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過去の呪縛  作者: ミルクティー
7/10

仮面の内側

 蒼輝君は不思議な人です。

いつもは教室の隅っこで縮こまっていて基本一人。人と話すのが苦手で初対面だとどもって会話どころではなくなることが多い。うちの学校では成績上位20名は掲示板に名前が張り出されるんだけど一度も名前が載ったことはない。だから大して頭は良くない人かなって思ったけど前の一件で私の想像を遥かに超えた方法で問題を解決に導いた。その上運動に関しては部活には入っておらず、体力テストでは目立ってないことからも高い記録は残してないみたい。だけど高西が何が起きたかもわからないほどの速さで攻撃したり、その高西を一撃でダウンさせた攻撃をくらっても大丈夫だったりとホントに同じ人間か疑うほど存在だ。高西ダサいな。何故これほどまでに凄いのか聞いてみたら教えてくれなかった。正直めちゃくちゃ気になる!

「あのさ…」

「うん?」

蒼輝君がこちらを見つめる。

「昨日はありがとね。守ってくれて。」

「茜だって俺のこと守ってくれたじゃん。お互い様だよ。」

すぐそう言う。結局昨日は私が前に出なくても蒼輝君ならなんとかできてたんだと思う。

「それにしてもすごいね…あれだけ強い古賀さんを退かせるなんて。ハハハ…」

我ながら下手くそな作り笑いだ。他の人が相手ならもっと上手く笑えるんだけど、蒼輝君に相手には何故か上手く笑えない。

「あぁ…あれはただのハッタリだよ。俺が勝てるわけないじゃん。」

「え…?でも蒼輝君の威圧が…」

私の話を遮って話を始める。

「だってさ、俺高西にボコられてケガまでしてたのに古賀さんは高西の攻撃くらってびくともしてなかったんだぜ?勝てるわけないじゃん。」

言われてみればそう考えることもできるけどあの時の空気の重さは異常だった。古賀さんもビビってたし。

「そっか…」

でもそれ以上はやっぱり聞けない。嫌われるかもって思うと聞くことができない。

「じゃあ今日のお昼私古賀さんと食べるから。一緒に食べたかったら言ってね。」

そう言って話を終わらせる。やっぱりちゃんと知っておきたい。でもどうやったらいいんだろう?



 はいやってまいりましたぼっち飯。いや〜今となっては懐かしいとすら思えるぼっち飯。

今日は珍しく茜が強引にお昼を一緒しなかったからゆっくりご飯が食べれます。これは久しぶりの休暇と思ってもいいと思うしゆっくり満喫するぞー!

………

……

「何やってんだ俺…」

一人で盛り上がって一人で盛り下がると言うすごくバカなことをしているが俺はいたって正常だ。

まあ最近は茜と食べることが当たり前でそれに慣れちゃったからな。まあちょくちょく一人で食べようとはしてるんだけどね。茜が許してくれないんですよ。

………

……

あれ?もう食べ終わったのか…早いな。一人だとただ黙々と食べてしまうからか食べる速度が速い。時間は結構あるな…図書室にでも行くか。



 図書室にやってきました。ここは静かでとても過ごしやすい場所です。

確か最近面白そうな本が入ってたしちょっとそれを読もうかな?

「あれ?蒼輝君来てたんだ。」

後ろから声をかけられる。振り返ってみるとそこには一人の女の子が立っていた。

「あぁ真部。ちょっと最近入った本を読もうかなと思ってね。」

「へぇ〜珍しいね。」

珍しい?何がだ?

