エピローグ 中秋の名月
今日は九月二十一日。中秋の名月だ。秋月学園の私有地の山には神社があって、この世界の神様が祀られている。
「ふむ、これが月見団子か」
もふもふと口に頬張る白い狐耳の美形は月下白露様。この世界の神様だ。
彼はプログラムAI AKIのスペアであり、バックアップだ。
プログラムAI AKIに修正できない不具合が生じた時に、代わりを担うために用意されていた代打だったのだ。
空には満天の星が瞬き、人工的な光の少ないこの山の頂上からは澄んだ空気を感じさせるほどに鮮やかな星空が見える。
そして夜空で絶対的な存在感をはなつ月はまどかで柔らかく印象的な光をたたえていた。
「月が綺麗ですね」
私が思わずほう、とため息をつくと、月下白露様は柔らかく笑った。
「それは、告白されているととって良いのかのう」
月下白露様は優しい手で私の頭を撫でるとそのままの動きでそっと髪を梳いた。
その撫ぜる手つきが甘やかで私は思わず時が止まったかのような錯覚を受ける。
降るように落ちてきた口づけが私の額に落ち、目元、耳元をくすぐった。
まっすぐにこちらを見る瞳には優しい色が灯っている。
乞うように見つめられ、私はゆっくりと目を瞑った。
しっとりとやわらかなものが唇にふれる。
月に照らされて淡く伸びた二人の影は、地面に伸び仲睦まじく寄り添った。
さやさやと風にゆれる薄木だけが二人の逢瀬を見守っていたのである。
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