ダブルス
放課後のゲームセンターにて私はため息をついた。
(何かと思ったら音ゲーだった)
珍しいことに音ゲーでダブルスだ。
この世界の新作の台では二人でできるものもあるらしい。
(私あんまり詳しくないんだけど……)
正直やったことは、ほとんどない。
「ああ、大丈夫。私も一回試しにやってみたかっただけだ」
あの、言葉足りなさ過ぎて、誤解されないよう気を付けてくださいね。
目の前の音ゲーの台は幅が二人分あり、それぞれに操作台が付いていて、一人で二人分の動きをするのは距離的にも難しそうだ。おそらくカップル用に設計されたのだろう。ということは音ゲー自体不慣れな彼女もいるだろうから難易度はそんなに難しくないかもしれない。
「じゃ、いくよ」
特に説明もなくぶっつけ本番だ。あの、あなたみたいに誰もがすっと理解できるとは思わないでくださいね。緑夜 樹は涼しい顔をして難易度選択画面をタップした。
ピピピ【難易度 難しい】
(いきなり!?)
あれよあれよとカラフルな光の玉が画面上から下に向かって流れてくる。目にもとまらぬ速さだ。もはやAが何色でBが何色でCボタンがどこにあるのかわからなくなってくる。夢に出そうだ。夢の中で大量の光の玉に押しつぶされて気を失う姿が見えるようだ。
ピピピ【残念! クリア失敗!】
どうやら私がかなり足を引っ張ったようだ。緑夜 樹は涼しい顔でパーフェクトを出している。このゲーム、カップル別れるだろうから廃止にした方がいいよ……。
「すみません……」
私の絶望した顔を見て、緑夜 樹は一瞬驚き、破顔した。彼の歯がきらりと見える。
「そんな気にしなくていいのに。君も楽しんでくれたならそれでいいんだから」
彼の仏頂面が崩れると、子犬のように人懐こい笑顔があらわれた。
(これは……なかなかの破壊力……!)
地味とか思っててごめんなさい。あなたもしっかり攻略対象として人気が出そうです……。
「あっちでぬいぐるみ取ってあげるよ。元気出して!」
強引に腕を引かれて、かわいいぬいぐるみを山ほど取ってくれた。本当に得意なんだなあ。
「これは重心さえわかってたら簡単だからね」
緑夜 樹は少年のようなきらきらした顔でどこか得意げだ。
(あれ……何しにきたんだっけ)
いつの間にかデートになっていた!攻略対象おそるべし。




