船旅で…何しているのよ!(姉が語る)
思わず、
「あなた方、何をしているのよ!」
と怒鳴るところだったわ。
「え?お茶を2人に出していただけだよ?お姉ちゃん。」
と自分もティーカップ、自作のやつ、を口に運んでいる弟が言えば、
「お茶をいただいている以外の何に見えます?」
「何を想像していたのかしら、マイ?」
とやはり弟作のティーカップとやらを口につけながら、王女姉妹、カンティヨン王女とランビック王女は、殊更キョトンとした顔を向けていた。
「こんなに遅い時間にお茶ってね…非常識では、ありませんか?両殿下?」
しかも、何、2人とも、その体を覆う部分の少ない、薄い、透けるような夜着で、弟の船室にいるのよ!しかも、そうですか?とかいう顔をして!
夏休みの帰省、春休みは、弟、ムギのしでかしたことのドタバタで帰省できなかった、の3日の船旅の2日目のことだった。お忍びとは言っても、両王女殿下がついてきてしまったのだから、一等客室で私と両王女、格落ちを示すため、弟は二等客室とした。が、船長以下の対応を私がしなければならない程、2人はムギの客室に入り浸り、夜、2人がベッドにいないので、もしかしたらと思って、来てみればこの始末だった。両王女殿下、頭の中が乙女熱で腐ってませんか?弟も、国王陛下や王女殿下の婚約者達から、釘を刺されていたでしょうが!
王都からは、まず河(かなりの部分運河)を1日、港から内航行で3日、港から実家までは運河で船で半日、それから馬車である。今、約500㌧の船、帆船の中である。横風を受ければ(追い風よりこちらの方が速い)10数ノットの速度を出せる最新鋭船である。もちろん、逆風航行の効率もいい。さらに、無風等の場合の推進機関もついている。
聖樹から採取した油を燃料にした機関で、スクリューをまわすのである。効率、燃費の良い最新型だが、聖樹からの採取量はそれ程量は多くなく、それの出すエネルギーがいかに大きくても、大量に使用する機関を作るわけにはいかないから、どうしても小型の補助的な機関で、補助的な推進機関としての使用にとどまらざるを得ないのが現状である。中には、石油とか石炭を使用する国々があるが、その量は、それらの国々でも、産出はさほど多くないし、我が国では産しない。
だから、一定の量をいかに効率的に利用できるようにすることで、より広く使う方向に進まざるを得なかった。聖樹を増やすわけにはいかなかったし、枝や樹液を乱獲すると後でしっぺ返しがくる。まあ、聖樹そのものを大量に伐採して、一時的な繁栄を選んでしまった国も、争いに、戦争を伴う、発展刺せてしまった場合もあり、火種は尽きてはいない。
「そろそろ、部屋に戻りませんか?殿下がたの護衛のかたがたにも気づかれますよ。」
茶を飲み終わっても、もじもじとして、物欲しそうな目を弟に向ける2人を促したわ。
「しかたがないな。」
と弟が立ち上がった。なによ?
「僕も、2人の姿を見ていると、我慢するのが辛いけど、これで。」
きゃー、何をするつもりよ!ふ、不敬罪、風紀違反よ!馬鹿弟は、急に体を強ばらせて、でも目は緊張しながらも、期待に満ちていっぱいに広げているランビック王女に歩み寄り、顔を近づけて、唇を重ねてしまった。愚弟はランビックを抱きしめ、彼女は彼の後頭部に手を回して、さらに唇を押し付けて、た、多分舌も互いに差し入れて、絡ませあって、互いの唾液を流し込み、呑み込んで…なに、そ、それ、ディープキスじゃない?わあー、もう、貪るように…え、カンティヨン王女?何、興奮してるのよ?2人とも何時までやってるのよ?長い長い其れが終わると2人は体を離したが、一瞬、唾液の橋が2人の口の間にできていた。涎を流し、ボウーとするランビック王女から体を離して、今度はカンティヨン王女の方に…。カンティヨン王女は、くそ弟が離れても、ボウーとしてしまっていた。
「魅力的なお二人をみている、自制心が壊れそうですけど、我慢しますよ。」
と言った愚弟は私に視線を…、え、何、わ、私…私は実の姉で、だ、ダメよ、で、でも…、そ、そのくらいなら…え、あれ?…な、なによ、そ、その顔は?わ、分かっているわよ、へ、ヘンなことはこれっぽっち考えてないわよ、ええ、考えていませんてば!
「両殿下方。夜も遅いですから、もう部屋に戻りましょう。」
と2人の王女様達の手を引いて、彼女らはぼんやりとはしていたけれど、大人しく立ち上がって、従ってくれた。急いで部屋を出ようとしたが、戸のところで、振り返り、
「お、おやすみなさい。」
とハーモニーして、それはそれは甘ったるい声で言って、足を止めてしまった。
「行きますよ!」
と私は強引に2人を引っ張って、背に
「両殿下方も良い夜を。姉上も。」
との弟の声を受けて、私達の客室に向かった。入る少し前に、後ろから、戸を閉める音が微かにした。弟は、私達を見守っていたらしい。
「さあさ、お二人とも、ご自分のベッドに入って、早く寝て下さいね。」
と2人をベッドに追い込んだ。2人が、
「姉上。マイ先輩。おやすみなさい。」
「マイ。ランビック。おやすみ。」
と言ってベッドに潜り込んだのを確認してから、
「はいはい。おやすみなさい、お二人様。」
それから、ガスランプを消して、私もベッドの上に横になり、布団をかけた。
睡れなかったというより、なかなか寝付けなかった。船は揺れていたが、もう慣れているから、大したことはない。あの唇を重ね合って抱き合うランビック王女とカンティヨン王女の姿と息づかいが、あのトロンとした2人の目、顔。そして、2人を抱きしめた、彼女らを見送る弟の顔が、頭の中で交差して、目がどうしてもさえて、心臓の動悸が高まってしまったのだ。また、なんか悔しいと思う気持とそれを感じることへの怒りが交互にきて、なおさら目がさえてしまった。王女姉妹達の寝返りが、何度も聞こえたので、彼女らも寝つけなかったのだろう。それは、自業自得よね!そう思っているうちに、眠ってしまったらしい。
目を覚ますと、2人はいない。時計を見ると、朝食時間にはまだ時間がある。私は、急いで起きあがって、服を着替えた。あの3人が何をしでかすか、不安だったからだ。




