「挑戦権を得るためには」
「ドロップ品がフィギュア……?」
「せやで。まあ実際に見た方が早いな、少年もこのボスに一緒に挑戦するか?」
「ミカミ君には挑戦権がないよ。あと、それは私が許可出さないとだめだからねミカミ君。経験値食べられたら困るから」
「だそうです……」
「なんや、まだ挑戦権なかったんかいな」
顔も目も全くこちらを向いていないのに、低いトーンで釘を刺してきた先輩。滅多に見せない怒りの赤色が強くて、相当僕が敵の餌になるのを拒んでいるように感じた。それほど損害が酷いのも伝わる。
損害についてわかっているのならば、僕は逆に先輩を心配してしまう。僕を心配するよりまず自分の身を案じてほしいところだ。
思わず零れた苦笑いを誤魔化すように、改めて前を向いて。
「というか、さっきから気になってるんですけど、ハイリスクって言うのは」
「あー、そうやな。それも踏まえてフィクロの大いなる脅威について説明するわ。参加せんにしても、情報は持っておぉた方がええし。妹のほう熱中してもうて話し終わる気配あらへんしな」
先ほどはこっちの話に反応して一時的に話に割り込んでは、直ぐに話を戻していたようなので熱中しているという点は間違っていない。たった一体の敵で熱く考察できるのは見ていて驚きが溢れてくる。
それだけフィクロへの熱があり、強敵を倒す術、対策を考えれるのは流石というべき能力だと思う。
関心は一度しまって改めて熟練者からフィクロについて説明を受けることになった。
曰く大いなる敵は大まかに分けて五つ存在する。
挑戦者のステータスを食べて成長する『デリーター』
挑戦者を複製して操る『マリオネッタ』
魔を吸収し支配する『ネクサス』
陸海空を主食とする『グリード』
毒物を操り苦痛を与える『イズリーズ』
これらの名がついているものが大いなる敵。定期的に大いなる敵が五種類の中から一体追加される。中には過去に登場した大いなる敵が再登場し、上方修正されていたこともある。
次に、ドロップ品のフィギュア。過去の大いなる敵からは、確定ではないが上位の職業フィギュアがランダムでドロップ。上限は十体。
新しく追加された敵からは上級職以外に極稀に敵に模した職がドロップすると噂になっているが、未だその職業は発見されておらず、新規で追加される職は最大で五体分しか用意されない。
フィギュアがドロップしたときは、イベントリに入ることはなく、後日フィギュアを入手した時にログインしていたオンラインベースに届く。
「とまあ、大いなる敵はこんな感じやな。他にも何度も挑戦可能の魔王、伯爵もおる。大いなる敵よりかなり弱いから、始めたての初心者はそれに挑戦するのがおすすめやで。まあそれを倒さないと大いなる敵への挑戦権は貰えへんのやけどな」
「じゃあ、僕は先にそれを倒さないとなんですね」
「せやで。ソロ専用やから大変やけど、トーカがいたとはいえウチらを倒したんやから多分行けると思うで。なんたってウチらはタッグパーティで右に出るモノはおらんからな」
「私が戦った時は基本シーカー単体だったから、エルルのことはびっくりしたけど実力は本物だよ」
再び横から聞こえた声。今度はしっかりこちらを向いて言葉を発しており、目を向ければタブレットがなく、敵に関しての話が終わったと感じ取れた。
そのまま先輩が悪戯な笑みを浮かべて続けた。
「来週末、私と志羽姉妹の三人で今回の敵の偵察と討伐をすることになったんだけど、その間ミカミ君は魔王の討伐。場所は当日案内するとして、明日から鬼になってみっちりレベリングするからね~」
「ご愁傷様やな少年」
「き、厳しい、姉から聞いた……み、水上君、がんば、って……」
二人の反応を見て心配が込みあがる。どうやら僕は明日からゲームで三途の川の淵を歩くことになったようだ。




