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異世界スローライフは難しい  作者: 安藤昌益


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守りたいもの、妹と国と臣民(第一王女語る)③

 私は、勝負に我を忘れて暴走し、危うく妹まで巻き込見かけたことにショックを受け、ふらついている相手にあのような攻撃をしかけてしまう闘い方を恥じて、決勝戦を辞退したと云うことになっていた、私の知らないうちに。もちろん、判断できる状態だったら、同様な判断をしていただろう。私は、表彰式も欠席した。かえって優勝したマイが、

「ごめんなさい。」

と謝りに来たほどだった。その時の彼女の顔は、本当に心配しているという感じだった。私は、今にも死んでしまいそうな表情だった、とマイは後から、私に言った。

 まあ、周りは私を心配してくれた。そうでないのが、2人いた。1人はランビックだったが、彼女の場合はムギのことを心配して、付き添っていたから、まあ、これはこれでしかたがない。もう1人は、父上、国王陛下だった。私の心配もそこそこに、

「あの侯爵家の長男との関係は、どうなんだ?優勝できなかったから、交際はできないということになったのかな?まさか、ランビックは、本当に彼を好きなのではないのか?」

と狼狽するように、私に質問を浴びせてきた。まだ、ベッドの上で横になっている私にだ。気軽に市井に出て、気さくに市民と談笑する、まあ、よい人ではあるのだが、少し頭にきた、この時は。だから、

「あれは冗談で、彼女も彼も、本気にしてませんよ。全ては、ことの成り行きに流されて、どうにも引けなくなって、ムギ殿は大会に出場したのです。でも、あそこまで勝ち上がり、あの様なことがあったのですから、助けに入ったのは、彼女の責任感からですが、2人の間が狭まったらかもしれませんね。」

と言ってやった。国王陛下の顔は、引きつっていた。

「お、お前からも彼女には、よく注意してやってくれ。…ところで、お前は、大丈夫だな?」

「はあ~?」

 この時の私は、殺気が立ち上っていたと、後で、この時、傍らにいた国王付きの側近が私に話した。確かに、怒りを感じたのを覚えている。そこをぐっと抑えたのも、覚えている。そして、もっと虐めてやることにした。

「お互い、あれだけの闘いをしましたから、その意味では、親しいものを感じあったかもしれませんね。」

 蒼白になりかけた父上の顔を見て、これ以上は、と思い直して、

「もちろん、彼を私の騎士団に入れたくなった、という意味ですよ。」

 父上は、ホッとしたようだが、ため息もついた。私が、自分の騎士団を作ることに、困ったもんだ、まだ、そんなことを言っているのかと思っている、のが分かった。

「ランビックのことは、よく見守ってやってくれ。それからお前も、あまり思い詰めないように…。しばらくゆっくり心身ともに休んだらいい。」

 最後は、とても慈愛のこもった表情だった。

 それから、二三日後、ランビックと私達の部屋の居間で、侍女の入れたお茶を飲んでいたると、自分のそれには手をつけず、何か言いたげにもじもじしている彼女を見て、

「どうしたの?何かあったの?…ムギ殿のことで?」

 すると彼女は真っ赤になって、

「じ、実は…。」

と、しどろもどろに、そんな妹は初めて見たような気がした、彼女が彼に交際を申し出て、彼が誠実な回答をしたいから、少し時間が欲しいと言ったことを、身振り手振りまで加えて、さらに最後は、舞い上がっているようにすら見えた。

「姫様。大丈夫なのですか、そのシヨウチユウ侯爵家の長男というのは?」

 疑わしそうに、かつ、心底心配して、侍女が言った、私の空になったカップに紅茶を注ぎながら。彼女は、私達2人の唯一の侍女である、学校内の寄宿舎での。できるだけ特別待遇ではないようにしたあか、だからこそ、最上級ではない部屋で、かつ2人共有にした。侍女も最小限にしたいと言ったら、

「では、私が。お二人ならば、私1人で大丈夫ですから。」

 彼女は、私達2人の子供の頃からの侍女で、まだ、40歳を過ぎたばかりの、その歳より若く見える、しっかり者の美人だった。

「大丈夫よ。私の騎士団に入れたいくらいの奴だから。」

「姉上。彼は、私と私達の騎士団をつくるんです!」

 急に怖い顔になったランビックを揶揄いたくなった。

「いいじゃない、彼を私の騎士団にくれても。彼の直属の上司として、あなたを、幹部として招きするから。」

「な、何よ、私をおまけみたいに…。まあ、いいわ。客分としてか別働隊として私と彼を、と謂うのであれば、考えてもいいわよ。」

 意外な回答だった。ランビックが?いや、あのムギが…。彼をますます欲しくなった。そして、私は数日後、マイとともに、2人の証人になるため、ランビックとともに、ムギの指定した場所に赴いた。

「あなた方は、ついてこないで。私達、3人にどうこうできる奴なんかいないわ。周辺に、怪しい連中がいないか、見張っていて。」

と私は私達の護衛の男女に命じた。

 校内で不穏な輩など、あまり考えてもられないし、どこぞの芝居や小説のような悪漢では、ないから、ムギがだが、悪い仲間を潜ませて、悪辣な企みをしているとは思えないが、彼らを私達とムギとの場から遠ざける理由にはなった。彼らは、本気でその心配もしていたようだが。

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