表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/35

プロローグ


黒木くろき やみ! お前を桃山ももやま るなをいじめた罪で退学にする!」



 全校集会で私は生徒会長の赤月あかづき れつに断罪されていた。


 彼の血のように赤い瞳は怒りに燃えている。親の仇かのように憎々し気に眉間にしわを寄せているのは、彼が主人公である桃山ももやま るなを愛しているからだろうか。



 しんと静まり返った体育館で、私は立っていた。



 徐々に周りの生徒はひそひそと陰口を立てる。

 明るく元気で人気者の桃山ももやま るなはみんなから愛されていた。


 私は一人きりで立っているような感覚に陥る。


 あれ。


 どうして、私。


 彼女をいじめていたんだろう?



…………


 そして意識を失った。おそらく卒倒したのだろう。

 気がつくと、白い何もない空間にひとり……。



「あれ、ここは?」


 

 私、黒木くろき やみはさっきまで体育館の全校集会で、クラスメイトの桃山ももやま るなをいじめた罪で、断罪され退学するところだったはずだ。

 

私の近くには、精霊のような丸い球がふよふよとウィスプのように浮いている。



『それはあなたの巻き戻る時間の中でのバグでしょう』



 妙に機械的な声が、自動翻訳ソフトのような口ぶりで語り掛けてくる。

 随分と分かりづらい言い回しだが、言いたいことはなんとなくわかる。



「バグ?」



 私が尋ね返した刹那、脳内に直接情報が流れ込んできた。どうやら声の主は説明することを放棄したらしい。



 流れてきた情報によると、私のいままで現実だと思っていた世界は実は乙女ゲームの中だそうだ。


 私はその中のメインヒーローの悪役令嬢だ。



 ……そしてこのゲームはバグを抱えているらしい。



 つまるところ不良品だ。


 そしてこのゲームの人工知能AIで、ゲームマスターの『AKI』というのがこの丸い球の名前らしい。



『バグはあなたを移動させるでしょう。それは大きな死です』



 相変わらず言い回しが分かりづらい。

 ええと、私が死んだらセーブデータまでループするそうです。



『ハッピーが止まりに向かうでしょう』



 つまり私がハッピーエンドになったらループが終わるのね。

 私は光る球をあきれた目で見上げた。



「……貴方が一番心配だわ」



 正直ゲームマスターが一番バグってるように見える。大丈夫だろうか。



【ロードしています】



「あの、何かきこえるんですが」



『もうすぐあうるね』



 もはや言えていない。




 ああ、もう、心配しかない!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