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異世界スローライフは難しい  作者: 安藤昌益


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勇者と魔王(姉は語る)

 両王女達のあの様なことが起きた直後の痴態には呆れたわ。もう、何も言わないことにしたわ。べ、別にあの後の弟のお仕置きなんて関係ないわ、絶対ありません!ただ、優しいお姉さんになる約束を守っているだけ。た、大したことはなかったのよ、またしてほしい…とか、ちがーう、絶対そんなことは思ってないわよ!


 あの様な事態となって、ランビック王女の初優勝ということはなくなり、大会自体が中止ということになってしまった。このまま当分中止という話も出ている。

 急ぎ、テロリスト対策の国際会議が開催されたけど、今後対策を考えよう、近いうちに正式な会議を招集しようということが決まっただけだった。

 私とカンティヨン王女は卒業。彼女達の騎士団の設立準備、内々認められることになったのだ、少数でのだが、で忙しくなったが、その前に再洗礼式が大きなイベントとして待っていた。

 王都の総教会では、第一王女の再洗礼式だというので、ハッスルするのは分かるのだけど、私の地元の教会では、私が王都の総教会で再洗礼式を挙げるのに苦情を言ってきた。私はどちらでもいいのだけど、シヨウチユウ侯爵家の次期当主のお披露目として王都の総教会での再洗礼は必要だ、という両親の意向を無視できなかった。

 その代わり、第二王女とムギの再洗礼式を行うということで納得してくれた。夏休みに、ということだったけど。今度は、総教会が文句を多少言ったらしいけど。

 盛大な再洗礼式になったわ。カンティヨン王女の後に私も続いたけど、その後ろに続く人、人、人の列。彼女と同じ日に再洗礼を受けたいと、上級貴族から庶民までこの日での申し込みとなって、皆、それぞれの財産に応じて、寄付を奮発したらしい。教会は、庶民の負担が大きくしたくないから、その代わり大貴族や大金持ちの市民はかなり多額の金額を出さなければならなかったわ。ちなみに、我が家はその必要がなかったわ。その上、私が次期当主であるというのお披露目としても、大々的にできたということで、両親は大喜び。まあ、そういうがめついところも、尊敬?しているんだけど。まあ、私はおまけだから。


 ランビック王女の婚約破棄問題は、相手の方からこれ幸いと、要請が来た形だから、そのままうやむやのうちに解決してしまった。それは、婚約者と幼馴染みの恋人はであって、婚約者の大公家の方は多少ごねたけど。でも、当人がこれでは…だったの。ちなみに、この2人、カンティヨン王女の騎士団に入隊することになったわ。

 これに対して、カンティヨン王女の婚約者はごねたわ。でも、あの失態?と彼が順当な後継者ではなく、元々の婚約者ではなかった、そちらも…ということもあり、結局、諦めて何とかなったわ。そのことを告げに来たのが、本来なら後継者になった2人とその妻達だったわ。

 前ドラオイ大公は、その兄の急死によって、その地位についたそうだ。その兄の子がまだ幼かったからである。そのためもあり、兄の忘れ形見を自分の跡を継がせることにしていたの。義理堅い人だった…まあ、色々周囲の関係もあったらしいけど、やはり当人が善人、善人過ぎる結果だと思うわ。でも、その結果、自分の子供達に悪影響があったの。特に、次男、現ドラオイ大公などはかなり乱れたそうだわ。それを見て一番苦しんだのが、前大公の兄の遺児。カンティヨン王女との婚約が決まってからしばらくして、幼馴染みのオーガ族のイチバ伯爵家令嬢と電撃結婚して、自ら大公後継者の地位を放棄したの。すったもんだした結果、シボリ子爵となったわけ。それで次期当主となった、前大公の長男は、そのことを喜んだら、幼馴染みのやはりオーガの伯爵家令嬢に、

「他人を恨んでいたの?」

との指摘に、ノイローゼ状態に。責任を感じた彼女が必死に慰める中、そのまま愛情が深まって…結婚になっちゃったわけ。それが、エイビス子爵。カンティヨン王女は、ある意味二度婚約破棄をされたわけ。彼女は、まったく知らないうちにだけど。