「何が珍しいんだ?」

「あなたなら気になった本は入ったその日に読むでしょ?」

良く見てるもんだ。ちょっと怖い。

「全く…人間観察も程々にしとけよ。俺は自由研究の研究対象じゃないんだから。」

「はいはい…ごめんなさいねー。」

こいつ…止める気ないな。

「まあ最近色々とあったんだよ。」

最近ほんとに色んなことが起きすぎだ。俺は教室の隅っこで縮こまってる程度がお似合いだと言うのに。

「あんたのその自分のことを全く話さないのなんとかならないの?」

「俺のこと話してどうするんだよ?興味を持ってもらえるのは嬉しいが知ったところで意味なんてないだろ。ただの自己満でしかない。」

別に自分のこと知って欲しいとは思わないし、なんなら知らないで欲しい。特に茜だけには。

「まああんたの過去を知ってる私が一応は言っておくけど、少しくらい自分の腑を見せ合うことができる相手がいた方が楽だと思うよ。」

「…そう…だな。」

真部が言うことは正しいのかも知れない。だけど自分のことを話しても仕方ないんだよ。もう終わったことなんだから。

「この本借りていくな?」

そう言い目的だった本を真部に渡す。

「はいはい…そうやって都合の悪い話はすぐ終わらせる。」

そう言いながら真部は本についているバーコードをバーコードリーダーで読み取りパソコンに記録する。

「ありがとな。」

さて、本当だったら図書室で読むつもりだったが少しいづらくなったので別の場所に移動する。



 な…何故だ…俺はちゃんと確認したはずだ…

財布の中には間違いなく1万円を入れていた。使ってもいないのにお金が減っている!?

「よし…殺すか!」

犯人を見つけ次第ぶっ殺そうと思います!全く誰だよ俺の金を取る奴は!!!

そう思いながら自販機を後にする。誰だ?高西か?高西だな!よし殺そう!全く…人の金を取るとは許せん!そんなことを考えてると、今朝不良に絡まれリンチにされた後財布の中身全部取られたことを思い出した。

あ…高西悪くないじゃん…なんだよ紛らわしいやつだな。殺すか。というかカツアゲって今時するやつってまだいるんだな。昔みたいなガチガチの不良とか今の時代ほとんどいないように見えるけど。まあ…お金はまたATMから落とせばいいか。カツアゲをよくされるからあんまり持ち歩かないようにしてるけど最低限1万は持ってないと生活は難しいからカツアゲされた時1万は持ってかれるの辛いな。

不良とかロクな奴らはいない。不良なんてクソだ。全員更生する気がないなら消えて仕舞えばいい。特にアイツは…

というかここまで無駄足になってしまった。10分の休みを無駄にした気分は最悪だ。仕方ない…教室戻ろ。



 「最近近くに暴走族が多いらしいです。危険ですので寄り道や遅い時間帯に帰らず迅速に帰宅してください。部活も当分は休みになる予定です。」

どうやら近くに暴走族がいるらしい。俺の財布も危険だ。ここは迅速に帰宅することに賛成だ!俺はもう帰らせてもらおう!

「待って。」

この声は…間違いなく茜だ。ちょっと怖い。

「暴走族が出たって言うのに女子を置き去りにして一人で帰ろうなんて人としてどうなの?」

言い方!なんかめっちゃ俺悪者みたいじゃん!ちょっと否定できないけど!

「いや…ほら!アレだよ!先生も迅速に寄り道せず帰宅しろって言ってたじゃん!だから真っ直ぐ寄り道せずに帰ろうかなって。」

あ…顔が赤くなってきてる。やばい絶対怒られる!

「こう言う時くらい…そっちから一緒に帰ろうって言ってよ…」

え…予想外の反応に困惑する。ほのかに頬を染め視線を逸らす動作は俺の思考を停止させるのに十分だった。

「わ、悪い。一緒に帰ろ。いや、一緒に帰らない?暴走族いるみたいだしさ。」

我ながらキモい。人を誘うとかやったことねぇーよ!

