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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

虫に食われて死ぬか、自死を選ぶか

作者: 竜田揚げ

そういう描写書き込みたかっただけなので、オチもストーリーもないです。

また、内容もその様なものなので人によっては不快感を覚えます。閲覧は自己責任で

 女は見知らぬ部屋で目覚めた。広さはおおよそ7畳程のやや狭い部屋だ。窓はひとつもなく、天井の蛍光灯も薄暗い。部屋には何もなく、床も壁も天井も打ちっぱなしのコンクリートだ。所々に黒いシミがあり、女は不気味に感じた。

天井の四隅に監視カメラが付いていることに気付いた。また、部屋には各壁に一つずつ金属製のドアがついている事にも気付いた。見るところ、大きさは1m程の正方形で、一般的なドアではなく、上方向にスライドして開くような仕切り扉であった。この四つの仕切り扉以外に出入り口は見当たらず、自身もここから入れられたのだろうかと女は考えた。

女は助けを呼ぼうとスマートフォンを探した。が、普段はバッグに入れているため、当然この部屋にはない。この時女は、バッグだけではなくピアスも腕時計も、服以外の装飾品が全てない事に気付いた。


 女はただの大学生だ。大学からの帰り道に、突然後頭部に痛みが走り、バンに引き摺り込まれた。そこで謎のガスを吸引させられ、次に目覚めたらこのコンクリートの部屋だった訳だから、女は変態の仕業かと思った。乱暴されなかった確認したが、そのような形跡はなく、とりあえず安心した。

その時、一つの仕切り扉が開いた。

女はビックリし何が出てくるか身構えた。

出てきたものは、ステンレス製の皿の上に乗った錆びたノコギリだった。

逃げ場のない無機質な部屋、壁や床のシミ、錆びたノコギリ......。女は様々な最悪な事態を想定して過呼吸になった。パニック寸前といった具合だ。

その後、次はどの仕切り扉から何が、誰が出てくるのかビクつきながら部屋の隅で縮こまっていた。

しかし、2時間か3時間か、とにかくそれ程の長い間、仕切り扉が開く事はなかった。

女は少し安堵してノコギリに手を伸ばした。

それは、本当に普通の、なんの仕掛けもないただのノコギリだった。ただ、刃はところどころ錆びており、この状況下ではそれが特に強調されて女の目に映った。


 女が、また部屋に何かないか歩こうとした時、壁の向こうで何か大きな音がした。女はびっくりしてまた部屋の隅で固まった。

壁越しに何か機械の駆動音が聞こえ、いよいよ何が出てくるのかと、女は恐怖した。

ガゴン!と大きな音がした。次の瞬間、三つの仕切り扉が同時に開いた。

女は悲鳴をあげながら飛び上がった。

出てきたのはとても大きな虫達だったのだ。


 一つの扉から出てきた虫は大きく、バッタともコウロギとも形容し難い見た目をしていた。大きさはネコ程もあり、体色は茶色。羽は無いように見える。便所コオロギの様な太く長い強靭な後ろ足を持っていた。そして何より特筆すべきは、巨大なアゴである。カチカチと高速で嚙み鳴らし、それだけでも肉食性だと感じられた。

もう一つの扉から出てきた虫は、巨大なクモだった。こちらはとても大きく、胴体だけでも柴犬程もあった。これに細長い脚が付いている訳だから、それ以上に大きく見えた。体色は黒で細い体毛で覆われており、8つの複眼は赤色をしていた。ただ、こちらは臆病なのか、仕切り扉から脚を一本だけ出して周囲の安全を確認してからノソノソと出てきた。

三つ目の扉から出てきたのは巨大なムカデであった。こちらは丸太のように太く長く、その体躯に不釣り合いな程の速さで扉から飛び出した。頭は毒毒しい赤色で、その大きな毒牙からポタポタと液体が漏れ出ていた。


 女はギャァギャァと喚きながら部屋の角へ逃げ込み、身をこれ以上ないほど壁に引っ付かせた。

三匹の虫達はよほど腹ぺこなのか、すぐに女をエサだと認識した。

その間にも女は顔を手で庇いながらギャァギャァと喚いてるだけだ。


 まずはムカデが素早く女に近づき、噛み付いた。

女は右足に激痛が走り、これまた大きな叫び声をあげて狭い部屋の中を走り出した。

しかし、虫は一匹だけではない。すぐにバッタが女の体に飛びかかった。同時に凄まじい嫌悪感が女を襲った。

女は鋭い悲鳴をあげながら、泣きながら必死にバッタを引き剥がそうと手足をこれでもかとバタバタと動かした。しかしバッタは剥がれず、腕や肩や背中など、何回か噛み付かれた。

女は思い切り壁に体当たりして、なんとかバッタを振り払った。しかし、もうすぐ後ろにはムカデが迫っており、今度は左足を噛まれた。

女は痛みゆえに飛び上がり、また逃げようとした。しかしクモがこれを見逃さず、今までのゆっくりとした動きとはうって変わって、とんでもない速さで女に飛びかかった。

女はこれに押し倒された。チリチリと体毛が触れ、失神しそうな程の不快感が女を襲う。クモはすかさず、毒牙を女の腹部に突き立て、毒を注入した。

女は今まで以上に叫びながらクモを蹴ったりして抵抗した。

この攻撃にびっくりしたのかクモはこれまた素早く退いた。

女はすぐさま立ち上がろうとしたが、うまく足に力が入らずに壁にもたれかかり、座り込んで、その後は動けなくなった。どうやら虫達の毒が効いている様だった。


 バッタがまた女に飛びかかり、女を食おうとした。女は「嫌だ。嫌だ」と叫びながら必死にバッタに抵抗した。が、続いてムカデも女の下半身に食いかかってきた。女は足を動かそうとしたが、毒のせいで全く動かなかった。片手でバッタを、もう片手でムカデを押し退けようとしたが、左腕もムカデに噛まれた。

