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異世界スローライフは難しい  作者: 安藤昌益


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私達の戦い、私達のよね、の始まり…よね?(第一王女は語る)

 銃声、剣戟の男、人の様々な叫び声のする方に駆けた。正面玄関から大広間にかけて、戦いが展開されていた。そこでは既に10人近くが倒れて動かなくなっていた。血を流しているのがわかる者達も何人かいた。侍女の何人かも、短剣などを手にして戦いに加わっていた。流石に、武門の家だ。シヨウチユウ侯爵家の者達がムギを先頭にというより、ムギに助けられながら、顔を隠した黒装束の男女と戦かっているのは、直ぐに分かった。ムギはというと、ほとんど裸で、家臣や使用人達を守りながら、剣と回転式弾倉短銃で戦っていた。彼付きの侍女も、一人は短槍をふるって、もう一人は格闘戦用の武具を着けて、どこから持ってきたのか、戦っていた。その戦いぶりは、彼女達の役割の一つが、はっきり分かるものだった。ムギは、やはり身体強化すらしていなかったが、相手を圧倒していたが、彼らも手練れで、銃器を持っている、魔法も使えるだけでなく、なんと聖剣、聖鎧や魔法石の類いまでもっていた。“ドアーフが関わっている?”そのため、ムギも多数の使用人に助力しながら戦っているため、戦いは長びいていたのだ。“身体強化くらいしなさいよ。”私は訝しく思った。その理由を、彼から聞かされるのは、ずっと後になってからだった。

「合力するわよ!」

「感謝しなさい!」

 私達は飛び込んだ。得意の魔法を剣に纏わせて、私達は数人を叩き切って、倒した。シヨウチユウ侯爵夫人も一人の相手を圧倒していた。横合いからの介入で、あっという間に、侵入者達は負い詰められてしまった。

「ありがとうございます。王女殿下がた…その…服…。」

 ムギが何か言おうとした時だった。

「この売女ども。ちょうどいいわ、これで殺して上げるわ。殺しても、役に立つからね。」

 何人かが笑った、含み笑いだったが。

「気をつけて、何か仕掛けてくるわ。多分、幻覚系よ!」

 マイだった。

「分身!」

 一人が、複数人になった。

「霞隠れ!」

 姿が揺らいで、はっきり為なくなった。

「霧幻。」

 手元から、ガスのようなものが出てきて、見る間に周囲が霧に包まれた。10人以上の同時攻撃してきて、霞で周囲がはっきりしない中での闘いに入ったと思っていると霧で周囲が見えなくなる、が交互に展開された。至る処から声が頭の中にがんがんと響く。妹分も、マイも、ムギですら、どこにはいるから分からない。精神を集中し、気配で何度か相手の攻撃を受け止めた。確実に一人を斬った手応えはあったが、次第に負い詰められているのを感じた。

 が、それはいきなり終わった。

「な、何故、我が実体を…。」

 顔を隠していた布が剥がれ、顔をさらした女が、ムギに体を剣でさしつられながら、他に数か所に突き刺された跡があった、断末魔のうめき声を立てていた。

「おのれの術にかかっていると信じているお前達の姿は、本当にとーても滑稽だったよ。」

「お、おのれ~。」

「俺の大切な王女様達を、それと優しい姉上を殺そうとした奴には、情けはかけないからな、苦しんで死ね。」

 女は、怒りの言葉を放ち、怒りの形相を向けたが、直ぐにそのままぐったりとなって動かなくなった。

 ちなみに、他の2人は床に血を流して倒れていた、いや、切り刻まれて死んでいた。

 視界が晴れた大広間では、倒れた襲撃者達と血で、異臭が充満していたが、直ぐにはそれに気がつかなかった。

 シヨウチユウ侯爵夫妻は、しばらく周囲を見渡していたが、使用人達にテキパキと指示を出し始めていた。

「ムギ~、怖かったよ~!」

と場所柄も、自分の立場も考えることなしにハイエルフ女がムギに抱きつこうと駆け寄るのを阻止するため、機先を制して彼の傍らに立った、私と妹は。彼も私達を抱きしめて、ハイエルフ女の足を止めさせてくれた。

「申し訳ありません。危険な目に合わせてしまって。」

 彼にギュッと抱きしめられたまま、ついうっとりしていた私達をよそに、マイは、

「どうして、あいつらの術を破ったのよ?」

「え~。カンティヨン殿下、ランビック殿下…そして、姉上の…あわれな姿に目が…、それでですね…。」

「え~。」

 私達は、自分達の姿を思いだして顔を真っ赤になった。ひどく恥ずかしかったが、彼を抱きしめる力は緩めなかった。

 マイは、しかし、彼を殴ろうとした。彼は軽く避けた。“あらあら、優しいお姉ちゃんはどうしたの、マイさん?”よろける彼女の耳元で、彼は、

「それじゃあ、優しいお姉ちゃんじゃないよ。お仕置きが必要だね。」

 な、何、お仕置って!ま、マイ、何、その期待するような顔は?結局、そんなお仕置きなんて、冗談で何もなかったのだが。

 侯爵夫妻も、頭を下げたが、もちろん私達は侯爵家の責任ではないと答えた。警察が着て、私達の存在を知り、とても恐縮していた。

 犯行は、亜人、獣人からなる、ドアーフはいなかった、勇者・魔王復活阻止、亜人解放を主張するグループだった。狙いは私達と侯爵家、しかも私達の来訪の情報で慌てるように、あるいはチャンスとばかりに、ことに及んだらしい。そして、何と、その中に私の護衛がいた。彼女は、後から合流した二人の内の一人だった。だから、彼女の手引きで、やすやすと侯爵家の邸宅に侵入できたのだ。これには、私達が侯爵夫妻に謝罪しなければならなかった。もちろん、夫妻が抗議、問題視したわけではなかったが。

 この件で、夫妻はマイとムギに、

「殿下の騎士団に入って、このようなテロリストを一掃する、お手伝いをしなさい!それが、我が家の者の役割だ!」

などと言いだした。ありがたいのか、どうか…、やはり、ありがたいのだろう。

 その後、私達はムギの実家の世話になり、夏休みの半分近くを過ごした。嵐の被害救済活動にも、魔獣狩り、海水浴、聖樹・神樹の森の散策、農園から工場などの見学、周辺各都市の散策などを行って過ごした。

 さらに、もう一回、襲撃を受けた。

 少し北方に行った、テキラ市の町中で、

「殿下。」

と私達の護衛達が駆け寄ってきた時、ムギと彼付きの女中が立ち塞がった。

「お前たちは誰だ?」

「王女様。こやつらは、あなたの護衛ではありません!」

「入れ替わった偽者です。」

 瞬く間に、倒した。変身魔法で、私達の護衛達とすり替わったのだ。幸いなことに、私達の護衛は皆気を失って倒れているのが見つかった、皆、無事だった。勇者・魔王阻止派だが、それに連なる人間・魔族を殲滅することを目的として、最近急成長のハルマゲドン派だった。

 ちなみに、事件は公にしなかった。地方長官の責任問題を避けるためだった。

 そして、リカアのことだが、このエルフ女のことがどうしても気がかりだった、いや、私ではなく妹のランビックが、である、あくまでも。

「あいつは、多分王女殿下に媚びを売った方がと得だと判断しますよ。そういう奴です。」

とムギは言った、それにはマイも頷いていた。その気心が分かるといったところが、何となくひどく不満だった、あ、それは妹がそうだったということだ、そうなのだ!



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