さっき死んだな、私
(桃山先輩のシャーペンが、ある)
拾い主のもとに帰ってくる呪いのシャーペン、というわけではなさそうだ。
ついさっき受けたはずの授業を受けながら、こっそりため息をつく。
(これはさっき死んだな、私)
すっかり忘れていたが、死んだらセーブデータまで戻るんだった。
巻き戻った時間が短くて良かった。これで始業式に戻されてたらうんざりしてた。
それにしても入学して一か月で死ぬってはやすぎませんか。
不幸の星のもとに生まれてるんだろうか。
……
昼休憩時、周囲に細心の注意を払って進む。
こっそりBクラスを覗くと桃山先輩が、いる!
「あれ。君」
両手に本の山を抱えて立っているこの茶髪の青年は緑夜 樹だ!さっきはよくも殺してくれましたね!
(というかあなたもBクラスなんですね)
Bクラスに偏りすぎてはいないだろうか。
「どうしたの?」
「落とし物拾ったんです」
そんなに本を抱えていてよく私に気付いてくれましたよ。
「……ちょっと待ってて」
緑夜 樹は両手に抱えた本の山を彼の机の上に置くと引き返してきた。前の方の席なんですね。
「で、落とし物ってそれ?」
緑夜 樹は私の手にある桃山先輩のシャーペンをまじまじと見る。
「はい、桃山先輩ので……」
「おーい、桃山~!」
緑夜 樹は間髪あけずに呼びかける。
本人を呼ぶ、なるぼど合理的ですね!
緑夜 樹の大声に気が付いて、ぱたぱたと桃山先輩が走ってくる。ああそんな。極力会わないようにしてるのに。
「落とし物だって」
「えー! 探してたんだあ! ありがとう~!」
桃山先輩はいい笑顔だ。守りたい、この笑顔。
「ほんとありがとう! ねえ、なんていう名前なの?」
「いいえ、名乗るほどのものでは」
個人情報だめ、ぜったい。
「こいつは一年Aクラスの黒木 闇だ」
あああ、そうでした!緑夜 樹には個人情報おさえられてましたね!
「そっか! 闇ちゃん、ありがとう!」
またね!と笑顔で手をふって帰って行った桃山先輩はまるで台風のようだ。
(で、緑夜 樹は戻らないんですね)
どうしたんだろう。私もすみやかに帰りたいのだが。……うん、帰ろう。
「ありがとうございました。では」
踵をかえしてすみやかに立ち去ろうとする。
「ああ、ちょっとまって」
緑夜 樹はその澄んだ緑の目でこちらを見つめながら言った。
「ちょっとつきあってくれない?」




