、勇者を殺したのか?
「勇者は死んだのよ。全てあんたのせいよ。魔王となんか愛し合って・・・馬鹿じゃない?そんなことさえしなければ、こんなことにならなかったのにね。」
そんなことで勇者を殺したのか?
「早く、その女を殺しちゃいなよ。次期魔王様、新魔王様?」
私は、振り返ることなく後ろに立っている者が誰だかわかった。私の従兄であり、副魔王として信頼していた奴だ。
「しぶとくてな。なかなか手間をかけさせられたよ。そっちは簡単に行ったようだな。」
「まあね・・・とも言えないわね。かなり手こずったわ。でも、私まで・・・とは思っていなかったようよ。馬鹿な男。」
そうだ、私は勇者と激しく戦い、その中で互いに、互いを理解しあった私達は、人間と魔族の共存を目指すようになり、お互いの陣営を説得して、何とか実現一歩手前までいった、いっているはずだった。それが、双方から裏切られたのだ、私と勇者は。
「お前達、これからどうするつもりなのだ?」
私は問うた。共通の敵である、和平を実現しようとした私と勇者を殺してしまえば、こいつらは敵どうしになるだけだ。この場で戦うのか?この後、何のメリットがあるのか?
「勇者が魔王と差し違いで倒れたと、涙ながらで言えば、こいつらは褒美にありつけるというわけさ。それで安心した人間達は、魔界に、魔族の世界に侵攻してくることもないだろう。」
副魔王が解説した。
「そして、こいつは新しい魔王に。とはいっても、そう簡単に魔界はまとめられないでしょうし、魔王軍の精鋭の多くが死んだわ。こいつが、人間や亜人の国々に侵攻するの頃には、新しい勇者様が立ち上がっているわよ。そのための準備も、提言しておくわ、ちゃんと。そうすれば、私は先見の明のある大聖女様ということになるでしょう?」
お互い、時間を考えての協定と言うところかしら。 でも、まだ私にはわからないことがあった。
「お前は、勇者と相思相愛ではなかったのか?」
勇者は彼女が婚約者だと言った。私は、彼女に嫉妬したが、あくまで許嫁を守ろうとする彼の態度には共感したし、ますます彼が好きになった、彼が、あ、あくまでも友としては、だ。
「な~に、言ってんのよ?私が愛しているのは賢者様よ、こいつが追放した。あの人は凄いスキルを持っていたのよ。自分の地位が奪われることを恐れたこいつが・・・。私は彼と一緒に・・・。」
彼女の首が中に飛んでいた。首からふきだす血に汚れながら立っていたのは、わたしの勇者だった。
「あいつが屑で詐欺師だったんだよな。それに、少なくとも4人も愛人がいるそうだし・・・。」
その姿に唖然としていた副魔王の手を逃れ、その表情が変わる前に、首を体から切り離してやったわ。
2つの死体が、ドンと倒れた。唖然とするその他は、瞬殺してやったわ。
「勇者、遅いではないか?まあ、助けてもらったわけだし・・・ありがとう、礼を言う。しかし、大丈夫か?」
「ギリギリ危ない所だったよ。」
勇者は、私を抱きしめて口付けをしてくれた。あれ?この勇者は・・・?とにかく私は舌を差し入れて、抱きしめ返した。お互いに主導権を取ろうと、マウントを取ろうと争うようにして、口付けを繰り返していた。私は本当はこうしたかった。私は、女として彼を愛していたのだと分かった。彼も、私のことを愛していたということが分かった、抱いてくれる体温でわかった。私達は相思相愛だと分かった、それが心から嬉しかった。そうこうしているうちに目の前が歪んできて、全てが消えていったわ。
そして私は、もといた場所に立っていて、自分がランビックだということを、ムギの妻であることを思いだしたわ。カンティヨンお姉様も、マイ義姉様も、夢から覚めてぼうっとしている様子だった。ほんの少し前まで私も同様だったのね、多分。2人はどういうものを見ていたのかしら。私と似たようなものを見ていたのかしら?そもそも私、私達は幻想を見ていたのだろうか?それとも、別の世界かなんかにいたのだろうか?




