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「最後の希望」

「知らぬが仏。そうとわかっても聞きたいか?」


 人間気になった物事は多少のリスクを背負ってでも聞きたくなるものだと聞いたことがある。でもいざそんな場面に立ってみると本当に聞きたくなって、自分でもびっくりしていてゆっくりと頷いた。


「運営と実験台。それがフィクロの組織。あのゲームの中でオレ達は実験に付き合わされて、用が無くなったら退場(没収)。オレが知るのはこれ位だな」


 言いたくないことなのに、ここまで話してくれたことには感謝しかなく、すっと立った道草に軽く礼を言うと、今までの話が全て消えてしまうくらいに衝撃的なことを去り際に言い放った。


「もし誠もプレイヤーだったら辞めた方がいい……()()()()()()()()()()()


 意味深な言葉を背に、その日以来道草とは話さなくなってしまった。


 もう関わるなという暗示にしか思えないほどに距離もあって、再び僕は一人の世界に入り浸ることになった。


 とはいえ、道草の言っていたことが本当ならば、もしかすると葵さん達が次に狙われる可能性が高い。


 もうあのゲームはしたくないと思っていたけれど、一度知り合った仲だし葵さん達とはなにが起きたわけではないし、危険だと知ってるのにそれの餌食にさせてしまうのは夢見が悪くなる気がして仕方ない。


 雨が降るある日の放課後、僕は意を決して先輩の元へ足を運んだ。


「……と、東条先輩……いますか?」


 先輩の学級は二つ上の三年。クラスは一。これは聞いたというより、先輩がつけてるバッジとか、話とか聞いてたら容易に割り出せた。


 教室の扉を開けると一瞬静けさが覆った。余程のことがない限り他学年は寄らないからこそ、雨が上がるのを待っていた先輩方が驚いている。大体の人が黄色を浮かばせてこっちを見てるから間違いない。


 ただ人がいればいる程視認できる色は増える。幸い顔が見えなければ色は見えないけれど、殆どの先輩がこっちを見ていて、情報量がざっと三十人弱分。少したじろんでからその名前を呼んだ。


「み、水上君……えっと、どうしたの?」


「話したいことがあるんですけど、その、ここだと一目に付くので多目的教室かどこかで話しても?」


 学校できつく言った日以降先輩とは一言も話してない。正直気まずさが強いし僕の言葉で周りからの視線が突然痛くなるしで、胃に穴が開きそう。


 なによりも覚悟していたことが、思ったよりも強力でこの場から逃げたくなった。


その覚悟していたものっていうのは、先輩の色。いつもは明るいオレンジ色だったり、怒りの赤だったり。情緒不安定と思えるくらいに様々な感情を向けて来ていたのに対して、今は警戒の黄色と赤の二色が見えている。明らかに嫌われて信用が無くなっている証拠だ。


「え……えーと、ごめん。ここで話して」


「ハイランダー、貸して欲しいです」


「な、なんで?」


「それは、その……」


「……もう、やらないって言ってたし、貸せない。ごめん」


「それは、そのごめんなさい。きつく当たり過ぎたこと反省してます」


「わ、私は、誤ってほしいわけじゃない。なにも難しいこと言ってない、けど私は水上君のこと嫌いだから、ごめん」


「な、ならせめて(シーカー)さんの連絡先」


「教えれない……ごめん」


 離せば話すほど謝ってばかりの先輩の警戒色が強く育っていく。これ以上話しても貸してもらえないのは目に見えているし、本来の目的も果たすことができない。


 今更僕自身がしたことを後悔しても戻ってこない。きっと元に戻ることはできないのが悲しくて、胸が痛む。それでも、このままいても解決はしないから、僕は一言今までのことを謝ってから学校を出た。


 雨が降る中、急いで足を運んだのはオンラインベース。中に入ったところで、ゲームはプレイできない。そもそも今回は遊びに来たわけではなくて、最後の希望に賭けたんだ。


 地方から来てるから正直いるかどうかはわからない。中に入ってマスターに聞くのもどうかと思うし、現実的に考えたら個人情報の保護で教えてくれるはずもない。


 となれば、最後の希望(志羽姉妹)を今ここで待つしかない。


「ミカミ様。誰かお待ちで?」


 外でその時を待っていると、傘の中に入り僕の周囲だけ雨が止む。一体誰がと振り向く直前に声を掛けてきたのは水色(心配)を心に描いたマスターだった。多分受付から僕のことが見えて暫く動かなかったから心配してきたんだろう。


「あ、その、葵さん……ああいや、シーカーさんを待ってまして」


「そうでしたか。生憎ですがシーカー様はご来店されておりませんね」


 最悪の事態。頼みの綱が途絶えてしまった。なるべく早く会って話をしたいのに、まるで全てが僕を嫌っているように、運命を断たれて正直へこむしかない。


 もういっそマスターにと思ったけど、そもそもマスター自身プレイヤーであるのか、運営側であるのか一切わからない。もしも運営側だったら志羽姉妹が狙われる確率が上がる。今日は仕方ないし、流石に余計なことはしないで明日にしようと歩みを進めようとしたところで。


「そういえばシーカー様の相方、エルル様はご来店されておりますよ」


「そ、それを早く言ってください!」


「いう機会がありませんでしたし。とりあえずお呼びいたしますね。その間店内へどうぞミカミ様」

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