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永久の勇者アヴァロン  作者: アベワールド
第4章 思い出の勇者
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第一三話「勇者 VS 子供 勇者の逆襲」

 事情を聴いた大人達……レンと桐生兄妹は揃って頭を抱えていた。

「り……理由は分かりました……どうやら私達にも非は有る様です……」

「しかし……」

 レンが銀色の眼光を真っ直ぐに正太へと向ける。

 ……残念ながら大人は、例え自分達に非があるとしても、言うべきことは言わなければならないのだ。

「真鍋正太君!」

「…………はい」

「いいですか? 鬼ごっこがしたくないという理由で、クラスメートを脅し怪物の元へと連れて行くのは言語道断です! その様な身勝手な行為は今後一切止めて下さい! あなたの生涯に()いてです!」

「………………!!」

「あなたはあなたのクラスメートの命を危険に(さら)しました。これがどうゆうことなのか、あなたは理解していますか? 彼等が死んだ場合、あなたは責任が取れるのですか? 子供であるあなたは一体どう責任を取るつもりだったのですか? 彼等の代わりは彼等以外にはいないのですよ! 命は代わりが効きません! あなたはそのことを本当に分かっているんですか? いいですか? 真鍋正太君、あなたの言動については、親御さんや学校にも通達します! これは私達・デュランダルからの最終勧告になります!」

 本人も重々反省していたのかもしれない……

 正太はクラスメートの前で堪え切れずに涙を流した。

 決壊した堤防が水を防ぐ手段が無い様に、会議室の机に彼の涙が止め処も無く零れ落ちて行く。

「……は……はい……す……済みませんでした……」

 正太は上擦る声で返事を返すのがやっとだった。


 正太が落ち着くのを待って、レンは子供達から今日の本題である怪物の情報を聞き出すことにした。

「それでは具体的な話を聞かせて下さい……あなた達が潜ったという洞窟と、あなた達が聞いたという女性の叫び声について……」

 そこで正太と俊哉の二人が、彼等が見た洞窟の構造、探検したルート、道の大きさや状態、質感や臭いなどについて供述した……そして最後に彼等が聞いた女性の声に関する話をした。

「よく分かりました。あなた達の話は、今後勇者が戦う時の有益な情報になります。怪物の討伐に御協力頂きまして、デュランダルのコーディネーターとして心から感謝致します」

 そう言うとレンは子供達に向けて深々と頭を下げた。

「あの…………」

 そこで先程まで口を噤んでいた京子が蒼い顔で口を開いた。

「叫んでいた女の人はその後どうなったんですか?」

「………………」

「教えて下さい……あの声が頭から離れなくて……」

「最近の女性の行方不明者を中心に、警察と連携して調査をしていますが……ゴブリンに捕まって帰って来た女性はまずいません……」

 レンのその言葉に子供達は一斉に下を向き黙り込んだ。

「あなた達が気に病むことは一切ありません……怪物にまつわる問題は全て私達デュランダルの責任です。その件に関してあなた達には何も責任は無いのです……実際あなた達がその場に残っても、残念ですが何もできることは無かったでしょう。あなた達は適切な判断をしたのです」

 レンが一言一言を噛み締めながら子供達を諭した。

 幼少期に人間の断末魔の叫び声を聞く……生涯耳にこびり付いて離れないかもしれないな……と直人は思った。

 子供の頃に刻まれた“傷”は生涯に渡って人間を蝕むものなのだ……そう……俺達兄妹が両親の死を聞かされたあの時の様に……

 ――両親の不慮の死。

 直人は両親の死を伝えられた後、目の前が真っ暗になりその後一月以上に渡って無気力の状態が続き、廃人さながらに日々を過ごしたのだ……現実を受け入れることができす、将来のことを考えると不安になり、子供ながらにうつ病になってしまったのである……兄である自分がしっかりしなけらばいけないと思っているのに、身体が全く動かなかったのだ…… 

