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異世界スローライフは難しい  作者: 安藤昌益


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逃がした・・・わざとか・・・(姉は語る)

「きゃあー!」

 奇妙な武器を使う女は、風に切り刻まれ、最後は剣を刺し貫かれて絶命した。馬鹿、捕虜にしなさいよ。と、私は全員殺していないわよね・・・、あれ、誰も・・どれも動かない・・・手足が体から離れたところに飛んでいたりして・・・。でも・・・、でも、からくり人形だし・・・まあ、いいか。

 スパークリングは、ダイヤを入れたカバンを抱きしめて、まだ余裕の顔で逃げずにいたわ。そして、足音が近づいてきた方向、出入り口の方に視線を向けていたわ。それが失望に変わったのは、入ってきたのがムギたちだとわかって顔色が変わったわ、流石に。すぐに逃げ腰になって、壁まで走ったわ。あ、こういう時に定番の隠し通路の扉が開いた。残る1人、女が自信満々、私達を止めるように立ちふさがったわ。はい、両王女殿下が瞬殺。でも、その時間でスパークリングは扉の中に飛び込めた。ただ、

「うわ!」

と苦痛の叫びをあげてダイヤモンド入りのカバンを落としたわ。扉は閉じ、カバンは残ったわ。かけてきた3人、国軍の士官の男女。カバンを確認。一人がそれを抱え、2人はスパークリングを追おうとドアの開閉の仕掛けを探い。大きな音とともに穴があいた。二人はその穴に入って彼を追った。ムギね。3人は名誉挽回で夢中になって、ムギのやったことに気が付かないでしょうね。これで、国軍はダイヤを奪還、無事守り終えて王都に、の任を一応完遂できたし、敵の首領を追いつめたということも報告できる。私達が大いに協力したという報告もしなければならないけれどね、いえ、してもらわなければならないわよね。


 ダイヤの奪還を報告させる伝令を送り、それを受けて応援が、ダイヤの輸送を万全にするための、来るまでの間、ダイヤを守りつつ、それは国軍、警察、ダイヤ輸送隊の残兵達にまかせて、私達は内部の捜索、掃討も含めて基地内部をまわったわ。実際、あいつは至る所に戦闘員を置き去りにして逃げちゃったから、そういう連中に遭遇して、戦闘を交えなければならなかった。大抵は末端の戦闘員で、改造した連中はあまりいなかった、戦力が格段にあって、費用も手間も時間もかけて作り上げた連中は置き去りにしたくなかったのよね。それでも、

「こんなものまで、用意していたとは。」

とカンティヨン王女が絶句したわ。


 一隻の巨大な飛行船だった。もう一隻、建造中、未完成のものがあった。飛行船は、数が多いとはいえないものの、さほど珍しいものではない。神樹、聖樹から作る紙を外部にはり、鯨や聖魚からつくる骨格により支えた船体と水素とある種の神樹の樹液により生成された神気をタンクを内部に抱えて空中に浮かび、数台の発動機によるプロペラで進む、そういう飛行船は何機かある、我が国にも。しかし、目の前のは我が国最大のそれよりはるかに大きいだけでなく、外皮は全く違っていた。海外では牛等の家畜や魔獣などの胃袋から作られているが多い。それはかなりの量が必要である。しかし、それとも違う。

「ドラゴンの皮?」

 ランビック王女は、カンティヨン王女とともにそれを見た事とがある。そう聞いている。見た目だけからも、こんな堅いものが空に浮かぶのだろうか、というものだった。魔力すら感じる。ドラゴンの皮を使った飛行船は確かに保有する国はあるし、これに近い大きさのものも、ないことはない。しかし、小さなものも含めても、10隻くらいしかないはずだ、世界にあるのは。最大の大きさのものを、2機とは…。それにこれだけではないだろう、簡単に捨てていったのだから。しかも、ドラゴンの皮をこんなにふんだんに使っているとは…しかも分厚く…。ドラゴンはその翼で空中に浮かぶのではない。体そのものの、主に皮の部分にある魔力により浮揚し、進むのである。翼は推進力の一部でしかない。

 だから、ドラゴンの皮を使う飛行船は硬く、早い。まあ、神・聖・魔樹製のそれを完全に圧倒できるほどではないにしても。

「そもそも、どこからドラゴンの皮とかを調達したのかしら?これだけ巨大なものを作れるだけの?ドラゴンの生息する地は、数は限られているし、狩るわけにはいかないし・・・密かに提供して国が?密漁?でも、これだけの量を?錬金術で作り出したのかしら、ホモンクルスか何か作るように?それともドラゴンが協力して・・・?仲間を殺して、その死体を・・・争いがあるとは聞いているけど・・・まさかないわよね?」

 ランビック王女は、本当に口にでるタイプなのよね。本人は損していると思っているけど。カンティヨン王女は口に出さないで考えるから、ランビック王女の方が分かっている、考えていると思われがちでね結構得しているのよね。軽薄とされる時も多いけどね、決して軽薄ではないんだけど。

「ランビック様の言ったことが全てあり得るかもしれませんね、カンティヨン様。」

 ランビック王女の言葉にいちいちうなずいて、カンティヨン王女の方を見て、振る、判断を求める・・・ムギ、あんたって悪党よね。

「それはどういう意味?ドラゴンの内部抗争で敗れたものがドラゴンといくつかの国の協力で送られて、それを人体実験ならぬ、ドラゴン体実験に利用して、そこからドラゴンの皮を人工的に製造することができるようになったとか?」

 あ、カンティヨン王女様、頑張ったわね。そう言う事になるか?

「でも、人工的に作るって・・・どうするのかしら?」

 負けずにランビック王女も。う~ん、私は思いつかない。悔しい・・・、あ、そうだ。

「まさか、おぞましい方法とか考えていない?ムギ?」

 え、当たった。その表情は?

「かなり・・・そういうのを知っているけど・・・まさかね・・・ただ、培養とかクローンはないし・・・。」

 なんか訳の分からないことを言ってない。私達は顔を見合わせた。そのおぞましい方法から逃れることを考えたわ、現実逃避だけど。二人思いついたようだから、譲ってあげよう、多分同じだから。

「スパークリングの行方を探さないと・・・。ん?ムギ?」

「ムギ・・・その顔・・・なにかやったでしょ。」

「流石にお二人にはかないませんね。あの時、居場所を発信するというか、の魔法をかけておきました。」

 ああねやっぱりね・・・え、でも、どうやってねそんなのあるの?まあ、私の弟だから・・・とすぐ納得しかけるようになった自分が怖いわ。


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