私達が何時手を切ったのですか(第一王女は、語る)
「それで、彼らはどのくらい、我が国に入っているの、姉上?」
「それが、分からないらしいのよ。全く何をやってるのかしら。」
「肝心な情報は、提供してくれていないのではないですか?軍や警察は、ある程度把握しているのでは?」
ムギの言葉に私は、面白くなかった。まるで、私が馬鹿にされているようだからだ、まるで。とはいえ、その可能性はあると思わざるを得なかった。
「それでは、どうしたらいいと思うわけ?」
「出し抜かなければならないわね。」
「情報を自ら集めることから始めないといけませんね。」
そこから、また話が続いた。その時、マイが乱入してきた。
ところでマイ?その扇情的な夜着は何?
後で、妹と、
「マイって、ブラコンじゃない?」
「ええ、姉上が彼とベタベタしているのを見ながら、コーヒーカップをカチカチさせていましたわ。」
ベタベタは?それはあなたでしょう?それはともかく、二人の意見は一致した。
マイに促されて、部屋を出る間際に、ムギは私達二人と、キスをした。唇を軽く重ねただけではなくて、唇を押し付け合って、舌を絡めて、互いの唾液を流しこみあった。で、でもなんでランビックが先なのよ。悔しいから、見せつけるように情熱的にしてあげたわ。その前に、たっぷり見せつけられた訳だけど。抱きしめる彼、我慢しているのが分かるようだった。本当に、据え膳しようかと思ったくらいだった。その夜は中々寝つけなかった。
翌朝、船縁で3人並んで、海と遠くに広がる聖樹、神樹の森やら田畑、牧場、都市、道、海岸を見ながら、神樹、聖樹の森林が、ある意味魔樹も取り込んで、千年近くの歳月をかけて、膨大な人手、絶え間ない苦労により形成され、さらに数百年かけて新たな姿に成長しつつあること、魔獣をある意味、そこで適正に狩ることで手間、労力のかからない牧場のように利用していることを、ムギは、私達もある程度知ってはいたが、詳細に説明してくれるのを、感心しながら聞いていた。この森林のように、人間と魔族がせめぎ合った地は、人間と魔族は、融合してしまった。我が国は特にそうだが、世界中、程度の差はあっても同じなのだ。魔族の国だ、人間の国だと称する国々も、似たようなものなのだ。それなのに、何故、彼らは魔族だ、人間だ、亜人だなどにこだわっているのか、と思ってしまう。
ところで、マイ、何?ムギに、あなたの胸が、そ、それはそれは見事だって分かっているけど、押し付けないでくれる?
その後は、船長から、公開食事を懇願されて応じることになった。ムギだけ、私達というのも悪いかなと思って、マイも同席してもらった。さすがに慣れない彼女には、悪かったなと思った私を尻目に、ランビックはムギに魚の骨をとってもらったり、ア~んなどして…マイの顔がひきつっているわよ!あ、ムギ、私にも・・・ア~ん!
港に入港、川船に乗り換え、さらに馬車に乗り換えて、彼女らの実家、シヨウチユウ侯爵邸についた。馬車を降りた私達を迎えたのは、
「ムギー!公爵になったんだってー?結婚してあげるよー!」
と彼に抱きつこうとする小柄なハイエルフの女だった。ムギ!誰よ、この女?派手な服を着ているけど…。
私とランビックは、すぐさまムギの左右から、彼と腕を組んで、彼女を睨みつけて、ムギに抱きつこうとするのを食い止めた。
まず、マイが彼女が自分達の幼馴染みのハイエルフ、コウルイ伯爵家三女リカで、一時ムギとの婚約の話があったが、彼の魔法学院入学前に破断になったことを説明し、私達が彼の恋人であると紹介した。
はじめ目を丸くしていた、ハイエルフ女だったが、すぐに私達を睨みつけて、あろうことか、
「王女殿下達と別れるかわりに、ムギは侯爵様になるんでしょう?それなら、私と結婚できるんでしょう?」
と言ったのだ。何時、私がムギと手を切った~?私とランビックに睨まれたムギは、平静な顔で、そういう話になる過程を説明した。
「あんたが準伯爵を断るから悪いのよ!私と結婚したくないの?」
「そういうお前だから、結婚したくないんだよ。今、王女殿下方に誠意を尽くす立場なんだよ!」
「何時までも若い私の方がいいにきまっているでしょう?分からないの?」
「それが、事実でないのはよく知ってるよ!」
ため口で言い合う二人に、私は面白くなかった。だから、ランビックとともにしっかりと腕を組んで、体を擦りつけて、思いっきり勝ちほこった顔をしてやったわ。
この後、マイ・ムギの実家での夕食、マイとムギは両親に私達の同行をかなり責め立てられたようだった。私達にも、シヨウチユウ侯爵夫妻は、小言を言った。まあ、当然のことであり、覚悟はしていた。ただ、次第に、もう諦めたというより、積極的に受け入れる方向に姿勢に変わってはいくように思われた。ランビックは、王家の食事以上に雑穀が多いライス、パン、餅に閉口しながらも、魔獣の肉や魔樹の木の実まである食事に途惑いながらも、こちらは意外に美味しかったし、雑穀の多いライスやパンも思った程不味くはなかったが、
「早く、彼のためにも馴れたいと思ってますから。」
とか言って、マイ、ムギの両親を刺激するのは止めてよ。
しかし、その夜、シヨウチユウ侯爵夫妻を、本当に積極的に私達の支援者にする事件が起きてしまったのだ。
その夜、女6人で湯につかっていた。6人とは、私とランビック、マイと彼女の母上であるシヨウチユウ侯爵夫人、そしてコウルイ伯爵夫人と三女リカアである。ハイエルフであるコウルイ伯爵夫人は、50過ぎのはずだが、20代後半にしか見えなかった。シヨウチユウ侯爵夫人も40にはなっているはずだが、かなり若々しく見えた。二人とも自分達の娘に似た面差しで、コウルイ伯爵はやや華奢でスリム、シヨウチユウ夫人は鍛えた筋肉と成熟した女の魅力的な容姿で、タイプは異なるが、20年後はこうありたいと想わせる美人だった。リカアは…なかなかいい体しているじゃないの?全てが私がより小さいけれど…なんかむかつくわ!マイは、いつ見ても見事な容姿よね。彼女が、ムギの実の姉でよかったわ。ランビック…この娘、日々魅力的になっていってない?なんか焦るような…、あれ、私ったら何考えているのよ?
リカアは、ムギとの昔話を始めたけれど、私達の仲を壊すためかしら、かなり悪口に聞こえることばかり。さすがに、コウルイ伯爵夫人が窘めたし、マイも、
「ムギに言っておくわよ。まあ、あの子は気にしないでしょうけど。」
と少し睨んで言ったわ。そしたら、彼女、そっぽを向いて私達を睨むんじゃない。
「彼が欲のない、大人びた冷静な感じで、質素で、手先が器用で…彼のことがますます好きになりますわ。」
と破顔一笑の妹、先手を取られた~!
「まあ、私達が彼に交際を求めているのですから。」
悔しがるリカアの顔、ゆ、かい~。
その時その時だった。
「賊だ!」
との声。私達、私とランビックとマイとシヨウチユウ侯爵夫人は、まず剣を取りに浴槽から飛び出して、脱衣所に飛び込んだ。もちろん、身体強化をして、用心してだったけれど。