「そう言う事じゃないんだけどな…」

小さな声で呟く。一体どう言う意味で言ったと言うのだ?というか古賀さんはどうしたんだ?あの人めっちゃ強いからいいボディーガードになってくれると思うんだけど。でも今はそれを口にしないでおこう。何故か今は俺が一緒に帰るべきな気がする。

「帰るか。」



 「ねえ家泊まってもいい?」

「ゴブフォ!!!」

え?今なんて言った?気のせい?気のせいだよな?そうだよな!まさか茜がいきなり俺の家に泊まってもいいなんて聞くわけないし…

「ねえ…ダメかな…?」

嘘だろ…マジで言ったのか?いやいやまさかまさか。そんなはずはない。だって俺だぜ?ありえねぇーって。

「ねえ聞いてる?家に泊めて欲しいんだけど。」

や、やばい泊めていいのか?女の子を…それも茜を!?もし泊めたら学校中の男子に殺される。

「な、なんで家に?」

とりあえず理由を聞いてみよう。ちゃんとした理由かもしれない。仕方ない理由ならきっと半殺し程度で勘弁してもらえるはずだ!

「暴走族が出たでしょ?ちょっと怖いの。お父さんは私のこと守ってくれるとは思えないし。それに…」

言葉が止まる。なぜかそれ以上は何も言わなくなった。

「まあそういうことが理由なら半殺し覚悟で泊めるよ。」

まあ怖がっている女の子をほったらかしにはできないよな。

「なんで半殺し?」

何も聞くな。

「じゃ、じゃあここから家近いし、着替え取って来るね。」

そう言って茜は走って家に入って行った。まあ部屋は空いてるし人1人泊めることができるくらいの余裕はある。

「コード1228。」

後ろから声がした。コード1228…間違いない。アイツだ。

「コード3089。UYK94Q@(何のようだ?)」

「0Q@EIUZ*WE>=@4C4C@HK3QJFL8*4KDWYK4KVSLQ@」

「UI?(なに?)」

「T@YF@+9」

そう言った後、その声の主はどこかへ消えた。まさかアイツが直接教えに来るとはな。それだけ深刻な事態と言うわけか。



 「お待たせー!待った?」

「いや、むしろ都合が良かったよ。」

「え?」

なんか反応が変。都合がいいってなに?怪しい…

「というかなんか荷物多くね?」

「気にしない気にしない!」

家に着いてからネタバラシしよっと。

「じゃあ蒼輝くんの家にレッツラゴー!」

好きな人の家に泊まれるなんて楽しみー!

なんだかんだ言って泊まること許してくれるなんてやっぱり…あるのかなー!

「きゃーーーー!」

「お、おう…どうしたんだ?」

やば!

「べ、別に何でもないよ。それより早く行こ!」

「まあ俺も早く家に帰りたいし。さっさと帰りますか。」



 「おっじゃまっしまーす!」

テンションたか…声おっき…超かわいい…

「まあ適当に上がってくつろいでいいよ。」

とりあえず客人だ。丁重にもてなそう。

「蒼輝くんの部屋どこー?」

俺の部屋?強いて言うならこの家全部かな。まあ俺が寝てる部屋を言っておけばいいか。

「2階登って右奥の部屋。」

「オッケー!じゃあ恒例の如何わしい本が無いか調査だ!」

そんな恒例行事があってたまるか。まあどんだけ探してもそんなもん出てきはしないけど。

「ちなみにその隣の部屋を今日は使ってくれ。」

「泊まるのは今日だけじゃないよー!」

は…?え?ちょ?ん?どゆこと?

「これからここに高校卒業するまで住もうかなって思ってるんだけど。」

…は?

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「大丈夫!お父さんにはちゃんと許可とってきたから。」

言い訳ねぇーだろ!高校卒業って後1年以上あるんだぞ?ま、まて、落ち着け俺。だからあんだけ荷物が多かったのか。

「これからのこと考えると楽しみすぎて寝れないかも!」

俺はこれからのことを考えると怖すぎて寝れない。

「じゃあよろしくね?ところでご両親はいつ帰って来るの?」

「あぁ…それは…帰ってこないよ。」

「あ、もしかして夜勤とか?」

「いや…俺…両親いないんだよ。」

真部沙希

身長155cm。体重を聞いたら紳士ではない。髪型は三つ編みの黒髪。眼鏡をかけており前髪で少し目を隠している。

人間観察が好きで良く人を見ており、蒼輝の過去を知る人物。

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