 現ドラオイ大公とは異なり、人の良さそうな両子爵は、その妻達と仲睦まじい感じが、オーラが、感じられた。子爵としては、小さすぎる領地、少なすぎる財産、苦労しているとも言われているが、

「そういうこともあり楽しいですよ…、それに気が楽になって…。」

「そうですね。毎日毎日が、息苦しくなくて…何か可能性が…。」

「とにかく、彼女と2人の生活は楽しいですよ。」

と妻達の手を握っていた。一応、オーガの血筋の2人の妻達は、真っ赤になって下を向いていた。ドラオイ大公領は、オーガの血筋を言う貴族が多かったから、幼馴染みがその女性となったのは自然だった。

 大柄とは言えないが、背は女性としては高い方であり、スマートだが細くはないし、胸も尻も大きい。頼りになる感じの…まあ、金髪の美人達である、2人の妻達は。2人も背がある方でか弱いというタイプではないが。それが、彼女達が可愛く見えるのは、愛されているせいなのだろう。オーガの血筋と言っても、私達の魔族の血筋と同様に、特別、その血があるのかどうかわからないし、怪しいものなのだが。

「王女殿下も、お噂の筆頭侯爵家のご令息と愛されあっておられるのでしょう?」

「お二人で…これは失礼いたしました。」

「いいえ、隠してはいませんから…。不道徳と言えるかもしれませんが、愛し合ってしまっては…。」

 あ~、真っ赤に鳴っちゃって~。こんな乙女だなんて、3年前には思ってはいなかったわよ!オーガ(一応)の女達は、姉のような、先輩のような慈愛のこもった目を向けたわ。

と言うわけで、カンティヨン王女殿下の婚約破棄の件は、和気あいあいの内に終わった。


 その後、私はショウコウ帝国パイ王女とカンティヨン王女との前で、我が家の恥ずかしい、私には思えて仕方がない、先祖の魔王と勇者の話をさせられたわ。

 ショウコウ帝国は、巨大な神樹を国内各地に擁して、その恩恵を受けて、大国として君臨している。だから、我が国の神樹、聖樹の貧弱さや利用の仕方、手間をかけての、範囲を馬鹿にしたがるのよね。帝都の中心は、その神樹の一つが産する光の実で夜も明るく照らされているそうだわ、何年も交換することなく。でも、その数多くの巨大な神樹をめぐる戦いはずっと過去から続けられていて、それらの神樹の肥料は人、亜人や魔族の血じゃないかと陰口をたたかれているわ。そして、この皇帝一族の血筋には、勇者も魔王も入っていないの、それが引け目となっているのか、なんだなんだと言いつのるらしいわ。

 リコル王家は、世祖は天使の子孫で、魔王も勇者もその後、その血が入ってきているわ。そのことは、我が国だけでない歴史書にも記されているわ。

 だけど、何故か私のショウチュウ侯爵家の魔王と勇者の話に振られちゃったの。

「まあ、色々な勇者と魔王が出てきますが、多分辺境の、小さな世界の話でしょうし、他の勇者と魔王の話しほどには…、」

 ああ、言わなければいけない?嫌だわ。

「まずは、問答した女魔王と勇者の話です。」

「戦うのではなく、知恵比べですの?それは興味深いですわ。」

 あまり興味を持たないでよ!カンティヨン王女殿下、その我関せずという顔は一体なによ!分かりましたとも、言って差し上げるわよ、我が家のご先祖様達の話を。

 

 女魔王ハッカ率いる魔族軍と勇者のイサンが先頭に立つ人間・亜人の軍が対峙していたのですが、双方から魔王と勇者との一騎打ちで全てを決しようという申し入れがあったのが、1700年ほど前、トブロークの戦いにおいてだった。