 しかし唯に至ってはもっと深刻だった……精神的ショックから言葉を発することができなくなってしまったのである……直人と担任の先生、そして医師による精神療法で彼女が言葉を取り戻したのは、両親の死後三ヶ月後のことだった……

 直人はその時のことを今でも昨日のことの様に思い出すことができる。

 つまり、忘れることができないのである……


 人類を代表して怪物を討伐する組織――デュランダル。

 彼等はこの世界に巣食う怪物共を、未だに討伐しきれていない……

 多くの場合この世界でのトラウマは、怪物によって人の心に刻まれるのだ。

 そしてレンの言う通り、全ての責任はデュランダルの、そして勇者として名を連ねる者全員の責任でもあるのだ。

 ――直人は静かにその名も知れぬ犠牲者のことを思い黙禱した。 

 それから最後の締め括りとして、レンは子供達に向けて大切な質問をした。

 子供達が見たというゴブリンの容姿、身の丈、皮膚の色、その他ありとあらゆる怪物の特徴に関してレンは質問をしたのだった。怪物の特徴を絞り込み、デュランダルのデータベースと照合……作戦を練る時の参考にするのである。

 怪物の戦闘力や攻撃パターン、生態、性格……ゴブリンの性格は人間にとって鬼畜以外の何者でも無いことは、全地球人類の共有事項である……

 そして嗜好……そう、怪物は家畜はおろか人間さえも見境なく喰らうのである……

 レンは子供達から情報を引き出せるだけ引き出した後、最後に締めの言葉を述べた。

「長い間どうもありがとうございました。あなた方の情報は必ず怪物退治に役立てます!」

 “終わったのか??? 

 子供達は誰からともなくお互いに顔を見合わせると、ほっとしてその小さな肩を撫で下ろした。


 子供達が一仕事終えた時、一人何もしなかった……ネガティブな意味においては十二分に一仕事した直人は、一人会議室の片隅でしょげ返っていた……

 子供の扱いに関してはエキスパートを自認していた直人のメッキは、僅か数分で剥がれ落ちていたのである。

 ……ゴブリンだ!

 こいつらはゴブリンに違いない!!

 子供の皮を被ったゴブリン共が、デュランダルのヘッドオフィスに攻撃を仕掛けて来たのだ。

 殺られる前に奴等の方から殺りに来たに違いない……

 そうはさせるか!

 殺る前に殺るのは悪役ヒール勇者の専売特許だ。

 GO直人! GO直人! ってみてから考えろお――――っ!!

 直人の口からブツブツと危険極まりない独り言が漏れ出していた。

 彼は子供の思わぬ狂暴さに触れて人間不信に陥っていたのである……

 そんな直人の心情を知ってか知らずか? 正太が彼に近付き声を掛ける。

「まあ、そう落ち込むなよ……」

「………………………………」

「貴様みたいな臆病者にだって明日は来るさ……」

「……………………………!?」

「これからはもっと真面目に仕事をしようぜ……」

「…………………………………!?!?!?」

「一度や二度や三度の社会死が何だ! お前みたいな税金泥棒にだって明日は来るさ……又、スライムに負けさえしなければな……」

「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

「おい……分かったか!?……悪役(ヒール)勇者・桐生カス人!」

 そう言うと正太は皮肉な笑みと共に、直人に向けて握手の手を差し伸べた……

 “パチ――――――――――ン!”

 会議室に子気味の良い音が響いた……尚、本日二度目である。

 侮蔑の言葉と共に差し出された正太の左手を、今度は直人が弾き返したのだ!

 しばしの間、得も言われぬ不気味な沈黙がその場を支配した。

 次の瞬間、余りキレることの無い直人の中で何かがブチンッ! と弾け飛んだ…………

「俺の名前は桐生直人だあああああああ―――――――――――――!! よく憶えとけえええええええ――――――――――――!! 親に食わせて貰ってるガキがでかい口叩いてんじゃああねえぞおおおおおおおおおおおおおおお!! この腐れガキがあああああああああああああああああ!!」

「ひっ! ひいいいいいいいいい――――――――!!」

「舐めんなああああああ――――っ! (はら)ませっぞおおおおおおお! このクソガキガアアアアアアアアアアアアアアアア―――――――――――――――ッ!!」


 “サイコキネシス――――!!”

