小言は弟にだけにしてよ!(姉は語る)
「あなたがついていながら…どうして、両王女殿下がついてこられると、事前に連絡してくれなかったの?」
母が、父を抑えて、私に文句を言った。父の執務室の居間に連れ込まれた私は、両親に一人責められるはめになってしまった。
「まさか、本当に両王女殿下は、ムギとけ、け、結婚しようと思ってなんかいないわよね?鈍感なムギはともかく、あなたならよく分かるはずよね。どうなの?まさか?大丈夫よね?」
あれが黙然人だなんて、とんでもないわよ。しっかり、二人の気持ちなんか分かっているわよ。大体、二人が突然、私達の帰省についてくると言いだしたから、連絡する暇がなかったの!まあ、何とかすれば半日くらいは、早く知らせあることもできたかもしれないけど、もう面倒くさくなったのも事実。
「何とか、ムギにちゃんと言ってやって。姉のあなたの言うことは、よく聞く子だから。」
あ~あ、分かってないわよ~。まあ、少し前まで私もそうだったけど。でも、今では、優しいお姉ちゃんをしないといけないのよね?嫌でしかたがないけど、約束してしまったから。
「彼は、清純な関係を、交際を続けているわ。少なくとも、私は、そう思っているわよ、母上。逆に、王女殿下達が、がっちりガードしているから、悪い男も女もよってこないようよ。彼も、いつでも身を退くつもりだし…。」
「ならば、王女殿下達も、あくまでも遊びでなんだな?学園生活が終われば、もう終わりなんだな?」
復活した父上が、話に乱入してきた。
「そんなにお二人は、はすっぱ女ではないわよ。真剣にムギと交際しているわ。」
不味かった…。両親を頭を抱えさせちゃった。それで、ムギを呼んで来るように言われちゃった。
ムギが、こんこんと言われるのを見て、ざまあみろ、と思った。しかし、脇で聞いていると、国王陛下や侍従長が、さらには王女殿下達の婚約者達が動き出していることは知っていたが、我が家に対して、両親に対して、さらにムギに対して、そこまで言ってきている…と思わず心の中で絶句したわ。
「父上、母上のお立場は、よく分かります。でも、両王女殿下に不誠実な態度を取るわけにもいきませんから…。」
弟は、神妙な顔で弁解していた。本心は、どうなのかは、わからないけど。心の中では、舌を出しているかもしれない。
でも、何で私も一緒に、こんこんと説教を受けていなければならないの?それは、この馬鹿弟だけにしてよ。
「だがな、王女殿下を二人ともというのは…だな…。いや、そうではなく、このまま王女殿下を、我が家に迎え入れるというだけで、大変な負担で…いや、そういうことではなくてな…。」
父上の言葉は、歯切れが悪く、要領を得ないものになってきた。母上などは、何故か王女殿下達の日常を聞きまくるばかりだった。
さらに、このあと、両王女殿下達をとの話ということになって、我が家の貴賓室と言える場所で、両親はさらに要領を得ない、奥歯に物を挟んだような話しぶりで、二人を窘めようとした。でも、なんでムギを席を外させて、私が同席させられているのよ?しかも、話に困ると私に振るわ、何故か私を叱責する、私に助けを求めるような視線を送るのは、止めてくれない?
「ムギは、お美しい両王女殿下に思われては、身も心もどうしようもなくなってしまいますわ。大事なのは、両王女殿下のお気持ちでは?子爵風情の位と財力しか与えられない彼でもいいのか、とか。」
と言わざるを得なかった。そしたら、即、
「一市民になっても、ムギはムギ様ですわ、私にとっては。」
「地位とか、財力で選びはしませんわ。」
「困難がいくらあっても。三人でなんとかしますわ。」
最後はハーモニーして・・・、止めてよ~!
「王女殿下のお心は、よく分かりました。愚息に、それ程までのお気持ち、愚息にとって過分過ぎる名誉です。」
締めくくったけど、父上の顔はあきらめきったものに見えた。母上はというと、現実逃避しているわ、二人に、王都の流行等をしきり尋ねて…。父上、“何とかしてくれ、頼んだ。お前が頼りだ。”なんて顔は向けないでよ!どうしようもなくなったのは、わかるけどお~!
王家との婚姻は、決して利益を生まなくなった訳ではないが、昔のように一族郎党の反映に、あるいは国の権力を握ることができるというものではない。父上が心配するように、特に地方で地道に、自力で、事業を拡大して、成功している我が家の場合、負担と面倒ごとを抱え込むだけなのだ。権力争いから逃れるために、都落ちしたのだから、元々我が家は。それに、王様が、臣下にポンと大きな領地を与えられる時代、社会ではないのだ。平民議会も、元老院も、枢密院も、内閣も簡単に首を縦に振ることはないのだから。
婚約が家同士の都合で決まる、というのは現在でも、貴族でなくても、けっこうある。しかし、それが絶対ということはなく、貴族の中でも本人の意志が尊重されることは多く、悪い意味ではなく、婚約破棄にいたることも多い。最近の進歩思想の展開も、それを後押ししている。それでもだ、王女、王子の婚約関係の重さは、その比ではないのだ。わかってはいるのよ、父上、母上。でも、
「最後は、彼らの意志ですから…。姉として、弟の気持ちを一番に考えたい、尊重したい、大事にしたい、守ってやりたいと思うのです。」
と言わざるを得なかった、優しいお姉ちゃんですから。
「そ、それに、もうこうなったら、王女殿下達の婚約者達の実家には、絶対恨みをもたれて、どうしようもありませんよ。ムギが身を退いても、恨みは消え去らないでしょう。」
あ、これはムギが言っていたことですよ、あくまでもムギがですよ。
「武門の家系である我が家が、魔王と勇者の子孫である我が家が、そのように相手の態度を恐れて、保身に走るのは、どうでしょうか?」
と私は言った。う~ん、これもムギが言ったのよね。言えと命じられた訳ではないけど…こういう言い方もあるとかなんか言ったんだっけ?上手く操られたかな?
「そ、そうだな…そのようなことでは、ご先祖である魔王様や勇者様に申し訳がたたないか…。」
「そ、そうよね。我が家に非があるわけではないのだから…。」
あれれれ、効き過ぎちゃったかしら?
「えー、これがこの館の井戸からの瘴気で沸かされているのですか?」
「館の灯りの多くも、それとは…。」
「田舎だからでございますわよ。ほほ…。」
「この館の周辺の街灯もそうなんですよ。瘴気を噴出する井戸を持った者は、余力を公共のために使うのが慣行となっているのですよ。瘴気の利用は単純ではないのですよ。聖樹を利用した処理を経てなのですが、そちらが強すぎると、無害だけど利用もできない存在理由にしかならないんですよ。」
我が家の浴室で、私達親子は王女殿下達に胸を張った。王女殿下姉妹は…、美人よね。気品もあるし…少し前まで、ちょっと前は寄り付きがたい、二人はそれがそれぞれ違っていたけど、ところがあったけど、いまではすっかり可愛くなってしまって…、肌のはり、胸、お尻の大きさ、形、腰のくびれ、すらりとした、それでいて細すぎない…。
「若くて…それに本当に美人ですわね…。ねえ、マイ?」
私の方を見て、ため息はどういうことよ?私は…胸の大きさや形は勝っているわよ、ムギが、言っていたもの!え?何言っているのよ、私の、馬鹿~!




