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過去の呪縛  作者: ミルクティー
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高西隼人

 さて、ぼっちの昼休みの過ごし方を知っているだろうか?

便所飯?あれは臭いがキツくて相当清潔なトイレではないとできない。

何故そんな事を知っているのかって?

何も聞くな。

正解は…

「ここは人もいないし、風が気持ちいい。この木が自然を感じさせてくれるのもいいな。」

正解は人がいない上に居心地が良い所だ。

つまり、校舎裏とか体育館裏、日陰のできている人目につかない木の下とかだ。

とは言っても俺の場合はだけどね。

それにしても昼休みって一番長い休み時間の割には授業1時間分よりも時間が短いんだよね。

これも社畜として生きていくためのスキルを叩き込まれているって事なのか?

働いたら働いた分の休みは必要だと思います。

俺はサンタになりたい。

今日は茜と放課後一緒に買い物に行く事になっている。

ちなみに茜のグループの人たちも一緒だ。つまりは高西も一緒だ。

マジか…行きたくない…

何故か勝手に行く事にされていた。もちろん断ったが、茜の後ろに鬼が見えたので行く事にした。

はぁ…嫌だなぁ…




学校も終わり放課後となりました。

俺が取る行動は茜達に見つからずに学校から出ること。

そして次の日に、

『ごっめーん!忘れてたテヘ』とすることで怒られはするだろうがなんとか許されるであろう。

良し!茜が背中を向けた今がチャンスだ!

「俺の勝ちd」

「ねえ。何してるの?」

肩がものすごい力で抑え付けられている。恐る恐る後ろを振り返るとそこには…

「とても急いでたみたいだけどどうしたの?」

鬼が立っていた。終わった…

「遺言書を書きたいので帰らせてください!」

「何馬鹿なこと言ってるの!」

頭にゲンコツが落ちてきた。

正直痛くはないがここは痛いと言っておこう。

「いってぇ…」



「えぇ…」

声に出してしまうくらいでかいなこの店。どうやら服屋らしいのだが、複合施設並みの大きさあるぞこれ。

ていうか、これすぐには帰れないやつだな。

「私あっちの服見てくるね。」

そう言って茜が指さした方に向かう。

俺としては話せる相手が茜しかいないので着いて行きたかったのだが、茜が向かった先が女性用衣服のスペースだったみたいで下着が置いてある。

やべー気づいて良かった…明日から変態のレッテル貼られて学校でくらす羽目になってたわ。

「そんじゃ俺はスニーカー見たいからあっち行ってくるわ。」

そう言ってなんかよく知らん男が消えた。同じクラスだけど名前わかんねぇ…

「じゃあ私たちはあっち行こうか。」

そう言って女子二人が消えた。同じクラスだけどやっぱ名前わかんねぇ…

「…」

「…」

気まずいぃぃぃぃぃ!

なんで高西と二人っきりになっちゃってんの!?

「あのう…えっと…いい…天気っすねぇ。」

何言っちゃってんの俺?

「なぁお前。」

「は、はい!?」

やべー少し声が変になった。

「ビクつくんじゃねーよ。こっちが惨めになんだろ。」

知るか!あ、あと…別にビクついてねぇーし?か、勘違いすんなし?

「お前さ…本当はすごいやつなのになんで雑魚のフリしてんだ?」

ざ、雑魚…

やっぱり俺そんな風に見えますかね?ていうか口悪いな変わらず。ある意味安心するわ。

「別にフリしてるわけじゃ無いよ。ただの素だ。」

「じゃああん時のあれは演技でもしてたのか?」

何が言いたいんだコイツ。あん時で通用すると思うな。ちゃんと日時と内容を事細かく話せ。

まあコイツが言ってるのは多分俺がコイツに楯突いた時だろう。

通用しちゃってるじゃん。コイツ天才か?

「そうだな…演技かもしれないしそうじゃ無いかもしれない。そもそも本当の自分なんて周りは知らないんだから、どれが本当の自分であっても別に大した問題じゃないだろ。」

「お前変わってるな。」

「自覚はある。変わってなかったら今頃友達の一人や二人はいる。」

悲しい現実を押し付けてくるんじゃねぇーよ。ちょっと悲しくなっただろ。

「俺、兄がいるんだよ。4つ上の。」

あ?なんだいきなり?