「勇者よ。戦う前に、提案があるのだが。」

 全軍見守る前で、進み出た魔王ハッカと勇者イサンがはっきりと相手の顔が見える所まで進みでて、立ち止まった時、魔王が突然呼びかけた。

「奇遇だな。私も、提案がある。」

 勇者が答えた。2人は、大きく深呼吸してから、

「お前とともに、この世界の全てについての知識を語り合いたい。」

 2人の声は、立会人としてそれぞれ後ろに立つ、それぞれ5人、勇者パーティーと魔王軍幹部達の持つ魔法石により、全軍に伝わったので、誰もが唖然としてしまった。

「勇者は、稀に見る好学の士と聞いておるから、教えを受けたいと思っていたのだ。」

「魔王は、聡明で、多くの知識をもっていると聞いている。今回、それを伝授してもらう、よい機会だと思ったのだ。」

 弁解するように言った2人は、更に近付き、その場に座り、話を始めた。

「所詮、勇者は脳筋。魔族、人間、賢者の一族の長老、知者と自他共に任じている者達でも、魔王様との問答は1日ももたなかったわ!」

とあざ笑おとする魔族の最後の四天王に、

「勇者は、頭の方も勇者なのです。今の言葉、そのまま返してあげますわ!」

と勇者パーティーの聖女が反論した。

 2人の邪魔をするわけにはいかないので、小声での応酬であったが。

「流石に知恵も底知れぬと言われた魔王だ。ところで、前々から疑問に思っていたことなのだが、魔王の考えを聞きたいのだが。」

「ふふ…。おだててもムダだぞ。いいだろう、聞いてやろう。」

「そういう考えもあるか。流石に魔王だな。」

「いや、そのようなことに気が付くとは…流石に知恵の勇者だ。思いもよらないことだったぞ。」

 そんな調子で延々と、一週間続いた。

“あ~、これからの部分は話したくないのー!”

「まだまだ語り尽きないが、そうこうゆっくりしているわけには行かぬな。」

「全然同意だよ。一対一での結着をつけることに。では、始めるか?」

「おう。始めよう。」

「では、皆、加勢はなしだぞ。野暮なことなしだ。」

 2人は立ち上がった。また、突然の展開で2人以外は反応が随分遅れた。既に、日が沈んでいたせいもある。そして、皆がようやく魔王と勇者の一騎打ちが始まると認識し、2人を注視した時、2人は、

「やはり魔族臭いか?」

「そんなのは、臭わない。汗の臭いくらいだ。私はどうだ?」

「人間臭などないな。汗の臭いだな。汗臭い女は嫌か?」

「魔王様の汗の臭いは、却って快い。」

 2人は抱き締め合って、互の臭いを嗅ぎまくった後、唇を重ねた。

「はい?」

「あ…?」

 誰もが、口をポカーンとあけ、言葉が出ず、呆然としている中、2人は全裸になり、上に下に組んずほぐれつの営み、戦いを始めていたのだ。喘ぎ声、体をぶつけ合う音…それが丸3日以上続いた。

「さ、流石に魔王さま…。」

「勇者だもんな、やっぱり…。」

と言って頷きあうしか、できるものはいなかった。そして、ぐったりとなった2人。イサンは、ハッカを上にして、下から優しく抱き締め、ハッカは幸せそうに彼の胸に頭を置いた。

 その2人に、これからのことを尋ねる馬鹿馬鹿しい役割を押し付けられ、聖女、賢者、剣聖、そして、王子、そして、先代魔王のもと宰相、元大将軍、副魔王の1人、魔神官達がやって来て、2人の汗と他の体液で臭い、蒸し暑くさえなっているところにやって来た一団は、

「え~。」

「どういうことに…?」

「どちらが勝ったので?」

と馬鹿らしい質問をしなければならなかった。

「我が負けた。勇者に腰が立たなくされてしまった。」

「魔王に、このように押さえつけらてしまった。私の負けだ。」

 2人は、また、馬鹿らしいことを言い出した。

「それでは…。」

 困り切った一団に、

「引き分けだ。だから、我々は、和解するのだ。」

「和解して助け合いうんだ。お互いの敵国から、力を合わせてお互いの国を守るのだよ。」

「はあ~?」

 聡明さでは、並ぶ者がない2人に反論できる者はおらず、この魔族と人間達は同盟国となり、魔王と勇者は結婚をして、皆が幸せになって、目出度しめでたし…話は一応、終わるのだ。

 まず一つは終わったわ。その呆れた目は何?

 


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