暫くはそれでも両手で抵抗をしていたが、やがれ左手も動かなくなった。

女の左足に激痛が走った。女は叫びとも、言葉ともわからない声で泣き喚いた。ムカデがいよいよ本格的に女を食い始めたのだ。ふくらはぎを食い破り、そこに頭を突っ込んで内側から食い進めていた。

足を見ると皮膚は紫や赤色になり、2倍にも膨れていた。

友人から「足が綺麗だね」と言われ、内心自慢に思っていた美しい足の面影はもうない。

激痛に「嫌だ。嫌だ」と抵抗の言葉を述べているとクモがやってきた。

女の腹部にまた牙を突き立てた。焼ける様な痛みにもう女は訳がわからなくなった。

気付かぬうちにバッタも女の左腕にかじり付き、食事を始めていた。


 全身の痛みに右腕をバタバタと振り回していると、ある物に手が当たった。ノコギリだった。

女はそれを素早く掴み取ると、まずは腹部のクモを殺そうと思い切り振り下ろした。

...が、当然そんな事でクモの体が傷付いた訳ではなかった。女は叫びながら必死に刃を前後に挽いた。

しかし、クモは体毛で覆われており、ノコギリも錆び付いている。結果として傷一つつける事ができなかった。

バッタやムカデにも同様にノコギリを挽いてみたが、結果は同じ事だった。彼らの硬い外骨格を、錆びたノコギリで、右腕一本でどうにかしようとする事は不可能だった。


 想像を絶する痛みや不快感が同時に押し寄せるので、女はどうにかしてこの状況から逃げ出したい一心だった。

「不快感。激痛。恐怖。嫌悪感。吐き気。激痛。恐怖。不快感。激痛。激痛。激痛。激痛。恐怖。激痛。不快感。激痛。激痛。」

その時、一つの考えが浮かんだ。

「死ねばすぐこの最低な状況から解放される」と。

女は右手をブルブルと震わせながらノコギリの刃を自分の首に当てた。

女は泣きながらノコギリの刃を挽いた。

たった首の皮が切り裂かれただけでも、新しい激痛が女を襲い、右手からノコギリを落としてしまった。

心は死にたいのに、身体はまだ生きようと、生命活動を維持するために痛みの信号を必死に送ってくる。

心と身体の想いが一致しない事は残酷なことだった。

生きたいくせしてこの状況を打破できる程の力がない事も取り分けて残酷だと言えよう。

女も「やっぱり無理。無理、どうしたらいいの」と泣き言を漏らしていた。

その間も虫達は黙々と食事を続けていた。

傷口をグジュグジュと食い進められる感覚、腹部から冷たさなのか、熱さなのか、痒みなのか、痛みなのかよくわからない不快感と痛み、皮膚や肉が食いちぎられる度に襲う鋭い痛み......。

女はもう一度ノコギリを掴みあげ、首筋に刃を立てた。

刃を挽こうとしたが、とんでもない恐怖感が女を襲い、涙ばかり出て、挽く事が出来なかった。


「不快感。激痛。恐怖。嫌悪感。吐き気。激痛。恐怖。不快感。激痛。激痛。激痛。激痛。恐怖。激痛。不快感。激痛。激痛。」


 本当に女はもう死にたい。解放されたいと思い、半狂乱になりながらノコギリを挽いた。

もう激痛でなんだかよくわからなかった。

とにかく叫びながらノコギリで首を切り続けた。

しかし、10回ほど挽いても、錆て切れ味の悪いノコギリではイタズラに傷を抉り、痛みを与えるだけで頚部大動脈の切断には至らなかった。

女は小さく呻きながらノコギリを落とした。

落としたノコギリはクモに当たったが、全く気にも留めずに女の腹の肉を消化液で溶かして啜っていた。

もう力が入らなかった。意識も薄れていく。

グズグズしているうちに、虫に食われて死ぬ方が先に来た。

女がふと目を虫達の方に落とすと、ムカデはもうすっかり左のふくらはぎの半分を食べ終わり、バッタに齧られてる腕もだいぶ細くなっていた。腹部はクモと服と血や謎の分泌物や体液でよくわからなかった。


 女は今際に昨日友人と行ったコーヒーチェーン店の記憶を思い出した。

フラペチーノをストローで吸う記憶だ。

最後に日常の記憶の中で意識が途絶えたことは彼女にとって唯一の救いだったと言えるのかもしれない。


 こうして女は出血多量と虫の毒によって死んだ。虫達は三匹で各々好きな部位をその後食い進めていった。


ちなみに、この虫達はある富豪のペットである。今回のことは年に数回、“生き餌”を与える贅沢をさせてやろうという飼い主の計らいだった。

「生きたまま」というのは虫達を思ってのことであり、決してこの飼い主の性格が悪い訳ではない。

ただ、唯一性格が悪い点を挙げるとしたら、自死用に与えた道具がノコギリであった事。その様子を監視カメラで眺めていた事であろう。

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