スローライフに失敗したのかな?
スローライフ、簡単に言うが、そんなに簡単なことではないと思う。
例えば、金持ちでも、身分が高くもなく、平凡な人生を終えたが、周囲には彼女を愛する、敬愛する彼女の子供、孫、ひ孫達が、また、近所の人々が、彼女の死を悲しんでいる。その情景を実現するためには、彼女は両親、弟妹達のために早くから頑張り、結婚してからは、裁縫や刺繍などで収入を得ながら、さらに周囲に教えながら、夫、子供達の面倒をしっかりと見て、可能な限り教育を子供達に受けさせ…と毎日努力した結果であり、狭いとはいえ、彼女はその能力を評価されていたし、それがなければ、幸せに、スローライフ、平凡な幸せを得られなかっただろう。だから、単に無能を演じるだけでは、スローライフの幸せは得られない。まあ、スローライフといっても大大大成功で、全くささやかでない、場合の方が多いが、ライトノベル、マンガ、アニメでは。
前世では、21世紀初頭の日本での平凡な人生から、他の世界、異世界に転生して、勇者としての人生も送ったりしたが、その全ての記憶、能力、知識を持ったまま転生してきた、今まで。平凡な男の、自分の能力を評価されない、評価される能力がない人生はそこそこ豊かな生活ができたが、楽しいことはあまりなかった。勇者として魔法と剣の世界に転生した時は、人間だけでなく魔族も亜人も複雑で、単純に味方、仲間などなく大変だった。名工とかその他の存在で転生した時も、やはりスローライフでまったり、楽しくにはほど遠かった。そして、この、魔法がありながら、銃砲もある、さらに魔王・魔族と人間は存在しても、その間の戦いは存在しないどころかその垣根もなくなった、魔王も勇者も既に存在してない世界では、侯爵家の第二子、長男と生まれた。絶対王政の時代にも近いが、女性の権限も強く、社会に女性の進出も進んでいる。そして、長子相続で、女性が跡を継ぐことが珍しくない、かつ、魔法剣の使い手の家でもあり、姉は才能豊かな容姿端麗、頭脳明晰な女だった。だから、取り得る戦略としては、ただ無能に見せかけていては、ある意味それで目立ち、捨てられかねない。そこそこに有能であるが、偉大な姉の陰に隠れ、それでもひがまずしっかりしていて、努力して、常識人で品行方正、悪行は働かない、かえって覇気がないと窘められるしまう。だからある意味目立たない、そういう弟になるべきだと思った。その結果、財産のほんの一部の分与を受け、ささやかな幸福を得る人生を送ろうと考えた。間違いではなかったはずだ。それがどこから崩れたのか?
王女殿下に声をかけられたことが…その前で無能を演じていれば…、馬鹿と思われたら、凡てが上手くならないだろうし、冷たい態度を取った方が目立っだろう?そうした熟考の上で判断、行動だったはずなのだが…。