 ひとしきり啖呵を切った後、直人は正太の腹を内側からプッシュした…………

「うっひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい――――――――――!?」

 身体の内側から外側に押された経験があるだろうか!?

 子供のいる母親か? 内視鏡を入れた人間以外経験は無いに違いない……

 つまり正太には一切の免疫が無かった……

「こっ……子供が……子供ができるううううううううう…………」

 直人はその反応に邪悪な笑みで応えて見せた。

「勇者・桐生直人……コイツは……筋金入りの変態の中の変態だ……」

老若男女ろうにゃくなんにょ、種族を問わず孕ませるという噂は本当だったんだあああああああああ――――――――!!」

 正太は顔面蒼白の状態で立ち尽くしていた。

 その機に乗じて直人はサイコキネシスの力を少しばかり強めた……

「うわああああああああああ……お……俺、で……できちゃたのかあああ!?……か……母ちゃんに……母ちゃんに言いつけてやるううううううううううう! 憶えとけよおおぉぉぉ――――――!! この淫獣野郎がああああ――――――っ!!」

 正太は号泣と共に会議室を飛び出して行った……

 会議室には正太が最後に残した“淫獣”という言葉がステレオで反響を繰り返していた……

 当然の結果として、子供達は一瞬でパニックになった。

 尚、これも本日二度目である。

 子供達が我先にと恐怖の言葉を口にする……

 彼等は勇者・桐生直人を魔王の如く畏怖していたのだ……

「お……俺にこれ以上近付くなああああああ――――――――――――――!!」

「こ……こっちを見ないでええ――――――――っ!! こ……こっこっ子供ができちゃうううううううううううう!!!!!」

「ゆ……勇者を呼んで来い! コイツを討伐させろおおおおおおおおおおおお――――――――っ!!」

「みんな距離を取ってええええ――――――――――!! 三メートル以内は妊娠するわああああああああ――――――――――――っ!!」

 マスコミや一般市民と同様に、直人はもはや子供達からも人間扱いされてはいなかった……

 一般的に人間は、自分と異なるもの……未知なるものを怖れるのだ……

 ちなみに今日の子供達による直人の扱いは――

 “悪役(ヒール)勇者(人間)”⇒“怪物(人外)”⇒“淫獣(Hな人外)”へと真っ逆さまに下降して行った……

 そんな少年少女達の心情を全く無視して……直人が子供達を視姦……ではなく子供達にウインクを決めた瞬間に事件は起きた……

「ギイヤャアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ―――――――――ッ!!」

 断末魔を思わせる叫び声と共に、子供達は一斉に会議室から飛び出して行った……

 決まり手は、勇者・桐生直人による視姦……ではなくウインクだった。


「はは…………はははははははははははは…………」

 気まず過ぎる空気の中、直人はその場を取り繕う為に只笑う他無かった……死んだ魚の目で虚空を見つめ茫然とその場に立ち尽くす。

「……に……兄さん……」

 唯は何かを言いかけて、その言葉を静かに呑み込んだ。

「これから勇者・桐生直人君は……少年をは……孕ませるエキスパートと呼ばれそうですね……ウフフフフ……ウププププ……」

 レンが腹を押さえながら爆笑を堪えつつ、不気味な予言を口にする……

 ……何てことだ!?

 我慢しきれずに思わずやってしまったが……

 これで又、ネガティブなニックネームが新しく追加されるのか!?

 さしずめ次のニックネームは“孕ませ勇者”“ロリコン勇者”はたまた“少年愛勇者”辺りだろうか!?

 直人は子供達の反転攻勢に恐れおののきながら……

「子供はゴブリン……子供はゴブリン……子供はゴブリン……」

 という言葉を、死んだ魚の目で日がな一日中繰り返していた……

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