私達の騎士団(姉は語る)
誰が言ったのよ、漏らしたのよ、いや、書かせたのよ?カンティヨン王女、まさかあなたではないでしょうね?まあ、そんなことは絶対的ないわね。彼女は、そういう点が、政治家として必要な、いえ、名君として必要な点が欠けているもの。議会も、官僚制度も、法と制度の支配がしっかりしている時代だから、かえってそんなもの、あなたには必要ないものね。だから、私はあなたがライバルとして憎たらしいし、羨ましいし、大好きなんだけどね。恥ずかしいから、ぜったい言わないけど。
私が語った、我が家の先祖の魔王と勇者の物語が海外の新聞まで載ってしまったのだ。丸く収めた内容にはなっていたけど、私は顔から火が出るくらい恥ずかしかったわ。両親と弟は、かえって喜んでいたけど、どういう感覚よ!でも、その記事が好評で、我が国が魔族と人間、さらに亜人まで完全に融合、共存した国であること、最近の国際テロリスト集団に対峙する立場、カンティヨン王女達の姿が、喧伝されることになったわ。
騎士団作りだけでなく、いえ、そのためにも彼女は政務、どちらかというと象徴的、形式的なことが多かったけれど、精力的にこなしていたわ。ついでに、私も同行させられて、彼女の秘書官、副官修行みたいになっていたわ。新造軍艦、フソオ、コンゴオ、ヒエーの就役式にも参列させられたわ。木造の船体に、オリハリコン等の特殊金属の屑を各種新樹・聖樹・魔樹の樹液に混合して精製したものを、漆のように分厚く塗りこんでいる。船体の主要部も新樹などの枝などを粉砕、再固形化したもので組み立てられていた。各砲も、より長砲身のものを装備していた。やや小型だが、列強の主力艦に互角以上に戦えるものだという。火薬も、
魔樹や聖樹、さらには瘴気や神気は入った特別な硫黄を精製したものを混合して、作ったものであり、煙は少なく、威力は増している。砲弾も、また同様である。他の列強のように、鉄を存分に使ったり、神樹・聖樹をふんだんに使用したり、オリハルコンなどを惜しげもなく使えず、手間暇かけて作ったもので、となるが戦力となればいいのである。
戦争はない方がいいけれど、魔族と人間、その他が、その区別をほとんど失っても、戦争の火種はなくなっていない。では、武器を捨ててしまえば…それができれば永久平和を実現できるかもしれないが、誰が先にそれを実行、実践するか、さらに、誰かが実行、実践しても追随するものがいるか?自分は平和愛好主義者であると信じ、武装放棄を実行した相手が、自分と敵対している相手ならば、それは過去に自分に敵対した罰に過ぎない、自分達には関係ない、いや、悪の心を持った相手に、自分達が一方的な軍事力を持つことは正義であると考えるだろう。
幸い四面を海に囲まれたわが国だが、領土紛争の火種はあり、固有の領土である島をいくつもの不法占拠されていて、国際的勢力バランスからどうしようもできないでいる。それが、聖樹濫伐してどうしようもなくなって、わが国が育成した光の神樹、巨大な数本からえる莫大な恩恵から国を維持できているのにもかかわらず、わが国のある島を不当占拠しているのである。その国の王女とも、カンティヨン王女は自然な調子で話をするのだから、しかも後々問題にならないようにして、大したものだとあらためて感じたわ。
他国が勇者と魔王がともに手を携えてという話がない場合が多いことを、あらためて感じたわ。う~ん、過激派が生きのびる手段を、感じたわ、あらためて。
それに、まあ、交渉の場ではないから、はっきりと言われることはなかったけど、各国の王族、有力者から、自国の農林水産物、鉱工業製品の輸入拡大などを求めるような、自慢話を聞かされたわ。世界には、肥沃な土壌が広がっていたり、オリハルコンなどの魔法鉱石から一般鉱石の大鉱山があったり、巨大な神樹、聖樹、どこまでも続く聖樹の森、聖水の湖などを領土内に持つ国がいくつもある。我が国は、ほとんど全てがある。しかし、農地も神樹も聖樹も、魔法金属も全てが、世話と手間と技術をかけたものであり、大切に、再生、再利用、それもさらに手間を加えるわけだが、により得られるものである。だから、高い、質はそれ以上に高いが。関税などにより守ろれなければならない。守らないと、神樹、聖樹の森も維持できないのである。そのような対立に晒されているというわけなのだ。
我が国には無縁だが、神樹、聖樹などを巡る対立もある。たびたび武力による争いが発生している。
直接私達が関わるわけではないが、その前段階のことにカンティヨン王女は公務として励んでいた。私は、その巻き添えを食らっていたわけだが、いつの間にか、彼女の副官というか、そのような面倒ごとを押し付けられるようになってきていた。
その一方で、カンティヨン王女とランビック王女の騎士団創設の準備が整っていった。あくまで一つの騎士団である。ランビック王女、こういうことに拘らなくなっていた。ただ、学業があるため、彼女と弟の助力は限られていた。その分、ゼロからの出発で、私とカンティヨン王女は慣れない手続きやら作業で四苦八苦していた。私は、弟のムギを休学なり、退学させて手伝わせようかと真剣に考えていた。
その時だった。
「来年から、ランビックとムギにも手伝ってもらえるわ。」
「二人は、まだ5年生ですよ、来年はまだ。」
「学業、実績、功績があれば、4年生で卒業できる制度があったのよ!二人とも、十分な資格があるわ。これは確認済!」
「でも、二人はどう言っています?」
「はい、という選択肢しかありません!騎士団のこと、マイと私だけでは大変でしょう?国のためにも彼らに早く加わってもらう必要があるのよ、わかるでしょう?」
「まあ、いいですけど。」
確かに、ムギに手伝わせるのは賛成だし、一緒にいられる時間が増えるのは・・・、ちょっと待って、今、ボソッと、
「これでムギといつも一緒だわ。」
と言ったわよね。
まさか、一番の目的はムギと一緒にいたいからじゃないでしょうね!そりゃ、ランビック王女だけがムギといつも一緒なのは確かに・・・いえ私は違うけど、あなた、公私混同じゃないの?もう、恋愛脳で馬鹿になっていない?
まあ、ムギがいた方がいいけど・・・ち、違うわよ~、私は・・・あくまで、騎士団作りに助かるむということよね、そうよね。
あ~あ、そんなに、してやったり、たのしみだわ~なんて顔しちゃって…。




