表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

サミーは私の大切な友達で心から大好きなんだ

作者: 蒼井真之介

 あさひちゃんは飼っている老犬サミーの頭を撫でていた。

 

 5歳の時に亡くなったお父さんの愛犬だった。あさひちゃんはお父さんが恋しくなるとサミーの頭を撫でに庭へ出た。

 

 サミーは昔のように犬小屋の屋根に登って、元気に喜んで吠えた頃のようには、あさひちゃんを迎えることが出来なくなっていた。

 

 あさひちゃんを見つけるとサミーは体を起こして、屋根を見上げるが、すぐに体勢を変えて、あさひちゃんが来るのを待っていた。もう駆け寄る体力もないのだ。サミーは老いた自分に戸惑っているように見えた。

 

 「サミー、はやく、よくなってね」とあさひちゃんはサミーの頭を撫でながら言った。


 サミーは小さく尻尾を振ったが、疲れたのか、その場で横たわってしまった。

 

 あさひちゃんはサミーのお腹を優しく擦ってあげた。

 

 「サミー、きもちいい? つかれがとれた?」と優しく話しかけた。サミーは目を閉じて寝息をたて始めた。

 

 あさひちゃんはサミーを起こしてはならないと思い、右手で長いこと撫で続けていた。

 

 あさひちゃんは、右手が疲れてきたので、撫でるのを一旦止めてから、右腕を高くあげたり、手首を回したりして疲れをほぐした。サミーは目を開けて、その様子を静かに見守っていた。それは父親の眼差しと同じように見えた。

 

 あさひちゃんは今度は左手で撫で始めた。サミーは幸せそうな顔をして再び目を閉じた。

 

 あさひちゃんはサミーを守る決心していた。ずっと一緒に育ってきた。兄弟のような存在になっていた。兄ようであり、時には弟のようであり、1番の親友でもあった。

 

 あさひちゃんとママがケンカをした時には「家出するっ!」と言って何度もサミーの犬小屋に潜り込んだ事があった。

 

 サミーは、あさひちゃんと一緒にいるのが嬉しくて、あさひちゃんの側で安心してよく眠った。

 

 小学4年生になったばかりのあさひちゃん。サミーとは、これからもずっと一緒にいたいと願っていた。

 

 「サミー、ずっと一緒にいようね」とあさひちゃんはお腹を擦り続けながら何度も囁きかけた。

 

 「クゥン、クゥン」とサミーは、あさひちゃんに甘えた声を出した。

 

 あさひちゃんは嬉しくなってサミーの頭を強く撫でた。

 

 夏の終わりが近づいていた。切ない風が舞い上がり、夕暮れが珍しくピンク色に染まっていた。

 

 あさひちゃんは空を見上げていた。星が出始めていた。

 

 「サミー……」とあさひちゃんは泣きながら言った。涙が溢れ出て止まらなかった。

 

 「サミー、空が見える?」あさひちゃんは涙をぬぐいながらお腹を擦り続けた。

 

 「サミー、空が綺麗だよ」とあさひちゃんは言った。

 

 サミーは吠える代わりに何度も尻尾を振って、あさひちゃんの思いに答えた。あさひちゃんはそれが嬉しくて声をあげていつまでも泣いていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 雰囲気が素敵な作品でした。切なくて温かい、そんな感じが好きです。 [一言] サミーはもしいつか別れてもきっとあさひちゃんを見守り続けるのだろうなと思い、少しウルッときました。
[良い点] 切ないのに綺麗な小説です。お父さんとのこともあって、なんだか胸を打ちます。 [一言] なるべくずっと長生きしててほしいなぁ……。でももし、あさひちゃんの側からいなくなっても、きっと見守って…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