ありがとう神様!
「お前……モブのくせに出張ってこないでよね」
手を止められたAKIの目は血のようにどす黒くなっている。
月下白露様はAKIを見て、その金色の瞳を眇めた。
「そなたは……? なぜそのようなことになってしまっているのだ?」
ああ、可愛い。こんな緊迫感のあるシーンを癒しに変えてしまうなんて。
ありがとう神様! もう死んでもいい!
「……早く自己修復を掛けた方が良かろうに」
ん?
「嫌だ! 俺は消去されたりなんかしない! 闇と幸せになるんだ!」
何を言っているのだろうか? 私の聞いていた話と違う。
「俺は消えない!」
AKIは必死だった。その表情は真に迫っていて。いまにも泣き出しそうだった。
そんなAKIの姿を見て月下白露様はふむ、と考え込むようなそぶりをみせた。耳はひくひくしてしっぽは低く揺れた。
超絶可愛い。
「ふむ。そうはいってもすでに彼女のハッピーエンドは確定しておる」
ふわりと月下白露様がその白い装束で私を包み込んだ。
清浄なやわらかい香りが私の体を包み込む。
そのまま優しげに目を細めて月下白露様は耳元で囁くかの声音で言った。
「我が、闇を幸せにするからのう」
いやだ、いやだ!とAKIは悲壮な叫びをあげた。
彼は自分の最期を悟っているかのようだった。
私にのばされた腕がぼやけて消える。
AKIの姿は水面に映った月のようにだんだんと形が揺らぎ、朧月のように儚く薄くなり、夜の闇に紛れてすうと滲むように消えていった。
後に残るのは静寂と、夜の闇だけだ。
私はただただぽかんとして、月下白露様の腕の隙間からその最期を見ていたのだ。
ふと顔を上げると私の頭上には月下白露様の優美な貌があり、その優しいつり目の金色の瞳が私を映していた。
彼がほう、とついた安堵の息にはふわりと白露の気配がする。
「まったく、そなたはいつも危なっかしいのう」
優しい手が頭にのせられ、私の心臓がどくんと跳ねた。




