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桃山先輩のシャーペン


 無事に(?)春の遠足は終わった。とりあえず桃山先輩の安全は確保された。この調子で引き続き桃山先輩を害することのないように気を配っていきたいところだ。といっても学年が違えば遭遇しない。……はずだった。


 (ああ、まさかの桃山先輩のシャーペン)


 以前衝突したときに手提げのサブバックの中に飛んで入ってしまったのだろう。

 今頃になって発見された。

 ゆゆしき事態だ。

 学年もクラスも違う桃山先輩にどうやって安全に返せるというのだろう。

 

 (そもそも何クラスだったっけ)


 もう前回の記憶なんてほとんど残っていない。


 かくなる上は二年のクラスをこっそり見て回って桃山先輩のクラスの人に渡すしかない。


 落とし物として届け出ても本人のもとにたどり着くかわからないし、万が一シナリオの強制力にはめられて私が盗ったことにされても困る。


 受け取った人もわざわざ拾い主の素性をいちいち訊いてきたりしないだろう。もし私の名前を訊かれても謙虚にふるまって名前を答えなければいいのだ。


 二年生の廊下をどきどきしながら進む。


「やあ」


 ま た き み か


 秋月あきづき しろがゆっくりとこちらに向かって歩いてきた。

 彼は眩しいくらいに綺麗な顔立ちをしている。


(ついこの間も会いましたよね)


「どうかしたの? 二年生の教室に用事でもある?」


 ああでも、知ってる先輩に託した方が安心できるかもしれない。


「実は落とし物を拾ってしまいまして。桃山先輩って何クラスかご存じないですか?」


 遠慮がちに尋ねると、思った以上に目を見開かれた。


「ええ、俺に会いに来たんじゃないんだ」


 そりゃそうですとも。


桃山ももやま るなならBクラスだよ」


 ほら、すぐそこの、と指し示す方を見るとここからもう数メートルだ。

 流石にシャーペンを預かってはくれないらしい。それはそうか。


「どうもありがとうございます」


 おそるおそるBクラスに向かおうとすると、くいと腕を引かれて立ち止まる。


 ん?


 見ると秋月あきづき しろがもの言いたげな瞳でこちらを見ている。


 なんなんだ、これは、イベントか?


「今、行かない方がいいと思うよ。もう授業始まるし」



 親切か!


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