突然の国際的孤立(第二王女が語る)
私達の騎士団が誕生した日は、僅か三十数人、私達姉妹とマイ・ムギ姉弟、そしてリカ―を除いて、私達の護衛達も含めてだが、勢ぞろいして整列しているのを見ると、ムギがサンパチと呼ぶ銃を背負っている、もちろん彼が作ったものだ。あ、腰につけたグントウとかいう剣も彼の手によるものだ。その三分の一は騎馬、残りの半分は徒歩、あとはこれまたムギのお手製の神樹、聖樹、それと本当はもともとは魔樹である聖樹から取った樹油を燃料にした電動機による二輪車に乗っている。
まあ、これで全員が突進していく光景はないだろうけど、なにか心が弾むのよね。もっと、地道な活動の連続になることはわかっているよ。いや、あるかもね、あいつらの本部に総攻撃とか・・・あとムギが、もう一つ、とつぶやいた、わからないけど、彼はそれを言おうとしなかったけど・・・。
とりあえずは、訓練と情報収集と渡した姉妹の護衛ということで、私達の騎士団は日々を過ごすことになったわ。それから、準備、資材の事前の調達など姉上が中心に、私達もかなり手伝ったけど、発足してみると足りないものがいたるところにあって、その調達、ムギがかなり自作してくれたけど、その材料も含めた調達もかなりの分量あったわ、仕事としては。
訓練は…マイ先輩…マイ義姉さん、一寸厳し過ぎるような…姉上すら、そう思うくらいで…というのが変わった日常だったけど、幸いなことにというべきか、不幸なことにというべきか、それが崩れるのは、さほど長くはなかったわ。
「何で、シールド王国の大使が、バーボン共和国軍艦の爆沈事件でわが国との国交断行を宣言するのよ?」
私達4人、いえ、余計な一人がいるけど、立ち寄ったクラブで、彼は紅茶を、私達はコーヒーをすすりながら、私と姉上はたっぷりミルクを入れて、マイ先輩はたっぷりミルクと砂糖を入れて、あ、ムギは紅茶ね、新聞を読んでいて、つい私は声をあげてしまった。
シールド王国の大使が、我が国を厳しく糾弾し、国交を断絶すると新聞に声明文を送りつけたのである。その理由が、シールド王国には関係ない、バーボン共和国の大型装甲フリーゲートが、親善訪問中のわが国のナダ港で爆沈した事件をわが国の陰謀と決めつけ、平和に対する重大な挑戦、犯罪と糾弾、国交を断絶するというのである。もちろん大使に、そんなに権限はない。でも、誰もが、新聞を読んだ者は、飲みかけのコーヒーを噴き出しはしなかったけど、吹き出しかけたわ。
バーボン共和国との間では、原因究明での協力が決まり、爆発直後のリコル王国側の救助、その後の負傷者への対応等で感謝の声明もあり、リコル王国の犯行とは考えていなかった、少なくとも、ことを荒立てることは一切していなかった。後でわかったことだったが、シードル王国も、自国の駐リコル王国大使の声明は寝耳に水で大混乱していたらしい。そして、とうの大使が、他殺体で発見された、その日の晩に。本国では、大騒ぎにはなったが、リコル王国側非難、犯人説はさほど大きくならなかった。でも、他の国でリコル王国人による殺人だとして、国交断絶の通知を送りつけてきた。その手順はおかしいが、書類はその国の正式な文書だった。しかも、その国も、そのことではまた寝耳に水の状態だったという。
そして、事態はあれよあれよという間に進行していったのだった。
「そのスパーク・リングという男、何者なの?」
「それが、情報をくれなくて・・・。」
「元エール王国の情報部員、その伝手で各国を歩き回っている国際人、ということですよ。」
外務省に情報を収集にいかせた騎士団員の報告に、ムギが補足するように告げた。姉上と私は、父上に聴きに行ったけど、やんわりと
「国政に関する事は外部には教えられない。」
と断固とした調子で言われたわ。いくつか当たってみたけど、お遊びはほどほどに、なんて調子だったわ。心配して、見守っていればいい、面倒ごとを起こさないでくれ、とか。全く頭にきちゃうわ。私はともかく、姉上が怒り心頭、暴走しかねないわよ。その気持ちはよくわかるわ、というところ。
「一部の小国を除くと、ほとんどの国の代表と言っても、正式な国家決定でも、代表じゃないしね。」
とマイ先輩。
リングという男が提唱して、国際会議が開かれて、全世界はリコル王国と断交、全世界の代表団がリコル王国に調査のため送られることが決議され、リングがまずは送り込まれるということになったのである。国際会議といっても、ほとんどは、国の代表と名乗る団体で、その国の正式なものではない。ただ、その動きに引きずられるように、わが国への貿易制限、制裁措置がぼつぼつとでている。社会、経済の混乱は起きている。
「あれ、どこかできいたような?」
「ムギの言った話?」
まさか、彼、これも予知していた?どういう頭よ?
「たまたまの偶然ですよ。でも、仮にそうだとしたら…。」
彼の言いだしたのは、さらに驚くことだったが、
「それなら、私達騎士団の出番ができるわ!」
姉上が狂喜したわ。面白いわ、やってやりましょう、何となく辻褄と理屈はあってるようだし。
我が国は、どちらかというと、我慢を強いられても自給自足が信条、だから、国際的孤立だ、貿易制限などは関係ない、ということは全くない。贅沢品といえるようなものはもちろん、原材料などの輸入も製品輸出も多いから、目に見える影響はすぐに始まっていた。
そんな中、話題の男と私達は会うことになったわ。王家を表敬訪問したのよね。
まあ、ダンディーで、素敵な、頼りになるおじ様といったところかしら。長身で、金髪、お髭の似合う、スマートで逞しい中年の男性で、立ち居振る舞いも、完璧だったわ。
「リコル王国の自然は、非情に美しい。その国に住んでいる人間の中には、いい人達もいると思います。」
ふん、悪い人間はいっぱいいると言いたいの?穏やかに、微笑む彼を疑わしいと、私は彼を小さくにらみつけてやったわ。ん?私達を観る目?後ろに護衛のように立つマイとムギに向ける目?どこかで見たような気がするんだけど?とにかく、信用できない男のように思えたわ。
でも、どう見張るか、どこでならボロを出させるか?ところで、国内から真っ先に接近しているのも、いるわね。
ドオライ大公である。姉上の元婚約者だ。
2人の会談は大々的に報じられ、互いの理解を深めた毎が強調された。大きな漠然とした不安を抱える国民の間では、大公への期待と人気者が赤丸急上昇。
「大公からの強い押しで…でも、内の編集長が簡単に受けてしまって…。」
とコーヒーハウスで、顔馴染みの新聞記者が愚痴というか、弁解を言った。
「どこから動くか?動くところに尻尾がでるわね。」
「どこを監視するか?全てを監視できないわ。」
「彼に関係する者は全て・・・と思えますしね。」
私達3人の会話を黙ってムギは聞いていた。何か考えがあるのかしら?釘を刺しておかないとね。
「自分一人でことを収めようなんて考えないでよ!」
と私が言うと、すかさず、
「あなたは、私…達の騎士団の一員なんだから。分かっているわね。」
と姉上が続けた。もう、姉上ったら、負けず嫌いなんだから。
あれ?マイさん、何か言いたいけど、思いつかないという顔してません?




