赤月 烈(あかづき れつ)
(な ん で こ こ に !)
唖然とした。推しが消えて、攻略対象が来た。
一体どういうことなのだろう!
(桃山 月を探しに行ってください)
と思ってはっとした。そうだ、桃山先輩が迷っているはずがなかった。
「大丈夫か、君。今総出で捜索している。心細かったろう」
さすがのメインヒーロー、俺様なのに嫌味が一切ない。
艶のある漆黒の髪は捜索のためかぼさっとなっており、ルビーレッドの瞳は気づかわしげだ。こちらを見つめる視線がいたい。
「大丈夫です。ありがとうございます」
私が思わず引きつった笑顔で応じると、赤月 烈はその顔を顰めた。
「なんだその足は! 血が出ているではないか」
見ると確かに草木でひっかけたのか傷ができている。そういえば迷子になったときに茂みをかき分けて進んでいたのだ。さっきまで輝く推しがいたものだからまったく痛みが気にならなかったが、気が付くと血が出ていた。
赤月 烈はおもむろに膝をつく。
「つかまってろ」
有無を言わさず、ふわりと横抱きにされた。これはいわゆるお姫様抱っこだ。
(強引すぎる!)
さすがメインヒーロー。ためらいなく姫抱っこしてのける。まるで騎士かなにかのようだ。見上げると、さらりと流れる黒髪に陽の光が反射する。
「合流するぞ。みんな心配している」
かくして、ヒロインのかわりに私が救出されてしまった。赤月 烈は私を抱えたまま山をずんずん進んでいく。迷いのない安心できる足取りだ。
お姫様だっこされながらそのたくましい腕の中に不覚にもどきどきしてしまった。前のゲームの中の黒木 闇は赤月 烈に恋でもしていたのだろう。彼女が闇堕ちしていたのはおそらく彼が原因ではないだろうか。