「兄貴さ、スゲェーんだよ。俺なんかよりもずっと。」

「はぁ…」

なんでコイツの兄貴自慢聞かなくちゃならんのだ俺は。

「俺よりも強くて勉強もできて、お前よりも絶対強い。」

お、おう。すごくどうでもいい…

「そんでもって人当たりもいいからめっちゃモテる。」

「お前の真反対だな。」

「チッ、わかってるよ。」

自覚あるんだな。意外と自分のことわかってるわけか。

「だから憧れたけど、嫉妬もした。なんで俺はこんなに頑張っても近づくことさえ出来ないのかって。」

コイツも人並みの苦労はしてるわけか…

誰だって1番になりたい。せめて目に見える範囲の中だけでも。しかし、現実は残酷だ。

何かしらの、ちょっとしたことの中でも自分の身直に自分以上の存在がいる。

たった一つの事の中だけでも1番にすらなるのは難しい。だから自分を見失う。何故自分がいるのか分からなくなる。

なんのために生きてるのか、未来を考え絶望する。だが、そんな事に意味なんてない。

承認欲求の塊である人間という欲深い生き物は、望みながら努力はしない。

努力をしているつもりになって、自分は誰よりも頑張ってる、辛い思いをしている気になって、それでただ嘆く。

アホらしい。

だが、コイツは違うのだろう。努力は結果としてちゃんと出ている。だが、それでも目標には届かない。

その苦しみを俺は知っている。

「努力をできてるんだ。少なくともお前が折れない限り希望はあるさ。」

「どうだろうかな…努力しても天才には勝てないんじゃ無いかなっていつも思うよ。」

「そうだな…」

「お前に同情されるのは癪だな。」

えぇ…理不尽…

それから俺は高西と1時間ほど会話もせずただみんなの買い物が終わるまで待った。



「おまたせー。」

「おそいよー!」

やっと最後の人が帰って来た。茜だ。ていうか服買うだけでこんなにも時間かかるもんなの?

「あんまり時間無かったからまだ一つしか選べてないよ。」

えぇ…十分時間あったと思うよ?

最近の若者はわからんなぁ。

「それじゃそろそろ帰るか。」

「はーい!」

やっと帰れるな。てかなんで今日無理やり連れてこさせられたんだ?結局なんもしてないけど。

それとも実は何かしらの目的があって、知らず知らずのうちに茜の思惑にはまっていたのでは?

最近の若者はわからんなぁ。



マジかよ。

帰り道の途中で次々と人が減っていったのだが…

「あ?」

なんで高西が最後に残っちゃうかな!?おかしいじゃん!

絶対仕組まれてるよ!なんかこうしたら面白そうとか思った奴がそう仕組んでるようにしか考えられない!

「なぁ。」

「ん?」

急に声かけてきた。こいつ人と会話するときいつもこんな感じなのか?俺レベルの会話力だな。つまりレベル0だ。

「あの時は悪かった。」

なんだよいきなり。こいつ素直に謝るタイプだっけ?

てかあの時で通用すると思うなよ。ちゃんと日時と内容を事細かく話せ。まあコイツが言ってるのは多分コイツが俺を殴ったときだろう。

通用しちゃってるじゃん。

コイツ天才か?

「別に気にしてないさ。お陰様で友達が1人できたしむしろラッキーだったな。」

「そう言ってもらえると助かる。だがまぁ、何か償いをさせてくれ。」

おいおいコイツこんなキャラだったか?ちょっとかっこよく感じてきただろ。

「そうだな…じゃあ茜が困っていたら助けてやってくれ。」

「茜…」

「聞いてるのか?」

「あ、あぁ。わかった約束するよ。」

「じゃあ俺はこっちだから。」

そう言って俺は指をさして伝える。

「そっち俺と同じ帰り道だな…」

…マジかよ。

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